2021年03月12日

ルリ子をめぐる冒険(3)映画「緑はるかに」(中)

前回までのあらすじ

小学6年生のルリ子は、北海道にいる科学者の父が病気になったと聞き、母とともに迎えの車に乗ったが、それは父の研究の秘密を盗もうとする某国スパイ一味の罠だった。両親とともに奥多摩にある研究所に捕らえられたルリ子だが、研究の秘密を隠したオルゴールを瀕死の父から託され、どうにか脱出。孤児院から抜け出してきたという三人組と行動をともにすることに。


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翌朝、洞窟で目を覚ました4人は、近くの池まで行き顔を洗う。

「まあ、キレイなお水ね」
なんて言ってはいるものの、どこからどうみてもスタジオにあつらえた小さいプール。

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デブ(右端)がうがいをしているそのすぐ隣りでルリ子が同じ水で顔を洗っているのを見ると、何だか気の毒に思えてしまう。

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三人組は朝食の木の実や果物を探しに行き、ルリ子は池のほとりで野菊(食用?)を摘み始めるが、繁みに隠れていた田沢、大入道、ビッコのスパイトリオに拉致される。

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戻って来た三人組は、地面に落ちていた野菊からルリ子の拉致を悟り、彼女が故意に落として行ったと思われる野菊の後を追って吊り橋をわたり、エレベーターに乗って、研究所までたどり着く。

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前にも出てきた洞窟の断面(すごい特撮)。右に吊り橋の端が見える。

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研究所では、ルリ子が大入道に両腕を押さえられ、田沢がオルゴールを入念に調べているところだった。

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三人組は壁のスイッチを適当にいじくり、

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一部の機械をショートさせる。このあたりもコント風演出全開で、

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これにはルリ子も苦笑い、である(笑っているのがわかる)。

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途中でエレベーターを止められ、扉をこじ開け脱出したら、今度はそのエレベーターに押しつぶされそうになるなどの危険に遭うが、どうにか難を逃れる。

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なおも追ってくる田沢一味と、吊り橋の上でオルゴールの奪い合い。

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ここら辺は実際の橋ではなくオープンセットで撮られている感じ。

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ここでもルリちゃん笑ってるんだよね。案外楽しかったのか? あるいは照れ笑い?

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敵が手にしたオルゴールをチビ真が奪おうとしたその時、

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オルゴールは橋の下の川に真っ逆さま。一同呆然。

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と同時に、重量オーバーのためか吊り橋の綱が切れ、橋は真っ二つに(特撮班ご苦労様)。

絶対に死傷者が出るレベルの事故だが、子供向け映画なので敵味方とも全員無事。ルリ子&三人組と田沢一味が川の両岸に分かれてしまう。

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こんな時も笑っているルリちゃん。劇団出身の子役たちは必死で芝居をしているのに。でも、演技経験ゼロの素人がいきなりヒロインに抜擢されたのだから、随所に「素」が出てしまうのは仕方がない。むしろ、現在の「大女優・浅丘ルリ子」からは想像もできない初々しさが好印象。

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橋が分断されたおかげで、4人は田沢一味の追跡をひとまず逃れる。
「あの流れはどこまで行ってるのかしら」
「東京さ」

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落ちたオルゴールは、川を下って東京方面に流れていく。この辺の描写は、映画「緑の小筐」(1947年・大映・監督 島耕二)との類似を指摘する意見もある。

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ルリ子&三人組も、オルゴールを追いかけるように川に沿って東京へ向かう。

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旅を続ける4人のバックに主題歌(作詞・西條八十 作曲・米山正夫)がフルコーラスで流れる。

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緑はるかな 地平の彼方(あなた)
だれかよんでる まねいてる
汽車もいく 馬車もいく
思い思いの 夢のせて
ああ しあわせは どこにある

旅の小鳩の 翼が折れて
青いリボンに 雨がふる
父いずこ 母いずこ
歌え形見の オルゴール
ああ しあわせは どこにある

ビルの都(みやこ)は つめたいけれど
のぞくやさしい 青い空
泣かないで 行きましょう
今日も希望(のぞみ)の 花摘みに
ああ しあわせは どこにある

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その途中、4人はマミ子(渡辺典子)という家出少女と道連れになる。田舎で祖母と暮らしていたが、東京で歌を歌っている母親に会いたくなり、東京に行くところだと言う(父親はいない様子)。こうして一行は5人にふくれあがる。

※このマミ子は原作でも途中から登場するキャラなのだが、ルリ子の妹分的な存在として作者が思いつきで投入した感じで、大した活躍もしないまま、後半はほぼ忘れられて終わる。そんなわけで、映画でもあまり存在価値がない、と言いたいところだが、実は、伏線回収という点で、原作よりはきちんとした役割が与えられている。

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ところ変わってこちらは東京のある街。
空き地に小屋が建てられ「ユニオンサーカス」の公演が行われている。

フランキー堺(当時25歳)演じるピエロがいきなり登場し歌い踊る。呼び込みをしているという設定のようだが、同一画面に映っているのはエキストラばかり。他のキャストとまったく絡まない、フランキーの完全独演会である(しかもメイクが濃いので、言われないとフランキーなのか谷啓なのかよくわからない)。

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いささか不可解な出演形態だが、実は、この「緑はるかに」の公開5日前に封切りされた日活の「猿飛佐助」の主演がフランキー堺で、製作・水の江滝子、監督・井上梅次、スタッフも撮影・照明・録音が同じで、市川俊幸、内海突破、有島一郎など出演者もかなりダブっている(一部撮影期間が重なっていたのかも知れない)。そういうつながりでの「特別出演」のようだが、登場時間わずか1分40秒、カット数2カット。テストと本番で2時間もあれば撮影は終わったのではないか。

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どんな形であれ、当時売出し中のフランキー堺の名前を入れておけば、少なからず集客がアップするだろう、という製作側の思惑が透けてみえるようだが、せっかく出演するのであれば、単独ではなく、どんなに短くてもいいから浅丘ルリ子との掛け合いを見てみたかったと思う。

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さて、そのフランキーは出番の最後に「ユニオンサーカス」の園長室のドアを差し示すのだが、その中にいたのが何と田沢であった。世を忍ぶ仮の姿としてサーカス団を運営していた、ということなのだろうが、いささか唐突な話だ(フランキーの演じるピエロも田沢の手下だったことになる)。

田沢に、オルゴールもルリ子たちの行方も皆目わからないと報告している大入道とビッコ。
「この世の中から消えてなくなったわけではあるまいし。草の根を分けても探し出せ!」
と発破をかける田沢。

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一方、東京に着いたルリ子たちは、廃墟を隠れ家にして共同生活を始めていた。デブとノッポが靴磨きをして生計を立てているのだった。
全員分のおむすびを作っているルリ子。終戦からほぼ10年が過ぎているのだが、どうにも「戦後」を感じる光景である。

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ルリ子たちがオルゴールの話をしているのを聞いたマミ子は、オルゴールなら持っていると言いバスケットの中から取り出して見せるが、それは桃色と黄色の別物だった。
マミ子はオルゴールが大好きなので、去年、母親が買ってくれたのだと言う(これ伏線です)。

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マミ子のオルゴールの音色を聞くうちにルリ子は、幸せだったかつてのクリスマス(1年or2年前)を思い出し、
「あのころはよかったわ〜 父もいたいた母もいた〜」
と口パクで歌い出す(歌はやっぱり安田祥子)。

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絵に描いたような回想シーン。

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プレゼントをもらい満面の笑みのルリ子。

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父も母も元気そうだ。

それにしても庶民とはかけ離れた、なんともゴージャスな暮らしぶり。木村博士は何かの発明で巨大なパテント料でも手にしていたのだろうか。

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しょぼ〜んとしてルリ子の歌を聞く一同だったが(映画は開始からすでに1時間が過ぎてあと30分しかないため)、泣いてばかりいるわけにもいかず、ノッポ、デブ、マミ子は靴磨きに出かけ、ルリ子とチビ真はオルゴールを求め、当てもなく河口付近にたたずむ。

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そこでたまたま大入道&ビッコと遭遇(たまたまにも程がある)。

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またも追いかけっこが始まり、

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ルリ子とチビ真は古道具屋のタンスの中に身を隠す。

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大入道とビッコが去った後、2人は店主に謝って一度店を出るが、その店のショーウィンドーに、緑のオルゴールが飾られているのを発見する。
余談だが、チビ真のボロボロの服とルリ子のシミひとつない洋服との対比が笑える。ルリ子だって(推定)10日以上は着たきりすずめのはずなのに…。この辺はさすがのヒロイン待遇である。

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蓋を開けてメロディを聞くと、まぎれもなくルリ子が持っていた、あの緑のオルゴールだった(奥多摩で落としたオルゴールが巡り巡ってこの店にあったというのだが、もう少し経緯が語られないと話に説得力がないような…)。

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これはルリ子のオルゴールだから返して欲しい、と店主に頼むチビ真。しかし店主いわく、
「元は誰の物だろうと、金を払って仕入れてきたものだから。1500円なら売りましょう」
演じるは有島一郎。岡田眞澄とフランキー堺には裏切られたが、有島はきちんとルリ子と「共演」していた。この当時38歳とは思えぬ落ち着きで、もう芸風も完成されている。

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ルリ子とチビ真は隠れ家に戻り、あとの3人にことの次第を報告。デブは、
「靴磨きを5人でやったら、1日300円。5日間で1500円ぐらい貯まるさ」
と言い、5人は翌日から早速ガード下で靴磨きを始める(ガード下の靴磨きというのも時代を感じるが、この当時はまだ日常的な風景だったようだ)。

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可愛いルリ子にお客が殺到し、あとの4人はヒマを持て余す、などというシーンがあってもいいような気がしたが、それはなかった(この靴磨きのシーンもそうだが、どうも全体的にルリ子のアップが少ない。あまりアイドル的な売り方をすることは考えていなかったのだろうか)。

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1日の仕事が終わるごとに、ショーウィンドーのオルゴールを眺める5人。このあたりの展開はテンポもよく、明るい音楽と相まっていい感じ。

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雨の日には閑古鳥が鳴くが、翌日は靴が汚れているため繁盛するという流れも、さながら人生の縮図のようである。

さて、4人は無事にオルゴールを手に入れることができるだろうか? というところで次回につづく。

※このページのキャプチャ画像は、日活株式会社が製作した映画「緑はるかに」(1955年)からの引用であり、すべての著作権は日活株式会社が保有しています。


posted by taku at 11:56| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする