2011年07月28日

橋口五葉展

Goyo.jpg

千葉市美術館で開催されている「橋口五葉展」に行ってきた。わずか41年(正確には39年と2カ月)の生涯ながら、日本画、洋画、図案、装丁、浮世絵(版画)など実に多彩な創作活動を行った人で、展示された作品も400点以上! 実に見ごたえのある展覧会だった(もっと時間に余裕を持って出かければよかったと悔やまれる)。

彼の作品には女性をモチーフにしたものが大変多く、活動した時代や仕事の幅の広さなどからも竹久夢二との類似を感じたりしたが、ある評論家の方の意見では、夢二の描く女性像からは、男女間の情念というか、そのモデルと夢二との間の交情が浮かび上がってくるのに対し、五葉の作品にはそれが感じられないとのこと。なるほど、言われてみれば、五葉はあくまでフォルムの美しさの追求のためにモデルと対峙していたような印象を受けた(生涯独身を貫いた彼がつけていた家計簿には、ひんぱんにモデルにギャラを払っていたことも記されている。もし男女の関係にあったなら、このあたりはもっとアバウトになっていたのではないだろうか)。

まあしかし、どちらの画家の描く女性像も、私などは大変好みなのだが。とりわけ印象に残ったのは西洋画の技法で東洋的な主題を描いたという「孔雀と印度女」(1907)。同時期の作品に羽衣伝説に材を取った「羽衣」というのがあるそうだが、こちらは現在所在不明で、下絵しか展示されていないのが残念だった。

晩年の五葉は西洋画とも装丁とも距離を置き、浮世絵版画に創作欲のすべてを注ぎ込むようになる。その成果も多数展示されていた。晩年といっても三十代後半のことで、彼とて自分の寿命は知らなかったはずなのに、その若さで六十代の作品と言っても不思議ではない、まさしく「晩年の成熟」を体現したことに、しばし言葉を失った。もし彼が現在の日本人の平均寿命(80歳前後)まで生きたとしたら、もう一度ぐらい西洋画への回帰があったのでは? などと想像をたくましくしてしまった。

ひととおり作品を見終えたあとで、この展覧会の企画構成を担当した学芸員の西山純子さんとお目にかかり、いろいろとご教示いただいたことも貴重な収穫だった。この橋口五葉展、関東では今月いっぱいだが、その後北九州、鹿児島でも開催されるとのこと。大正期の美人画(今見ても全然古臭くない!)を堪能できる絶好の機会だと思うので、ご興味のある方は是非!

■千葉市美術館「橋口五葉展」
posted by taku at 13:40| レトロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする