『浜の記憶』主演俳優の加藤茂雄さんが、2020(令和2)年6月14日午前7時、慢性腎不全のため94歳で永眠されました。95歳のお誕生日(6月16日)を迎える2日前のことでした。
ご遺族の意向により、葬儀は6月18日に家族葬にて執り行われました。
謹んで加藤茂雄さんのご冥福をお祈りいたします。(『浜の記憶』公式サイトより)
今、20時半すぎ。ヤフーのトップページに「俳優の加藤茂雄さん死去」の文字が。
「ああ、本当に逝ってしまわれたんだなあ」という寂しさとともに、砂を噛むような、ある後悔の念が頭をもたげてくる。
加藤さんに『浜の記憶』の出演を持ちかけたのは今から2年前、2018年の6月。加藤さんはとても元気だった。撮影は猛暑が収まった9月から10月にかけて行われ、年内に完成、公開も決まった。
お披露目の上映会を鎌倉の光明寺で行ったのが今から1年前、2019年の6月。母校・鎌倉アカデミアがあった場所での晴れ姿。加藤さんはとても嬉しそうだった。翌7〜8月の新宿での公開でも、連日のトークイベントに意欲的に参加。だが、都心の酷暑にやられ、少し体調を崩してしまった。でも、11月の横浜での公開では、また笑顔で舞台挨拶に臨んでいた。
それからわずか7ヵ月。2020年の6月。もう加藤さんはいない。100歳まで余裕で生きると誰もが思っていた、あんなに丈夫な加藤さんだったのに。
加藤さんは90歳を過ぎての映画初主演という、俳優としてこれまであまり例のない壮挙を成し遂げ、マスコミなどから取材を受ける機会も増えていたが、しかしそうした「ハレ」の日々は、肉体的にも精神的にも、思った以上にハードだったのではないだろうか。もし私が2年前、『浜の記憶』への出演をお誘いしなければ、加藤さんは今も元気なままで、飄々と長谷の海岸を散歩していたのではないか…。
そんな思いが、ずっと頭から離れない。
加藤さん、無理させてしまってごめんなさい。どうぞ安らかにお眠りください。