
毎月送られてくる「文藝家協会ニュース」の中ほどのページに、上画像のような記事が。
なんと、これまでは作者の死後50年だった著作権保護期間が、TPP発効により、死後70年に延長されることになったという。それが実効となるのが、明日、12月30日から。
これって、結構大きな変更だと思うのだが、みなさん、知ってました?
ネット検索してみたところ、たしかにいくつかの記事がヒットしたが、マスコミや世論がこのことで大騒ぎした形跡はまったくなかった。今回の延長により、近々パブリックドメインになるはずだった村岡花子(2019年予定)、三島由紀夫(2021年予定)、志賀直哉(2022年予定)、川端康成(2023年予定)の著作権がそれぞれプラス20年存続ということになり、これらの作家の作品の二次使用(出版、映像化など)を狙っていた各方面には、少なからずの打撃となったはずなのだが……。
もはや確定事項なので、今さらことの是非を論じても始まらないが、ここで少しばかり個人的な心情を述べたい。
私の父は青江舜二郎という劇作家で、1983年、私が20歳の時に亡くなった。その時以来、私が著作権継承者となり、過去の著作が再刊されたり、脚本を書いた映画がDVD化されたり、という時には継承者として必要な事務手続きを出版社などと行ってきた。それから35年ほどが過ぎ、あと15年、つまり私が70歳になるであろう2033年で、そういった義務からすべて解放されると考えていたので、今回の延長は、思わぬ番狂わせであった。プラス20年となれば2053年、私が90歳(生きていればだが)の時まで、青江の著作権は存続することになる。それはあまりに長い。私としては、70歳で先代の残務処理はすべて終了し、それ以降、作品は公共の著作物として、誰にでも好き勝手に使われることを密かに望んでいたのだが……。
このあたりの心情は、当事者でないとなかなかわかってもらえないかも知れない。著作権管理はそれほど煩雑なものではないので、そういう事務手続きがわずらわしいということでは決してない。では何故かといえば、「作家の家族」というのは、目には見えないが、何ともいえず重たい宿命を背負わされているところがあり、それを誇らしく思う反面、早くその重圧から逃れ、自由になりたいと思っているものなのだ。著作権の消滅は、その絶好のきっかけと考えていたのだが、ずいぶん先に遠のいてしまった。