2015年08月07日

「ウルトラ兄弟」誕生の夏(2)

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お待たせしました。
内山まもる「決戦★ウルトラ兄弟対11大怪獣」のご紹介です。

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真夏の関東地方に突然大雪が降り、街は真冬のような光景に(涼しそうで少々うらやましい気も…)。

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それは、ペギラやガンダーといった冷凍怪獣の仕業で(なぜかチャンドラーも混じっているが)、郷は帰マンに変身して怪獣を退治する。

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そのおかげで東京にはまた暑さが戻るが、休暇をもらった郷が、アキや次郎と待ち合わせた京王プラザホテルに向かう途中、ビルが突然揺れ出し、その下からゴモラ、エレキング、ゴルバゴスが出現。

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郷はまたも帰マンに変身し、ウルトラダブルという内山漫画オリジナルの特殊能力で2倍のサイズになりビルを支えるが(見開きをタテに使っているところが斬新!)、変身時間は半分になるという欠点があるため、早くもカラータイマーが鳴り出す。

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そこに、突然ウルトラセブンが現れ、3体の怪獣をあっさり倒す。セブンは帰マンに、「おまえにもっと強力なエネルギーをやろう」と告げ、2人はどこかへテレポートする。

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しかし、そのセブンはにせウルトラセブンだった。郷はこの事件のラスボス・チブル星人の円盤に拉致されてしまう。

チブル星人の命令で、怪獣軍団(ゼットン、ジェロニモン、レッドキング、ステゴン、モグネズン)が東京に出現し都市を破壊。MATは例によって役に立たず。

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怪獣軍団に混じって復活させられていたらしいピグモン(このあたりの設定は「小さな英雄」を踏襲していますな)の協力で郷の拘束は解かれるが、その代償にピグモンは命を落とす(この辺も「小さな英雄」です)。

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郷は三度帰マンになってにせセブンと対決しこれを倒し、東京に駆けつける。

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帰マンと対峙するゼットン。この時のゼットンのセリフに注目。
「フフ、あのウルトラマンの弟か。すこしは、強そうだな」
1971年の時点では、「ウルトラ兄弟」は実際の兄弟という設定だったことがはっきりわかる。

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ゼットンはお得意の1兆度の火の玉を帰マンに連続発射するが、帰マンはウルトラスピンという、これまた内山漫画オリジナル技で跳ね返し、ゼットンを倒す。
しかしすでにカラータイマーが点滅、まだ怪獣は4体も残っており、もはやこれまでかと思った時、空から3つの火の玉(赤い玉というべきか)が落下し、中からゾフィー、「前の」ウルトラマン、ウルトラセブンが現れる。

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それを見届けた帰マンは、「にいさんたちだ。よかった」とつぶやき、タイムアウトで姿を消す。何と、この漫画の主役たるべき帰マンは、兄弟たちと共闘していないのであった。主役不在のラストバトルというのは、いささか物足りないような…。

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ウルトラ3兄弟と怪獣軍団の戦闘が開始。それぞれの持ち技で4怪獣をあっという間に倒す。

戦いのあと、郷はテレパシーでゾフィーに、自分を助けてくれたピグモンがチブル星人の円盤にいること、事件のラスボスがチブル星人であることなどを伝える。それを受けて3兄弟は、円盤で逃走をはかるチブル星人を倒し、ピグモンの遺骸を持って光の国へ戻っていく…。

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なお、このラストのコマにも、主役である帰マンの姿はない(一見すると中央は帰マンのようだが、物語の展開からして、胸のボツボツを書き忘れたゾフィーだと思われる)。

お話の方はこんな感じ。登場する怪獣側には、帰マンの怪獣数体に加え、かねてから人気の高かったレッドキングやゼットン、エレキングなどを配し、それを迎え撃つウルトラヒーローも勢ぞろいで、夏休みならではの「夢のオールスター戦」といった趣(おもむき)である。当時はまだテレビでは、このように複数のウルトラヒーローが一堂に会し、怪獣・宇宙人の大群とバトルを繰り広げるというシチューションは皆無だったので、当時の小学生(もちろん私も含む)はかなり熱くなって、この漫画を繰り返し読んだものである。

とは言うものの、実はこのストーリーにはどこかで既視感があり、それはなぜだろうとずっと考えていたのだが、最近になって理由がわかった。
この漫画が書かれる1〜2年前、美研というメーカーから発売されたフォノシートつき紙芝居「ウルトラ大決戦」において、すでにこれとほぼ同じシチュエーションを目の当たりにしていたからだった。

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「ウルトラ大決戦」1969or1970年(美研)

こちらは、フォノシートは残っているものの、紙芝居の方は残念ながら中学校にあがるころ処分してしまったため、画像でご紹介することができないのだが(上記画像は某オークションに出品されていた時のものを拝借)、あらすじは、かつてウルトラマンと引き分けたメフィラス星人と、一度はウルトラセブンを十字架にかけたこともあるガッツ星人が手を組み、怪獣軍団を率いて地球総攻撃をかけるというもの。

ある晩、横浜・鎌倉方面にペスター、ゲスラ、ザンボラーなどが出現、激しいバトルを繰り広げる。ウルトラセブンが現場に駆けつけ、ペスターとザンボラーを氷づけにしたガンダーを倒すが、傭兵(?)として戦線に加わったバルタン星人の大群に翻弄され体力を消耗、大ピンチに陥る。その時、上空からウルトラマンが現れ、これに助けられたセブンも闘志を取り戻し、それぞれの得意技(スペシウム光線とアイスラッガー)でほかの怪獣たちとメフィラス&ガッツ星人を粉砕する。
最後は「これからも力を合わせてがんばろう」と決意を新たにしたウルトラマンとセブンが、地球を背にして宇宙を飛んでいる絵で終わり。

まあ、この手のストーリーには、それほどバリエーションがあるとも思えないので、この両者の類似は仕方のないこととは思うが、「ウルトラ兄弟」の設定が為されるよりも前に、ウルトラマンとウルトラセブンというWヒーローの、番組を超えた競演ドラマが描かれ、世に出ていたというのは、注目すべき事実だと思う。

しかし、さらにさかのぼれば、「ウルトラセブン」制作後期に、上原正三と川崎高(実相寺昭雄)が共同執筆した「宇宙人15+怪獣35」というNGシナリオが存在する。この作品はタイトルが示すとおり、これまでウルトラシリーズに登場した怪獣・宇宙人が多数復活してウルトラセブン&カプセル怪獣と激闘を繰り広げるというもので(ラスト近くでピンチに陥ったウルトラセブンを助けるのは宇宙獣神ゴード)、上記の「ウルトラ大決戦」も「決戦★ウルトラ兄弟対11大怪獣」も、ともにこの「宇宙人15+怪獣35」をベースにしているように思われる。もしこのエピソードが映像化されていれば、「セブン」放映時にすでに、「マン」と「セブン」は同一世界での物語、という設定が明確になっていたわけだ。

【付記1】紙芝居「ウルトラ大決戦」はウルトラ画家として知られる前村教綱の筆になるもので、その絵の迫力もさることながら、フォノシートの出演者が異様に豪華なことも特筆にあたいする。何とメフィラス星人とウルトラセブンを永井一郎、ガッツ星人とウルトラマンを北川国彦(米彦)、バルタン星人とナレーターを野田圭一が担当しているのだ。当時はフォノシートを聞いて、「どうして『サザエさん』のお父さんがこんなところに?」と、大いに違和感を覚えたものだ。

※フォノシート音声はこちら(一部抜粋・mp3ファイル)

【付記2】「ウルトラセブン」放送と並行して桑田次郎が『少年マガジン』に執筆していたコミカライズ版では、その第1話冒頭に、ウルトラマンがセブンに任務の「引き継ぎ」を行うという珍しいシーンが描かれている。円谷プロの公式見解だったかどうかは謎だが、多分これが、「マン」と「セブン」が同一時空間に存在した最初の場面ではないかと思われる。

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桑田次郎「ウルトラセブン」第1話「姿なき挑戦者」より
posted by taku at 13:39| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする