行ったのは、鎌倉・由比ガ浜にある「つるや」。1929年創業で、来年90年を迎えるとのこと。川端康成、里見クなどの鎌倉文士、小津安二郎、田中絹代といった映画人も愛した由緒あるうなぎの店である。そして、われらが鎌倉アカデミア演劇科のOBたちも、かつては年に1度この「つるや」で「うなくう会」という同窓会を開いていた。
上は「うなくう会」のスナップ(2000年ごろ。前列中央に前田武彦、前列左に加藤茂雄、勝田久、津上忠、岡喜一、川久保潔、若林一郎、小池榮ら各氏の顔が揃う)。加藤さん、勝田さんなど、この中の何人かの方には、映画『鎌倉アカデミア 青の時代』でインタビュー出演していただいているが、すでに全体の半数近くが故人となられたのは残念だ。
そんなわけで、以前から名前だけは知っていて、大変気になっていたお店だが、私自身はこれまで一度も訪れる機会がなかった(ひとりでは敷居が高かったというのもある)。しかし今回、鎌倉を舞台にしたあるプロジェクトがひと段落したということもあり、このプロジェクトの立役者である加藤茂雄さん(知る人ぞ知る俳優兼漁師にして鎌倉アカデミア演劇科の卒業生。上の写真にも写っているし、このブログにもこれまでずいぶん登場しているから詳しい説明は省略)を囲む昼食会を、この「つるや」で行うことにした。
それにしても93歳になる加藤さんのお元気なことといったら! 翌日(10/14)は某大学の先生から大部屋俳優時代の仕事についてインタビューを受けるというし、次の週末(10/20)は、早朝に地引き網漁に参加して船から網を撒き、午後からは2年に一度の東宝の集まりに出席するというから驚きだ。当然、日々の食事や片付けなど身の回りのことはすべてご自分でやられており、買い物に行く際には今でも自転車に乗っているという。
そんな加藤さんの身辺の話をうかがっているうちに、鎌倉彫の重厚な器が運ばれてきた。
うなぎは身が実に柔らかく、たれの味も控えめで口当たりが優しい。母の実家が三島なので、やはり老舗といわれる「桜家」のうなぎはしばしば食べに行くのだが、桜家のきりっと塩辛いたれに比べると、かなりマイルドである。好みの分かれるところだろうが、この優しい味つけが鎌倉文士のお好みであったらしい。
この日の昼食会には、加藤さんと私、そして妙齢の女性2人(20代と30代)が参加、4人で2階席の座卓を囲み、土曜の午後のひととき、ゆったりと伝統の味を堪能したのであった。
それにしても、この顔ぶれは一体……。90代の加藤さん、50代の私、そして20代と30代の女子〜ズ。年代はバラバラ、しかも、私と加藤さん以外は、ほんのひと月前までは、まったく知らない同士であった。勘のいい方なら、前回や少し前のブログ記事から何かピンと来るかも知れないが、もうしばらくプロジェクトの詳細は伏せておくことにしよう(今回の写真は女子〜ズのひとりが撮影)。
とにかく、大変おいしく、楽しい会食でありました。
自転車で浜に出てきた加藤さん。先ほどと洋服が違うのは、一度別れてから再び合流したため。