2015年08月31日

渡辺宙明 卆寿記念コンサート

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8月とは思えない、まるで梅雨のように陰鬱な天気が続いている。もう1週間近く、お日様が顔を出していないではないか。というわけで、「まぶしい太陽を隠す黒い雲を吹き払う」(「宇宙刑事シャイダー」主題歌風)意気込みで、昨日(30日)、「渡辺宙明 卆寿記念コンサート」を聴きに行ってきた。場所は渋谷区文化総合センター大和田4Fさくらホール。セルリアンタワーのすぐ裏にある渋谷区の施設である。

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「卆寿」というのは字の示すとおり「九十」、すなわち今年で渡辺宙明先生はめでたく90歳を迎えられ、それを記念して初の大々的なソロコンサートが開かれたというわけだ。
私たち1960年代生まれの特撮・アニメファンにとって、その名前は「マジンガーZ」「人造人間キカイダー」「イナズマン」や戦隊シリーズなどの作曲家として小学生のころから認知され、そしてそのメロディは、40数年が経った今も深く心に刻まれている。

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ロビーにはおなじみの歌手の方々からのお花も

会場に着いたのは開演の10分前。すでにプレトークが始まっていた。15分前からプレトークが行われることは知っていたが、多分コンサート関係者によるトークだろうと思い、あまり重要視していなかったのだ。ところが予想に反し、舞台上にはなんと、御大みずからが当たり前のように立って、司会者の質問に温顔で答えられているではないか! うわ! こんなことなら15分前に来ておくべきだった、と残念に思ううち、プレトークは終了。
「これからもまだまだやっていくつもりです。でも、今日はひとつのしめくくりとしてね」
の言葉を残し、宙明先生は舞台から降り、一階中央の座席に移動。客席でファンとともにこのコンサートを鑑賞するとのことだ。

14時、演奏開始。以下は、完全に個人的な印象&感想である。

1)「マジンガーZ」組曲

やっぱ宙明先生といえばマジンガーでしょう、と言う感じのオープニングナンバー。あの聴き慣れたイントロが40名を超すフルオケで奏でられると心が震える(放送開始当時、私は小学校3年生)。「機械獣の進撃」なども原曲に近いアレンジとのことで、機械獣たちがビル街を焼き尽くしながら跋扈する場面が鮮明に脳裏に蘇った。後半には主題歌候補だった「Zのテーマ」も。8/25のニコニコ生放送で、先生みずからがこの曲のエピソードを語り、なおかつピアノでメロディを爪弾きながら、作曲技法について解説していただけに感激もひとしおである。

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「マイナーペンタトニック」という技法について解説する宙明先生(ニコニコ動画より)

2)「グレートマジンガー」組曲

「マジンガーZ」から「グレートマジンガー」という流れは非常にわかりやすいのだが、残念! 自分はどういうわけか放送当時、「マジンガーZ」の後半(あしゅら男爵が死んでピグマン子爵が出てきたあたり)で視聴をやめ、そのあとの「グレート」は1回も見ていないので、この曲についてはまったく知らないのだ。どうして視聴をやめたのかは謎だが、このころは小学5年生になっていたので、そろそろロボットアニメは卒業、という感じだったのかも知れない。というわけで、原曲についての知識がゼロに等しいため、これについてはコメントができない。演奏中は、つれづれなるがままに、パーカッション奏者の女性が、次に演奏する楽器が置いてある場所にすーっと移動する姿をながめていたりした。

3)「大鉄人17」組曲

演奏前に、奏者の半数以上が退場し、ステージには打楽器とブラスセクションのみが残留。パンフレットによると、原曲を録音した当時の編成を再現し、これだけの少人数(16人)でも重厚なサウンドが表現できる(これぞ宙明先生の力技!)ということを示す狙いがあったそうだ。こういうこだわりは素晴しいと思う。
「グレートマジンガー」と同様、「大鉄人17」も、本放送当時はまったく見ていなかったのだが、最近になってYouTubeの東映特撮チャンネルで、初めてほぼ全話を視聴した。それだけに記憶も鮮明で、曲を聴けばいろいろな場面が頭をよぎるのでは、と期待したが、聴き慣れた主題歌もエンディングも一向に出てこず、なぜか危機感をあおるような曲(敵ロボットが現れて暴れる、的な)が続く。これでは頭に浮かぶのは、ブレインロボットの暴れ回る場面ばかりである。「17」はドラマ部分も充実していたし、それに照応するメロディアスなナンバーも多々あったはずなのに…と少々物足りなく思う。やっと最終パートで主題歌とエンディングを聞くことができたのだが、構成としては、このあとの「太陽戦隊サンバルカン」や「スパイダーマン」のように、なじみ深い主題歌メロディを早いうちに一回提示する方が、聴き手は安心するのではないかと感じた。

※なお、パンフレットによれば、この「大鉄人17」については、「危機」をイメージする曲が、その後多くの作品で流用されたため、「宙明サウンドのトータルイメージとして聴いていただけるようセレクトした」との説明があった。なるほど、そういうショーケース的な意図があったのか、とあとから納得した次第である。


4)「太陽戦隊サンバルカン」組曲

「大鉄人17」組曲とは反対の大変明快な(ある意味王道的)構成で、文句なしに楽しめた。圧倒的な存在感を示す主題歌メロディから始まり、サブタイトル曲をはさみ、次がなんと、あの「巨大モンガ〜」のテーマである。思わず依田英助の声が脳内再生されたのは言うまでもない。

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わかる人にはわかる、あの場面のBGMです

まさかこのテーマをフルオケで聴けるとは、と、なぜか非常に感慨深いものがあった。次のパートでのジャガーバルカン出撃のテーマもスケールの大きい名曲で、巨大感あふれるジャガーバルカンの口が開いて、ブルバルカンとコスモバルカンが発進していく一連のシーンがはっきり頭に蘇った。やはりリアルタイムで見ていた作品は思い入れが違う。「太陽戦隊サンバルカン」の放送当時私は高校3年生だったが、なぜかこのころからまた特撮に回帰していたのだ(「サンバルカン」に関しては、岸田森が長官役でレギュラー出演していたというのも大きい)。

-----休憩(20分)-----

5)「スパイダーマン」組曲

リアルタイムでは見ていなかったが、その後ビデオやマーベルのサイトなどいろいろなところで断片的に見て、その全容はほぼ把握しているこの作品。当時は特撮番組冬の時代で、放送開始当時、東映制作の特撮ドラマはこれ一本。しかもキー局が東京12チャンネル(現・テレビ東京)という厳しい状況だったが、曲はそんなことを微塵も感じさせない賑やかなもので、解説によると、レコーディングにはかなり多彩なパーカッションが使用されたという。今回の演奏でも、その片鱗を見ることができた。
主題歌メロディから始まってスパイダーマン行動のテーマ、そしてマリンバソロによる叙情的なメロディ(「ひとみのテーマ」というらしい)。この時、奏者が手に2本ずつのマレット(ばち)を持って、ポリフォニックな演奏をしていたのが印象的だった。そのあと淋しげなバラード曲をはさんで、一気にレオパルドンのテーマへとなだれ込む。このコントラストには、心と体の双方が震えた。ソードビッカーによる「瞬殺」で知られるレオパルドンは、巨大ロボット最強と噂されるが、このテーマ曲も、数ある巨大ロボのテーマの中でも最強の一曲ではないかと思う。

ここで特別ゲストとして、ご子息でやはり作曲家の渡辺俊幸氏が登壇。息子から父へのプレゼントとしてスペシャルアレンジの「ハッピーバースデイ」を指揮(この時は会場の観客も合唱)。またご自身の音楽遍歴にも触れ、
「もともとは作曲家ではなくドラマーをめざしていて、グループ『赤い鳥』にもドラマーとして参加しました」
「23歳の時『未知との遭遇』を見て作曲家になろうと決意した時は、すでに結婚しており父とは同居はしていなかったので、直接の影響は受けていないはずですが、やはり蛙の子は蛙だったのでしょうか」
などと語っていた。
また宙明先生の楽曲に関しては、
「父の音楽は、たとえBGM(劇伴)であっても非常にメロディアスですね。さすが『宙明節』と言われるだけのことはあるなと。どんな曲であっても、少しでもメロディアスにしよう、印象深い曲にしようと心がけているのを感じます」
と語り、最後に、
「父はみなさんの思いに支えられて、90歳の今でも現役の作曲家として活動しています。みなさんが応援を続けてくれることによって、父はこれからも元気で過ごせると思います。どうぞよろしくお願いします」
と締めくくった。

6)「宇宙刑事ギャバン」組曲

今回最後のナンバーにして最長の組曲ということで、大変力がこもっており、いろいろと趣向も凝らされていたが、個人的に残念に思ったのは、主題歌メロディがフルで演奏されなかったこと。主題歌Aメロのアレンジ曲は流れたものの、「若さ若さって何だ〜宇宙刑事ギャバン」に至る、一番盛り上がるサビ部分は、どうしたわけか一度も登場しなかった。今回のコンサートで一番の心残りはこれかも知れない。とはいえ、それ以外の名曲(星空のメッセージ、電子星獣ドル、レーザーブレード等)が次々に演奏され、数々の名場面が眼前に再現されていく感じは心地よかった。
ちなみに「宇宙刑事ギャバン」は「太陽戦隊サンバルカン」の翌年(1982年)の作品で、私は1年目の浪人生活を送っていたが、この作品はほぼ毎週見ていたので、かなり鮮明にいろいろなことを覚えている。ミミー役の叶和貴子が、スケジュールの都合なのか予算の都合なのか途中から出なくなったこと(ラスト間際に復帰したが)、しばらく東映特撮から遠ざかっていた潮健児がこの作品で復帰し、メフィスト風の衣装で登場したこと(14話)、ハンターキラーの退場の仕方がかなり悲惨だったこと(30話)、バッファローダブラーはどう見てもクワガタだったこと(42話)、千葉真一ゲスト出演の43話「父よ」は本格的な親子再会ドラマで宙明節炸裂、Bパートに通常のバトルシーンがなかったこと、等々、書き始めるときりがない。また、この時代の東映特撮では、ミニチュアワークは最初にまとめて撮って、あとはそれを使い回すのが主流だったが、「宇宙刑事ギャバン」では、最終エピソードに近い41話で電子星獣ドルの宇宙飛行シーンが一部新撮だったことも印象的だった。

という感じでプログラム上はこれで終了だが、「卆寿記念コンサート」でもあるし、当然これだけでは終わらない。まずはアンコール第1弾として、レーザーブレードのテーマ3連発(マニアには説明の必要もないだろうが、「ギャバン」「シャリバン」「シャイダー」のレーザーブレードのテーマをメドレーで演奏)。

さらに第2弾として、渡辺宙明先生みずからの指揮で、オーケストラをバックに、「グレートマジンガー」「マジンガーZ」の観客による大合唱! いやあ、これはまさかのサプライズ、ファンには嬉しすぎる趣向である。まさか宙明先生がタクトを振り、それに合わせて往年のテーマ曲を歌う栄誉に預かれるとは…。しかし、先ほども書いたように、私は「グレートマジンガー」はよく知らないので、声の限りに歌い上げたのは「マジンガーZ」だけだったのだが。それでも、なぜか歌っている最中涙があふれてあふれて、宙明先生のお姿もくもって見えなくなることがしばしばだった。会場をあらためて見渡せば、かなり頭の白くなった中高年の姿が目立つ。みんな、この合唱で声を合わせながら、脳裏には過ぎ去った少年少女の日々が去来していたのではないだろうか。

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演奏終了後の撮影タイム。携帯カメラなので悲惨な画像だが、指揮台のすぐ左が渡辺宙明先生

こうして約2時間のコンサートは終演。入場時には会場に届いていなかった全52ページの豪華パンフレットを入り口のところで受け取ってホールを出る。外は相変わらずの空模様だったが、心の中は、あたかも「胸のエンジンに火がついた」状態(「ギャバン」主題歌風)で、霧雨も大して気にならず、足取りも軽やかに駅までの道を歩き出したのであった。

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ちなみに、この「卆寿記念シリーズ」は今後も続く模様で、来年の3月、5月に行われるコンサートでは、「キカイダー」「イナズマン」「シャリバン」「ジバン」などの組曲が予定されているようだ(パンフレット巻末に情報が記載)。それらももちろん悪くはないが、私としてはぜひ一度、「電子戦隊デンジマン」組曲を聴いてみたいと強く思う。
「デンジマン」は主題歌、挿入歌、BGMとすべてが名曲ぞろいなので選曲も困難を極めると予想されるが、絶対にはずしてほしくないのが「デンジ姫のテーマ」である。あの哀感に満ちたピアノのイントロを聴くだけで反射的に涙腺がゆるみ、自分で自分がどうにもならなくなるくらいだ。この曲は「デンジマン」劇場版で初披露ののち、ドラマ本編「デンジ姫の宇宙曲」や「二人いたデンジ姫」、そして翌年の「太陽戦隊サンバルカン」の「エスパー」「日見子よ」でも効果的に使われていた。故郷を失ったデンジ星人の悲しみと、デンジ姫の凛とした美しさの双方が、シンプルなメロディで見事に表現された名曲で、これぞ「宙明節」と呼ぶにふさわしい(と勝手に思っている)。どうにかして、いつかこの曲を生演奏で堪能してみたい。そのためにも、ぜひ「電子戦隊デンジマン」組曲を!

※当方のブログでは、著名人は基本的に敬称を省略することにしているのだが、今回は、渡辺宙明氏への賛辞と敬慕の情が抑えがたく、多くのファンの方に倣って「先生」の呼称を使用した。
渡辺宙明先生、90歳のお誕生日おめでとうございます。これまで、素晴しい曲をたくさん世に送り出して下さってありがとうございました。今後のご健康とさらなるご活躍をお祈りしています!
posted by taku at 19:11| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする