2021年03月14日

ルリ子をめぐる冒険(4)映画「緑はるかに」(後)

前回までのあらすじ

小学6年生のルリ子は、北海道にいる科学者の父が病気になったと聞き、母とともに迎えの車に乗ったが、それは父の研究の秘密を盗もうとする某国スパイ一味の罠だった。両親とともに奥多摩にある研究所に捕らえられたルリ子は、発明の秘密を隠したオルゴールを瀕死の父から託され、どうにか脱出。孤児院から抜け出してきたという三人組と行動をともにすることになるが、スパイ一味に追われ、オルゴールを橋から川に落としてしまう。失われたオルゴールを求めて一行は東京に向かい、そして古道具屋の店先でそれを発見。靴磨きをして金を貯め、オルゴールを買い戻そうとするが…


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5日が経って無事に1500円が貯まり、5人はいさんで古道具屋に向かうが、ショーウィンドーにオルゴールの姿はなかった。店主に聞くと、今朝、「27、8歳くらいのキレイな奥さん」に売ったと言う(妙に具体的だ)。

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ルリ子たちが気を落として店を出た直後、大入道とビッコが店を訪れる。緑のオルゴールが店先に並んでいたことを聞きつけてやって来たのだ。それがすでに売れてしまったこと、そして、ルリ子たちも買いに来ていたことを店主から聞いた2人はすぐそれを田沢に報告。田沢は、
「いい手があるぞ。オルゴールかルリ子か、どっちかが引っかかる罠だ」
と2人に耳打ちする。

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田沢の命を受けた大入道とビッコがピエロの格好で、
「明日、サーカスに緑のオルゴールをご持参の方には、5万円を差し上げます」
と歌いながら町中を宣伝して回る(フランキーを出すならこのシーンでもよかったんじゃないかと思ったが、それだとフランキーも直接の共犯になるから無理だったのだろうか?)。それにしてもこの時代に5万円とは…。大変な太っ腹である。

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その話は5人の耳にも届いたが、チビ真は「あの広告を見てサーカスを調べに行ったら大入道がいた」と報告、ルリ子たちは、「ユニオンサーカス」が田沢一味の本拠地であることを知る。このままでは緑のオルゴールは田沢たちの手にわたってしまうかも知れない。しかし、顔を知られている自分たちがうっかり出て行けば捕まってしまう…。

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チビ真は、自分が以前いた孤児院「光の家」に行き(どう見ても絵です)、

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仲間たちに応援を要請(子供たちが浴衣姿で坊主刈りか坊ちゃん刈りなのが時代を感じさせる)。

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翌日、「ユニオンサーカス」の前には、オルゴールを持った子供たちの長蛇の列が。

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列には、面を被り顔を隠したルリ子、三人組とマミ子、そして「光の家」の孤児たちも混じっていた。

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そんな中、並んでいる子供の顔をうかがおうとする27、8歳くらいの婦人が…

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楽屋で田沢は、集まったオルゴールを調べていたが、どれもこれも偽物。

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だが、最後の最後に本物を発見する。
「これだ!」

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それを廊下で聞いていたチビ真たちは、楽屋に飛び込み、

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田沢の手からオルゴールを奪い取る。

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ルリ子と三人組、「光の家」孤児たちと田沢一味との、サーカス小屋での大乱闘。
ついにノッポからルリ子に、オルゴールが手渡された!

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そんな中、先ほどの婦人がマミ子を見つけ抱きしめる。彼女こそマミ子の母親だった。

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ドタバタの乱戦が続く中、警官隊がなだれ込んで来る。「光の家」から子供が集団脱走してサーカスに向かったとの通報を受け出動して来たのだ。

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警官隊の隊長は山田禅二(当時40歳)。「特別機動捜査隊」の田中係長など、叩き上げの刑事役がよく似合う俳優だが、こんなに昔から警官役だったのか、と思わず頬がゆるむ。

チビ真は隊長に、「こいつらは外国のスパイです」と告げるが、田沢は、「こいつらこそスリや不良です」とうそぶき、また、ルリ子の手にあるオルゴールは自分のものだから返させて欲しいと要請する。ルリ子は思わず激昂し、

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「いいえ! この中には大事な秘密が隠されています。ほんとにこいつらはスパイなんです!」
と、この作品で初めて、感情をあらわにした金切り声をあげるが、この声のトーンは、明らかに後年の浅丘ルリ子に通じるものがあった。

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そんなルリ子の熱弁も空しく、隊長は田沢に言われるまま、ルリ子のオルゴールに手をかけるが、

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その時「隊長、奥に木村博士が」という部下の声。

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そしてルリ子の父母、まさかの再登場。

え、え、え???

完全に、口(くち)ポカーン状態。あんたたち死んだはずでしょう? それなのに、ちゃんと立って歩いてますよ。

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「お父様、お母様!」
抱きつくルリ子。感激の再会、と言うのとは明らかに違う、強烈な違和感。

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木村博士ははっきりした口調で隊長に「この男たちを捕まえてくれ」と伝え、田沢らはあえなく逮捕される。

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「お父様も、お母様も、生きてらっしゃったのね」
「秘密を言えと毎日責められてね、今度こそダメかと思ったよ」
と言いつつ、あの時よりずいぶん元気そうな木村博士。奇跡の回復力。
三人組は自己紹介し、博士は、
「ルリ子が大変にお世話になったようだね」
と礼を言う(あんた、なんで知ってるの?)。

うーん。これはダメなんじゃないかなあ。子供向けだからいいの? こういうことをやるから「子供だまし」って言われるんじゃないの? いろいろと大変納得の行かないクライマックスである。

さらにここからも、いささか首を傾げる展開。

木村博士はチビ真から渡されたオルゴールの蓋を開けるが、流れてきたメロディが違う。ルリ子は「あ! これじゃない!」と顔色を変える。これだけ苦労してきたのに、偽物だったのか…と肩を落とす一同。

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その時、本物のオルゴールのメロディが聞こえて来る。

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曲の流れている園長室に向かったルリ子が見たのは、母親とともに緑のオルゴールに耳を傾けているマミ子の姿だった。

マミ子の母は、マミ子が一人で東京に向かったという手紙が届いたので、毎日、子供が集まりそうな所を探していたのだと言う。有島店主の言っていた、「27、8歳のきれいな奥さん」とはこの母親のことだったのだ。母親はオルゴール好きなマミ子のために、これを買い求めたというわけ。

これまでの事情を理解したマミ子は、そのオルゴールをすぐルリ子に渡す。そしてルリ子から博士の手に。

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博士はオルゴールの蓋の鏡をはずし、方程式らしきものが書かれた数枚のメモを取り出す。それにしても鏡の裏とはずいぶん単純な隠し方である。その程度の細工なら、以前、田沢たちがオルゴールを入念に調べた時に発見されそうなものだが…。ちなみに原作のオルゴールの秘密はこれよりずっと「高度」であるが、それについては後述する。

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木村博士は警官隊の隊長からライターを借りると、なんと、そのメモに火をつけて燃やしてしまう。どんな研究だったのかは、結局最後までわからずじまい。
「これは永久に悪い人たちに追われる秘密なんです。焼いた方がいいんですよ」
と博士。これにも口(くち)ポカーンである。
だったらどうしてそんなものをオルゴールに隠してルリ子に託したのか。

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ネットでこの作品の感想を検索していたら、以下のような文章があった。まったく同感である。

一番解せないのは、この世にない方が良いと判断した自らの研究を、わざわざオルゴールの中に入れ、娘に持って逃げさせると言う危険で愚かな行為をする木村博士。
それを必死に追い求めたルリ子ちゃんの目の前で、博士自ら書類を焼いてしまうと言う行為は、娘の気持ちを逆なでするだけだと思うのだが…
通常、この手の争奪戦で敵が破れ、秘密が守り抜かれた場合、ラストでその研究が実現し、みんなで「平和利用」などを誓って喜びあう…と言うのがパターンではないかと思うだけに、正に意表を突かれる展開と言うしかない。
http://www.ne.jp/asahi/gensou/kan/eigahyou69/midoriharukani.html

原作では、上の感想にあるように、作品の終盤で父の残した研究が実用化されることになり、ルリ子たちがそれを喜びあう描写もある(これについても後述する)。ただ「緑はるかに」の映画化は原作の連載と並行して進んでおり、映画の脚本が完成した時には原作はまだ完結しておらず、したがって原作のラストを映画のラストに反映することができなかったという事情もある。

以下は完全にエピローグ。

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プロローグでは、たった一人でベランダに佇んでいたルリ子だったが、今、ルリ子のそばには、三人組とマミ子の姿が。

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ルリ子の両親の計らいで、三人組はこの家から学校に通うことになり、母親と暮らし始めたマミ子も、今日は泊りがけで遊びに来たというわけ(ちなみに、自分の家にみなし児を引き取って一緒に暮らす、という設定は、「タイガーマスク」の若月ルリ子とまったく同じである。ルリ子が兄と運営する孤児院「ちびっこハウス」はもともとはルリ子の父母が私財を投じて始めたもので、ルリ子と兄はそこで孤児たちとともに育ったのだ)。

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ルリ子がオルゴールの蓋を開けると、例のメロディが流れてきて、またしてもストーリーと無関係な幻想の世界へと誘われる。しかも今度はルリ子単独ではなく、三人組、マミ子も一緒に…

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「5人の夢は大空へ飛びます」とナレーションは語るが、これは一体どう解釈したらいいのだろう。プロローグでは単なるルリ子の脳内妄想に思えたが、5人が共通の幻覚を見るということは、「星の世界」とやらはこの作品の中では実在するということなのか。

もしそうであるなら、岡田眞澄扮する月の王子様とやらが、人智を超えた力で、一度は死んだ父と母を生き返らせた、という展開にすればよかったのではないか。もともと現実離れしたストーリーだし、こういう異世界のセットまで組んだのだから、完全なファンタジー作品にした方が潔かったように思う。

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妙にガタイのいい人が踊っているなあ、と思っていたら、後の石原裕次郎夫人(北原三枝)であった。

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ルリ子を先頭に、以下、三人組とマミ子がカメラ目線で行進してくる。おそらくカーテンコール的な意味合いだろうが、映画でこういう趣向はいかがなものか。

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そんなこんなで、音楽だけが盛り上がる中、ヒロインみずからエンドマークを持って「おわり」。

レビューが思った以上に長くなってしまったので、映画と原作との違いなどについては次回に。

※動画の一部がYoutubeに上がっていたので、さりげなくリンクを張っておきます。

○プロローグ(星の世界)
○ダイジェスト&主題歌

※このページのキャプチャ画像は、日活株式会社が製作した映画「緑はるかに」(1955年)からの引用であり、すべての著作権は日活株式会社が保有しています。
posted by taku at 11:35| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする