2017年05月21日

『鎌倉アカデミア 青の時代』イベントレポート(2)

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公開2日めのトークゲストは、演劇科第2期生の声優・川久保潔さん(中央)と劇作家・若林一郎さん(左)のお二人。

私の亡父・青江舜二郎は1946年の鎌倉アカデミア開校時にはまだ中国にいたため教員になっておらず、翌47年の春から光明寺に通い始めます。つまり、第2期生の入学とともにアカデミアの一員となったわけで、それだけに第2期生との一体感は強く、閉校後に家族的な付き合いを続けたのも、ほとんどが第2期生でした。私自身も、第2期生の方々には幼少期からずいぶん可愛がっていただいた記憶があるのですが、こういう公共の場でそういう方たちとトークを行うとなると、昔のことが変に頭をよぎり、進行がぎこちなくなってしまうところがあるようです。

最初に映画の感想をうかがったところ、川久保さんは、
「2時間は少し長いかなあ。1時間半くらいだとよかったかも知れない」
とのこと。たしかに、尺のことは、そうお感じになる方もきっといらっしゃると思っていたので、正直におっしゃっていただいてよかったと思います。しかしその一方、
「音楽がよかったですね。すばらしい選曲で感心しました」
と、嬉しいお言葉も。劇中のBGMは、すべてクラシックのピアノ曲を使用したのですが、選曲にはかなりごだわりを持って臨んだつもりだったので、そこに着目というか「着耳」していただいて、苦心の甲斐があったと思いました。若林さんは、
「カバさん(川久保さんのアダナ)は長いとおしゃいましたが、私はひたすら懐かしく、いい学校だったな、という思いを新たにして観ました」
と、内容的にもご満足だった様子。

続いて、アカデミアの思い出について語っていただいたのですが、「悪いこともずいぶんした」とお二人が顔を見合わせてお話になったのが「トンネルスリラー」。
通学に使用していた東海道線の保土ヶ谷と戸塚の間にはトンネルがあって、当時は電車の中に電灯がないから、そのトンネルを通過している間は真っ暗になるそうです。その闇に紛れて、帽子を隠したり、殴ったり、といういたずらを繰り返していたのだとか。もちろん学生同士限定で、一般の乗客の方に害が及ぶことはなかったそうですが…。加害者の筆頭は、後に洋物ドラマのアテレコの第一人者となる中野寛次さん、被害者の筆頭はフジテレビのディレクター・プロデューサーを務めた福中八郎さんだったそうです(すでにお二人とも故人)。
アカデミア出身者にはテレビ界で活躍した人が数多くいたことが、こんなエピソードからもうかがえます。

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また、お二人に「春の目ざめ」上演当時のことをうかがったところ、川久保さんは、美術学校に通うお兄様の影響もあって、この作品でも吉田謙吉の指導の元、美術スタッフとして参加しており、まだ演じる側を志向してはいなかったとのこと。一方の若林さんは文芸部で、早稲田演劇博物館に行ってヴェデキントのことを調べて学生みんなの前で発表したことがあるそうです。
中盤の見どころというべき干草場の場面について、若林さんに再現映像の「再現度」をうかがうと、「あの場面は、もっとわらが多かったよ。演じる2人の姿がすっかり埋もれてしまうくらい」
とのお答え。その辺まで、きちんとリサーチしておけばよかった、と心の中で舌打ちしました。

声優として60年以上のキャリアを持つ川久保さんですが、俳優としての出発点と自覚しているのは、1950年に研究発表公演として上演された「死神と林檎の樹」の精神科医・イーヴァンスの役だったとのこと。
「精神的におかしくなった患者に『わかってもらえたね』と念を押すセリフがあるんですが、それをすーっと口にしたところ、総稽古の時、青江先生に、「おい、そこはもっともっと待て、もっと間を長く取れ」と言われましてね。それで、あ、そうか、間というのは、いちいち台本には書かれていないけれど、演じる俳優同士の気持ちのやりとりだったり、観ているお客さんに想像させたり納得させるためだったり、いろいろな意味あいがあって、それをきちんとわかった上で演じることが大事なんだと、つくづく教えられました。それは今でも鮮明に覚えています」
70年近く前のことであっても、心に響いたアドバイスというのは、永く記憶に留まるということを具体的に示してくれたエピソードでした。それを聞いた若林さんも、
「間とか、間合いなんていうのは、人間同志の濃密な付き合いからでなければ生まれて来ないものです。そういうことを、アカデミアの先生方はちゃんと教えてくれたんですよ。ありがたかったなあ」
と言葉を継いでくれました。

最後に川久保さんから、
「こういう学校もあったということを、皆様の頭の片隅にでも置いていただければ幸いです」
とのメッセージがあって、この日のトークショーは閉幕となりました。

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ゲストのお二人をお見送りしたあとは、『カナカナ』と『凍える鏡』でカメラマンを務めた宮野宏樹さんと、『彦とベガ』の監督・谷口未央さんが来てくれていたので、昨日に引き続き、喫茶店「らんぶる」に移動して、夕方まで映画談義に花を咲かせました。
posted by taku at 20:41| 鎌倉アカデミア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする