2010年09月14日

「ゆめたがい」?「ゆめちがい」?

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今年は平城遷都1300年ということで、ご当地の奈良ではかなり大々的なイベントが行われているようだ。東京でもそれにちなんで、普段はなかなかお目にかかれない飛鳥〜奈良時代の古仏を多数集めた展覧会「奈良の古寺と仏像 〜會津八一のうたにのせて〜」が開かれている。一昨日それを観に行って来たのだが、飛鳥仏を深く愛する私としては、入江泰吉の写真集などで浪人生のころから強く魅せられていた法隆寺の夢違観音(上写真)の実物を見ることが出来たのが大きな収穫だった。他にも、同じく法隆寺金堂の天蓋天人や菩薩立像など、写真集では何度も見てきたメジャー級が目白押し。何とも贅沢な時間を味わった。

ただ、写真はあくまで平面(2D)であり、それに対して実物は立体(3D)である。その違いなのかも知れないが、夢違観音は写真と実物とでは、かなり印象が異なっていた。私は写真で見た夢違観音から、それほど柔和な印象を受けたことはなく、どちらかというと無表情で、それゆえ神秘的な仏像だと感じていた。しかし、会場に置かれた夢違観音は、静かだが穏やかな微笑みをたしかに浮かべ、いかにも、人間の見た悪い夢をいい夢に変えてくれるような慈悲心をたたえているのである。写真と実物の印象がここまで異なる仏像を見たのは初めての体験であった。

ちなみに、この夢違観音の読み方だが、私の手元にある入江泰吉撮影の写真集『仏像』(1966年・保育社)では、「ゆめたがいかんのん」となっており、私もこれまでずっと「ゆめたがい」と言って来たのだが、何故か最近は「ゆめちがい」と言うことが多いらしい。今回の展示でも「ゆめちがい」とルビが振られていた。個人的には「ゆめたがい」の方が、何やら文学的な響きを蔵していて好きなのだが…。なお、吉祥天についても、これは完璧に「きっしょうてん」だと思っていたのだが、今回の展示では「きちじょうてん」となっていた。こういう呼称の変更は、いつ、誰が、どうやって(何の権利で)行うのであろうか。馴染んだ読み方が知らないうちに変えられているのは、大変に違和感を覚えるのだが…。

さらに余談。今回の展覧会は私ひとりではなく、わけあってある知人女性と出かけたのだが、みずからも女でありながら女体の柔らかなフォルムになみなみならぬ興味を示す彼女は、「東洋のビーナス」とも言われる唐招提寺の如来形立像が一番のお気に入りだった様子。仏像も人によっていろいろな観方、感じ方があるものだと改めて気づかされた。

「奈良の古寺と仏像 〜會津八一のうたにのせて〜」は、三井記念美術館にて9月20日(月)まで開催。

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三井記念美術館ホームページ
平城遷都1300年祭ホームページ
posted by taku at 17:14| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする