2017年11月20日

『特撮秘宝 vol.7』

20171120_01.jpg

週末、『特撮秘宝 vol.7』(洋泉社)が編集部から届く。噂には聞いていたがとんでもなく「濃ゆい」本である(なぜ編集部から届いたかは後述)。

まずテキストの情報量がすごい。新聞でも雑誌でも高齢者に配慮してどんどん文字が大きくなるこのご時勢に、まるでルビのような小ささの活字が二段三段(時には四段組み)で「これでもか」と並んでいる。最近老眼が進み、眼鏡を作るかどうかで日々悩んでいる私にとっては、読み進めるのにかなりの困難がともなうが、興味深い記事が目白押しで、これを読破するために、いよいよ老眼鏡を作るか、と本気で考えたりする(実は一ヶ月前に眼科を受診し、眼鏡の処方箋はもらっているのだが、面倒くさくてそのまま放置しているのだ)。

そして、テキストに負けず劣らずの画像情報。アゴンの未公開写真をはじめ、見たことのないレアな写真がこれまた「これでもか」と誌面に踊っている。とにかく特撮愛に溢れまくった一冊で、その同人誌的というべき無尽蔵のエネルギーは、かつて愛読していた1980年代の『宇宙船』(朝日ソノラマ)を思い起こさせる。これだけの濃度の本をたった4人の編集スタッフで作っているというのもすごい。

圧倒されてばかりいても始まらないので少しだけ内容を紹介すると、今号のメインは、元祖ゴジラ俳優・中島春雄の追悼特集。これが全体の約半分を占めており、日本が世界に誇る特撮スーツアクターの数々の作品における勇姿、本人のインタビューや対談、知られざる生涯、評論、関係者の追悼コメントなど、これ以上のコンテンツは考えられない、というくらいの充実した内容。中でも友井健人氏の「鎮魂 中島春雄と戦友ゴジラ」は1929年生まれの中島の一生を、昭和史―戦争との関わりの中で捉えた評伝さながらの論考で、大著『怪獣人生 〜元祖ゴジラ俳優・中島春雄』の構成を務めた友井氏ならではの、顕彰と検証が並び立つ名文だと思う。

20171120_02.jpg

ちなみに、先日『鎌倉アカデミア 青の時代』の上映会でご一緒した加藤茂雄さん(俳優・演劇科1期)が、東宝の大部屋時代の仲間ということでコメントを寄せているほか、中島がメインゲストで出演したドラマ『太陽のあいつ』で監督を務めた岩内克己監督(演劇科1期)のインタビューも掲載されており、鎌倉アカデミア出身の方々の名前が随所に見えるのも嬉しい(さらに言えば『太陽のあいつ』の音楽はいずみたくで、この人も演劇科の1期)。

そしてもうひとつの目玉というべきが、『帰ってきたウルトラマン』のいわゆる「11月の傑作群」についての再検証。ここらへんの話題になるとわからない人にはさっぱりわからないと思うのだが、ひとことで説明すれば、『帰りマン』11月放送分には秀作傑作が多い、ということ(それにしてもこの本では絶対に「ウルトラマンジャック」などという呼称が出てこないのが心地いいね)。3本のシナリオが収載されているほか、「悪魔と天使の間に‥‥」でゼラン星人の化けた少年を演じた永吉健太郎氏と、「落日の決闘」でメインゲストの少年役だった松原和仁氏の大変レアなインタビューも掲載されている。本当によく見つけてくるものだと感心することしきりである。

さてさて、そんな「11月の傑作群」の1作「許されざるいのち」と、12月放送ではありつつ傑作群の中に加えられることが多い「残酷!光怪獣プリズ魔」の特撮撮影現場を見学した当時の小学生が、47年前を振り返ったインタビューがこちら。

20171120_03.jpg

197X年の怪獣少年 大嶋拓

まあ、そういうわけで、最初に「『特撮秘宝vol.7』が編集部から〜」と書いたのは、この号にインタビューを載せていただいたからなのである。

20171120_04.jpg
諸事情により掲載されなかった貴重な対面ショット(菊池【現・きくち】英一氏と)

インタビューはトータル5ページ。全288ページの本で5ページも使っていただき、申し訳ないような、しかし光栄でもあるような。内容については、だいぶ前に自分のホームページにも載せたことがあるのだが、一人で思い返して文章に書くのと、実際にインタビュアー(前述の友井健人氏)と作品の映像を鑑賞しながら話すのとでは想起の仕方がだいぶ違うことに気づいた。詳しくは、是非インタビューを読んでいただきたいのだが、ひとつ特筆すべきは「許されざるいのち」に登場する合性怪獣レオゴンについてである。このレオゴンは、着ぐるみのほかに爆破用の人形(発砲スチロール製)が用意されていたにも関わらず、本編では使用されていない。それがいかなる理由によるのか、長い間「解けぬ謎」だったのだが、今回、名インタビュアー友井氏のおかげで、ひとつの推論が導き出されたのである。しかも奥ゆかしい友井氏は、最初の書き起こし原稿では、あたかも私がすべて自分で気づいたように書いてくれたので、そこだけは、「友井氏の示唆があればこそだった」とわかるように修正してもらった。思うに、前述の『怪獣人生』があれだけ充実した内容になったのも、友井氏の丹念な聞き取りと豊富な想像力に基づく示唆によるところが大きかったのではないだろうか。私も『鎌倉アカデミア 青の時代』の製作において、かなりの数のインタビューをこなしたつもりだったが、取材相手の「記憶の深層」に切り込むには、もっともっと丁寧な聞き取りと的確な示唆とが必要だったのではないかと反省することしきりである。

というようなことにまで思いを致した『特撮秘宝vol.7』。ほかにもタケダアワーで放送が計画されていたクレイジー・キャッツ主演番組のパイロットフィルムとか、『タイムボカン』や『少年探偵団(BD7)』などでもなじみ深いスキャニメイトの解説とか、とにかく、夜を徹しても読みきれないくらい充実した1冊です。ご興味の沸いた方は、是非お手に取ってみてください。
posted by taku at 16:01| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月17日

『鎌倉アカデミア 青の時代』@鎌倉芸術祭

20171111_01.jpg

11月11日、鎌倉生涯学習センターのホールにて、『鎌倉アカデミア 青の時代』の上映会が行われました。主催してくださったのは、30年以上の活動実績を持つ「鎌倉・映画を観る会」の方々です。

20171111_02.jpg

20171111_03.jpg

第12回鎌倉芸術祭参加イベントということで、筆書きの看板も飾られていました。

20171111_04.jpg

ホールのロビーには、「鎌倉アカデミアを伝える会」のご協力によるパネル展示も。

20171111_05.jpg

13時30分からの回の上映後には、加藤茂雄さん(俳優・演劇科1期)とのトークショー。加藤さんとは、5月の川喜多映画記念館、新宿K's cinema、9月の小田原映画祭とすでに何度もトークでご一緒しているので、初めからリラックスムードでしたが、その一方、さすがに以前聞いたことのある話がほとんどだろうと考えていました。しかし、その予想はいい意味で裏切られ、終戦後の鎌倉のリアルな食料事情、鎌倉大学の入学試験の具体的な内容(作文のテーマは「光明寺の印象」で、加藤さんは小さいときから毎年通っていた「御十夜」の思い出を記したとのこと)、1年生の時の学費は、今では行われていない「あぐり網」という漁法で、魚が吹き上がるくらい取れた時の日当でまかなったことなど、私も初めて聞くエピソードが多数披露されました。やはりご当地でのトークは、ローカルな話を理解してもらいやすいからでしょうか、加藤さんの語りはいつも以上に滑らかで、説明も文字通り「微に入り細を穿つ」という感じでした。

20171111_06.jpg

さらに、開校初年の前半だけ教えにきていた千田是也の強烈な印象、課外授業の一環として、1946年6月に帝国劇場で上演された新劇人合同公演の『真夏の夜の夢』や9月上演の『どん底』の本番前総稽古を見学し、それが演劇への思いを掻き立てる原動力となった話など、飢えていたけれど熱かった時代のエネルギーが伝わってくるようでした。『どん底』の稽古を見た翌日には、音楽の担当教授だった関忠亮から「夜でも昼でも 牢屋は暗い」という劇中歌を習い、学生みんなしてその歌を歌いながら鎌倉の町を練り歩いたというエピソードも。歌の一部を加藤さんが朗々と披露されたのには少々びっくりしました(加藤さんの歌というのはあまり聴いたことがなかったので)。

1時間近くがあっという間に過ぎ、最後に、会場においでくださった関係者の方たちにひとことずつご挨拶をしていただき閉幕となりました。教授講師では服部之總のお孫さん4人、吉田謙吉のお嬢さんの塩澤珠江さん、学生では沼田陽一氏(作家・文学科1期)の妹さん、若林泰雄氏(文学科1期)のお嬢さんらにお言葉を頂戴しました。ご来場いただいた大勢のお客様に心より御礼申し上げます。

20171111_07.jpg

5月に出版された加藤さんの絵本『茂さん』も販売していました(完売御礼)。右は光明寺で11月26日に行われる『リトルボートストーリー』というお芝居のチラシ。なんと加藤さんはこれにも俳優として出演されます。

20171111_08.jpg

92歳にして漁師と俳優の二足のわらじ。加藤茂雄さん、生涯現役の「浜役者」として、これからもますますお元気で!

※今回の写真は、最後の1枚をのぞき、ライターの友井健人さんが撮影したものです(一部動画からのキャプチャあり)。どうもありがとうございました。
posted by taku at 18:15| 鎌倉アカデミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月10日

横浜市立大学ホームカミングデー

20171104_01.jpg

先週の土曜日(11/4)、横浜市立大学のホームカミングデーに行ってまいりました。

「ホームカミングデー」という名称、私が学生のころには耳にしたことがなかったのですが、最近はいろいろな大学で、卒業生を「お帰りなさい」とお迎えするイベントとして行われているようです。

20171104_02.jpg

横浜市立大学は学園祭(浜大祭)の真っ最中(例年ホームカミングデーは浜大祭期間中に行われるそう)。

20171104_03.jpg

今年のテーマは「SPACE」とのことで、それにちなんで宇宙人やスペースシャトルのオブジェが飾られています。

20171104_04.jpg

大学のマスコットキャラクター・ヨッチーもいました(キャンパスのイチョウ並木から生まれたイチョウの精、という設定。今年のゆるキャラグランプリにもエントリーしているとのこと)。

さて、横浜市立大学の卒業生でもない私がどうしてここに来たかというと、

20171104_05.jpg

このカメリアホールで、映画『鎌倉アカデミア 青の時代』が上映されるからなのでした。

20171104_06.jpg

なんと入場無料! 浜大卒業生担当は太っ腹です。

そもそも、どうして浜大のホームカミングデーに鎌倉アカデミアの映画を上映するかといえば、このふたつの大学は、非常に深い関わりがあるからなんですね(詳しくはこちら)。端的にいうと、鎌倉アカデミアの校長を務めた三枝博音(1892-1963)が、横浜市立大学の学長も務めていたということ。ほかにも5人の教授講師が、アカデミアから浜大に横滑りしています。

そういうご縁もあり、今回めでたく上映の運びとなりました。神奈川の「大学」を扱った映画を、神奈川の大学で上映するというのはなかなか素敵な企画だと思います。

20171104_07.jpg

ホール内には、三枝学長がみずから刻んだ扁額も飾られていました。鎌倉アカデミアの扁額は、
「幾何学を学ばざるもの、この門を入るべからず」
でしたが、こちらは哲人セネカの、
「もろもろの技術は生活に奉仕し、知恵が命令する」
という言葉です。

20171104_08.jpg

約160名の卒業生・関係者が来場されたのこと。開会にあたって学長のご挨拶と、応援団、チアリーダー部、管弦楽団による校歌の斉唱が行われました。

20171104_09.jpg

映画上映のあとにはトークセッションも(写真左から同大学の高橋寛人教授、私、本宮一男教授)。

本宮教授は鎌倉アカデミアと横浜市立大学のつながりや時代状況、三枝学長が鶴見事故(1963)のため現職のまま亡くなったことなどを述べられ、高橋教授は、鎌倉アカデミア以前の三枝学長の学者としての活動・業績などをお話しになりました。私は作品の成立過程などを、とりとめもなく話しましたが、三枝学長を直接知る卒業生の方たちにこの映画を観ていただけたことを大変嬉しく思いました。

20171104_10.jpg

これはある卒業生の方が持参していた1963年の学園祭プログラム(コピーを頂戴しました)。

20171104_11.jpg

冒頭に三枝学長の挨拶文が。新校舎落成もこの年であったことがわかります。そしてこのわずか半月後の11月9日に、三枝学長は鶴見事故で不帰の客となられます。昨日で、あの事故からちょうど54年が過ぎました。1963年は私の生まれた年でもあり、いろいろと感慨深いものがあります。

上映が終わったあとは、食堂で行われた同窓会にも参加させていただき、何人かの卒業生の方から、半世紀以上前の浜大の様子をお聞きすることができました。

20171104_12.jpg

こちらは、今年(2017年)の浜大祭プログラム。1963年のものと比べるとずいぶんデジタルな感じですが、

20171104_13.jpg

飾りつけなどは手作り感満載で、「ああ、学園祭ってこういう感じだったなあ」と懐かしい気持ちで帰路に着きました。
posted by taku at 18:55| 鎌倉アカデミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする