2018年12月29日
著作権保護期間、70年に延長
毎月送られてくる「文藝家協会ニュース」の中ほどのページに、上画像のような記事が。
なんと、これまでは作者の死後50年だった著作権保護期間が、TPP発効により、死後70年に延長されることになったという。それが実効となるのが、明日、12月30日から。
これって、結構大きな変更だと思うのだが、みなさん、知ってました?
ネット検索してみたところ、たしかにいくつかの記事がヒットしたが、マスコミや世論がこのことで大騒ぎした形跡はまったくなかった。今回の延長により、近々パブリックドメインになるはずだった村岡花子(2019年予定)、三島由紀夫(2021年予定)、志賀直哉(2022年予定)、川端康成(2023年予定)の著作権がそれぞれプラス20年存続ということになり、これらの作家の作品の二次使用(出版、映像化など)を狙っていた各方面には、少なからずの打撃となったはずなのだが……。
もはや確定事項なので、今さらことの是非を論じても始まらないが、ここで少しばかり個人的な心情を述べたい。
私の父は青江舜二郎という劇作家で、1983年、私が20歳の時に亡くなった。その時以来、私が著作権継承者となり、過去の著作が再刊されたり、脚本を書いた映画がDVD化されたり、という時には継承者として必要な事務手続きを出版社などと行ってきた。それから35年ほどが過ぎ、あと15年、つまり私が70歳になるであろう2033年で、そういった義務からすべて解放されると考えていたので、今回の延長は、思わぬ番狂わせであった。プラス20年となれば2053年、私が90歳(生きていればだが)の時まで、青江の著作権は存続することになる。それはあまりに長い。私としては、70歳で先代の残務処理はすべて終了し、それ以降、作品は公共の著作物として、誰にでも好き勝手に使われることを密かに望んでいたのだが……。
このあたりの心情は、当事者でないとなかなかわかってもらえないかも知れない。著作権管理はそれほど煩雑なものではないので、そういう事務手続きがわずらわしいということでは決してない。では何故かといえば、「作家の家族」というのは、目には見えないが、何ともいえず重たい宿命を背負わされているところがあり、それを誇らしく思う反面、早くその重圧から逃れ、自由になりたいと思っているものなのだ。著作権の消滅は、その絶好のきっかけと考えていたのだが、ずいぶん先に遠のいてしまった。
2018年12月26日
「砂の香り」@TCC試写室
去る23日、岩内克己監督を囲む集い「砂の香り」にゲストとして参加してきた。岩内監督の教え子であるライターの高畠正人さんが主催する催しで、今回が31回。1994年以来、もう24年も続いているという。いつもがどういう形なのかよく知らないのだが、今回は新橋のTCC試写室を借りて、岩内監督が出演した『鎌倉アカデミア 青の時代』を上映、そのあとで岩内監督と私とがトークを行うという段取りだった。参加者は30人弱。TCC試写室にはこれまでずいぶん足を運んでいるが、こんなに人口密度が高いのは初めてだった気がする。
トークは50分ほどで終了。映画もトークも、大変好意的に受け取っていただいて嬉しい限り。岩内監督とお会いするのは、昨年のケイズシネマでの公開初日以来だったが、変わらずお元気で頼もしい限り。岩内監督と、鎌倉アカデミア同級生の加藤茂雄さんとは、ともに大正14(1925)年の生まれで93歳。大正生まれも少なくなってきたとはいえ、まだまだご健在な方も多くいらっしゃるのだ。
会場には、「若大将シリーズ」で長年にわたって若大将(加山雄三)の妹・照子役を演じた中真千子さんのお姿も。この照子というキャラクター、何を隠そう、結構私のお気に入りなのである。物語のクライマックスで若大将が何かの試合に出る時には、だいたいおばあちゃん(飯田蝶子)と照子が一緒に観客席で応援するのだが、その際、さりげなく年配のおばあちゃんを気遣う仕草が、演技と言うよりも本当に孫が祖母を思いやっている感じで、そういうナチュラルさが好印象であった。マネージャー江口(江原達怡)とのロマンスの進展も、シリーズの清涼剤といった感じで微笑ましかったし。余談ではあるが、若大将とヒロインの澄ちゃん(星由里子)との関係は、1作ごとにリセットされて毎回初対面の他人になってしまうのに、照子&江口のロマンスは継続していたというのも考えてみれば不思議である(まあ、メインの男女の恋愛は、常に出会いから描かないと新鮮味がないということなのだろうが…)。
さらに中さんといえば、私のような特撮愛好家にとっては、「ウルトラセブン」第2話「緑の恐怖」でのメインゲスト(箱根に向かう小田急ロマンスカーの中で、隣りに座っていた夫・石黒が突然ワイアール星人に変貌してしまうというトラウマ必至の恐怖体験をした若妻)、そして「兄弟拳バイクロッサー」での水野兄弟(金子哲、土家歩)の母親役も忘れがたい。
「僕は当時大学生でしたけど、『バイクロッサー』結構見てたんですよ」
と、お話ししたら、
「そうでしたか。あれは東映の俳優センターに所属していたころで、大泉でずっと撮影していたんです。お母さん役でしたから、出番はセットが多かったかしら」
などと懐かしそうに当時のことを語ってくださった。しかしそのうち、
「……でも、あれに出ていた、中原(ひとみ)さんの息子さん、ずいぶん早くに亡くなって……」
と、うつむいて淋しそうな顔をされたので「はっ」とした。そう、弟役の土家歩さんは「バイクロッサー」出演から5年後の1990年、まだ26歳という若さで、不慮の自動車事故で亡くなったのだ。
「バイクロッサー」での中さんは、「若大将〜」の照子と同様に自然体で、どこからどうみても水野兄弟のよき母親といった趣だった。私生活では独身を貫いた中さんだが、「自分にもし男の子がいたらこんな感じなのかな?」とイメージをふくらませつつ、撮影中は本当の母親のように土屋さんたちに接していたのだろう。それだけに、土屋さんが亡くなった時には、まるで自分の息子が亡くなったような淋しさを味わったのではないのだろうか。……などと想像をたくましくしてしまった。いずれにせよ、ご壮健なお姿を拝することができ、大変に嬉しいひとときだった。
これは「砂の香り」の参加者のみに配布される豪華パンフレット。テキストぎっしり、読み応え充分の大力作。忙しい年末に毎回これを作っている高畠さんの情熱にはほんと、頭が下がります。30人前後の参加者に配るだけというのはもったいなさすぎ。もっと広く配布なり販売なりした方がいいんじゃ……。
2018年12月06日
鎌倉の流鏑馬
少し前のことになりますが、11月11日に鎌倉・材木座海岸で流鏑馬(やぶさめ)を見ました。その時の映像をアップします。
動きは早いし、スタート地点は遠いし、動画撮影としては、かなり難易度が高かったと思います。もちろん、流鏑馬そのものの難易度はそれの比ではないのですが……。走っている馬から矢を射て的に命中させるなんていうのは、よほど人と馬との呼吸が合っていないと出来ないように思われます。しかし聞くところによれば、このお馬さんたちは日頃から流鏑馬用にトレーニングを積んでいるわけでもないようで、射手ともほぼ初対面だった様子。それでいながら、かなりの確率であれだけ小さい的に命中させるのだからまさに神業です。ラスト、お馬さんだけ走ってきたのはご愛嬌ということで(射手との呼吸が今いちだったのかも知れません)。