2015年06月25日

たてかべ和也氏追悼

ドラえもんのジャイアン役で知られ、18日に急性呼吸器不全のため80歳で死去した声優・たてかべ和也(本名・立壁和也=たてかべ・かずや)さんの葬儀・告別式が24日、東京・青山葬儀所で営まれた。

この日は、「ドラえもん」のスネ夫の声を務め、55年来の付き合いがあった声優の肝付兼太(79)や山寺宏一(53)ら関係者約600人が参列。前日の通夜に続いて肝付が弔辞を読み「55年という長い間、友達でいてくれて本当にありがとうございました。どんな話しでも耳をかたむけてくれたかべさん、僕の自慢の親友です」。最後には「ジャイアーン!」とスネ夫の声で別れを惜しむように呼びかけた。(後略)
2015年6月24日15時59分 スポーツ報知

たてかべ和也氏といえば一般的にはやはり「ドラえもん」のジャイアンか、タイムボカンシリーズにおける「三悪」の筋肉ポジションの人、というイメージなのだろうが、私のようにアニメ版「タイガーマスク」を愛する者としては、タイガーマスク(=伊達直人)の親友・大門大吾の印象がとりわけ深い。一度は「虎の穴」の刺客として送り込まれながら、その後組織を裏切って影のようにタイガーをフォロー、やがて「ミスター不動」となってリングに上がり善戦、最後はタイガーをかばうように、場外乱闘の末絶命する…。

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時には主役のタイガーを喰う存在感を見せた大門。たてかべ氏の熱演が光る
(C)梶原一騎・辻なおき/講談社・東映アニメーション



大門大吾は原作コミックには登場しない、アニメ版だけの屈指のサブキャラクターである。最近久しぶりに全編を再視聴して、あらためてその存在の大きさを認識したのだが、それと同時に、大門を演じたたてかべ氏の声が、心に沁みるとてもソフトな美声であり、後年の、たとえばトンズラーのようなダミ声とはまったく違っているのに驚いた。声の質だけでなく、その声を通して伝わってくる「人物像」も完全に異なる。やはりあの世代の声優は、キャラクターをきちんと演じわけられるのである。

そもそも、たてかべ氏が声の仕事を始めたころは、まだ「声優」が専業として確立していない時代であり、彼も当然「俳優」としての訓練をきっちり受けていたのだから、驚くには当たらないのだろう。経歴を見ればわかるとおり、彼は日本大学芸術学部演劇学科の出身である。

さて、日大の演劇学科といえば、亡父の青江舜二郎が20年近く奉職していた大学だが、昨年、実家の増改築を行った際、青江の遺品が入った段ボールの中から、大量の芝居のパンフレット類が見つかり、その中に、きわめて興味深いものがあった。

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日本大学芸術学部公演「毒薬と老嬢」(1958)

アメリカで1944年に映画化もされた「毒薬と老嬢」。日本大学芸術学部公演とあるが、下の方をよく見ると、会場は札幌市民会館、「主催 日大芸術学部北海道々人会」とあり、札幌限定の公演であったらしい。当然、出演者・スタッフも、北海道出身の学生やOBが多かったようだ。青江は北海道と直接の関係はないが、東北(秋田県)出身という「北」つながりのためか、この作品の演出を担当。

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そして出演者には、若き日の立壁和也、小林清志、鈴木泰明、そして田中康夫(田中康郎)らの名前が…。

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1934年生まれの立壁和也はこの年24歳。おそらくもう日大は卒業していたと思われるが、北海道出身者ということで、この公演に参加したのだろう。なお、小林清志、鈴木泰明、田中康夫の三氏はいずれも東京や神奈川の出身で、北海道と直接のつながりは見出せない。それにしても、「タイガーマスク」ファンとしては、「タイガー」が製作されるはるか昔に、大門大吾(立壁和也)とミスター・カミカゼ(小林清志)、そしてタイガー・ザ・グレート(鈴木泰明)が同じ舞台に立っていたという事実にある種の陶酔を覚える。この3人はいずれも、タイガーマスクとほぼ同等の実力を持つ、忘れがたい好敵手なのだ(ちなみに、やはり強豪として知られたスター・アポロンブラックVも、それぞれ鈴木泰明、小林清志が演じている)。

話を「毒薬と老嬢」に戻そう。このパンフの後半ページには「皆んなで唄いましょう」というコーナーがあり、共演者同士がそれぞれの印象を簡明に記しているのだが、そこでたてかべ氏は以下のように書かれている。

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立壁和也ちゃん(アインシュタイン)

いつも妙な事を思いつきいたずらすることに飽きない、イタズラ坊主。遊び疲れて子供のように満足して寝る大人。それで皆を遊ばしているつもりがミソ。


この印象はそのまま「ドラえもん」のジャイアンを彷彿とさせ、微笑ましい。私はたてかべ氏とは一面識もなかったが、私が生まれる5年ほど前、亡父の演出のもとで札幌の舞台に立っていた時代があったことを思うと、ひときわ親しみが募る。謹んでご冥福をお祈りいたします。

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「黄金バット」のダレオくんも大好きなキャラでした
(C)第一動画
posted by taku at 16:29| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする