2012年11月07日

クランクアップ

以前このブログでもお伝えした、劇団かかし座創立60周年記念ツアー「Hand Shadows ANIMARE(ハンド・シャドウズ・アニマーレ)」のドキュメンタリーが、ついに撮影終了の日を迎えました。

11/4の朝、ブラジル公演へと旅立っていくメンバー4人の姿を成田空港まで追い、その後、2009年の初演から今年7月の東京公演までのメンバーだった方(わかりづらい文章ですが、今回「アニマーレ」のツアー途中で1人メンバーの入れ替えがあったのです)が講師を務める影絵のワークショップの様子を品川で収録して、無事、クランクアップ。

もともとは東京公演までのはずが、ついつい深入りしてしまい、振り返ってみれば、東京公演以降のシークエンスの方が、撮影日数も収録素材も多くなっていました。ある男性メンバーのお宅にお邪魔して、生まれたばかりの「60周年ベイビー」と対面したり、名古屋公演の流れで、下呂温泉の合掌村にある影絵の常設館「しらさぎ座」を訪ねたり、かかし座創立者の故後藤泰隆氏夫人・五十子さんにロングインタビューを行ったり…。かなり魅力的な素材が集まったと感じています。

ただ、この豊富すぎるとも思える素材を、一体どう編集していけばいいのか。劇映画であれば、まずはシナリオの順番どおりつないでいけば形になるので、あまり悩むことはありません。しかるに今回のドキュメンタリーは、構成台本も何もないまま、その時その時の判断で次々撮影を進めていったため、料理に例えるなら、「レシピも用意しないで、食材だけ思いつくまま買い集めた状態」に陥っているようなところがあります。

また、劇映画やドラマの撮影素材は通常「3倍回し」などと言われ、たとえば2時間の作品であれば、その3倍にあたる6時間程度の素材が、撮影終了後のディレクターの手元に残ることになりますが、今回、70分前後の作品のために収録した映像は、満杯になったメモリーカードの枚数から換算して、約30時間!(1800分)。ざっと「25倍回し」です。まさかここまで膨大な量になっているとは思わず、このブログを書くにあたってきちんと計算してみて、頭を抱えてしまいました。
まあ、撮影素材は少ないよりは多い方が、選択の余地も広がるわけですし、とにかく何度でも繰り返し見て、その中から際立ってくるものをすくい取っていくしかありません。

そういえば、小学生の時に読んだ『まんが道』(藤子不二雄A)の中に、《手塚治虫が『来るべき世界』という400ページの作品のために1000ページもの原稿を描いていたことを知り、主人公の満賀道雄と才野茂が衝撃を受ける》という場面がありました。そしてナレーション部分には、「しかし、その掲載されなかった600ページが、『来るべき世界』という作品を支えていたのだ」みたいな文章があり、妙に納得したのを覚えています。使われないまま終わる素材も、単なる没素材ではなく、完成作品の一部なのです。

メモリーカードの中には、酷暑の7月から始まって、紅葉の11月まで、のべ4ヵ月の手影絵をめぐる「旅」が記録されているはずです。今ごろ地球の裏側で、ブラジル公演のファーストステージに立っているであろうメンバーたちの健闘を祈りながら、私も、長かった彼らとの「旅」をさかのぼる作業に入ろうと思います。

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成田空港から出発するアニマーレのメンバー。「Mr.Shadows」だけあって(?)見事にシルエット
posted by taku at 14:48| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする