2016年04月08日

祝!仮面ライダー生誕45周年(3)

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仮面ライダー生誕45周年を祝い、タクラマブログがお送りするお宝本シリーズ。第3回は、今はなき黒崎出版刊『仮面ライダー図鑑』(1972年1月20日発行)。「変身ブーム」華やかなりしころの一冊である。

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目次には一時期よく見た、怪人が電話をかけている特写。誰と何を話しているのか気になるところである。

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1月発行なので、レギュラー陣は40話以降のメンバーに。したがって山本リンダは掲載されず(藤兵衛の横で見切れているのが悲しい)。一方、この図鑑に登場するショッカー幹部はゾル大佐のみで死神博士のビジュアルはなし。

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カラーページは特写が中心で、怪人は登場時期別に分かれている。

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原作漫画の初回カラーページを転載。

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カメレオン男の背景イラストが岡本太郎っぽい。ロケで行く大阪万博を意識したか?

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ショッカー関連のページも多数。上記のように、子ども向けにしてはかなりエグい描写も(でも70年代は全体的にこんな感じでしたね)。

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カニバブラーとムカデラスが逆になっている。どちらも多足でパッと見は似てはいるが…

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ショッカーの火あぶりの刑。「最後まで抵抗したほりょも今では力を失い、グッタリ…」などと書かれているのだが、これは捕虜ではなく一文字隼人。当然このまま焼き殺されることはなく、戦いが始まる(32話より)。

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こちらは、初代幹部ゾル大佐の正体である狼男と、一文字ライダーとの格闘場面。このページを見て、「あれ、何かおかしい」と思われる方はいらっしゃらないだろうか。
白黒なので見過ごしてしまいがちだが、この写真の狼男は、明らかに全身青色の「実験用」であり、金色で隻眼の、あの狼男ではない。本編クライマックスにおいて、岩場で一文字ライダーと闘うのは、言うまでもなく金色の狼男である。にも関わらず、何故このようなスチールが掲載されているのか。なお、この図鑑の狼男のページにも、載っているのは実験用狼男のみであり、そこに「正体はゾル大佐の変身した姿」と説明が添えられている。これはどういうことなのだろう(下画像参照)。

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しかしながら、青色の狼男を「ゾル大佐の正体」と記しているのはこの図鑑だけではない。同じ時期の「テレビマガジン」でも、白煙の中から現れた狼男のカラー写真が、「ゾル大佐の正体」として堂々と紹介されているのだ。放送前のある時期に限っては、これこそが「公式」の設定だったのである。

何故このようなことになったのだろう。伝え聞くところでは、最初はゾル大佐の正体は、実験用と同じ着ぐるみの青色狼男であり、その着ぐるみで撮影も行われた。この図鑑や「テレビマガジン」に掲載されたのはその時の現場スチールというわけである(特写においてスモークなどの特殊効果をわざわざ使うとも考えにくい)。
しかし撮影の後で、「話の前半に登場した狼男と区別がつかない」という意見が出たため、急遽、金色の狼男を新しく作って再撮影に臨んだ、ということらしい。しかし、関連書籍などには、狼男の頭部が2体同時進行で製作されているエキスプロでのスチールが掲載されており、この件についてはいろいろと謎が残る。

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34怪人のすべて。「図鑑」というだけあって、1971年4〜12月に登場したすべての怪人を写真とイラストの双方で解説。ここからはモノクロページ。

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何と、蜂女がまさかのトップ。でも、写真は残念ながらCM撮影時の特写バージョン(ショッカーベルト着用。腰布は紛失?)。

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2番手は蜘蛛男。こちらも残念なショッカーベルト。イラストは石森プロが担当だが、

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たまに、石森章太郎オリジナルと思われるイラストが入る。

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まさに噴飯ものの「クロちゃんの探訪記」。
「どうせジャリ向けの本だから、この程度でいいだろう」という編集者のいい加減さがにじみ出ている。実際にロケ現場を「探訪」する気などはさらさらなかったのだろう。

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描かれたカメラの形がテレビ局のスタジオ仕様で、現実を思いきり無視している。「仮面ライダー」はフィルム制作のテレビ映画なのに…(この当時、生田スタジオを見学した経験があるだけに看過できない)

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1972年1月以降登場の新型怪人。ハエ男、カビビンガ、ナメクジラー、プラノドン。

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説明文を見ると、「死神博士」「デビル博士」と名称が混在している。この図鑑が入稿されたと思しき11月には、まだ設定がはっきりしていなかったのだろうか。

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巻末の見開き。山本リンダが写った唯一のページ(35話より)。

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最終ページ。カメストーンやトドギラーの姿もあるが、スノーマンやゴースターは掲載なし。実際の撮影順がよくわかる。

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右ページの撮影風景を拡大。これを見ると、実際にはどういうカメラで撮影しているか一目瞭然。「クロちゃんの探訪記」の編集者は、こういう写真もきちんと目を通していないのだろう。

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さて、これは以前から気になっていたことなのだが、この時代の特撮関連本をめくっていると、かなりの頻度で「裏焼き」写真に遭遇する。この図鑑もしかり。何しろ表紙写真(上画像)からして裏焼きである。

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正式な写真はこちら。

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また、先ほど紹介したこのページも、

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こちらが正しい向きである。

さて、どうしてこのような現象が起きてしまうのだろう。

この時代、というより、ほんの10年ちょっと前まで、印刷用のカラー写真は、ほとんどがリバーサル(ポジ)で撮られ、下画像のような状態で印刷に回されていた。

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だから、単純に現場のミスで左右を取り違えてしまったケースもあり得るが、多くの場合は恐らく、全体のバランスや顔の向きなどを考慮して、レイアウトの担当者が意図的に行っていたのだろう。実にふとどきな話である。表紙写真の場合、カニバブルラーの手のハサミが、本来とは逆になっているし、上の方のページにあったエイキングもムチのような手が反対である。

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当たり前のようにこう収まっているけれど、

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正解はこちら。

こうした、左右非対称の怪人の特徴を無視して画像をやたらと反転してしまうのは、オリジナルデザインの軽視に他ならないと思うのだが…(ショッカー怪人は基本的に左右対称デザインだから裏焼きが判明しにくい。左右非対称が売りのゲルショッカー怪人や、「デンジマン」のベーダー怪物なら、こうした裏焼きはすぐ発覚するだろう)。

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前々回紹介したこの写真も、戦闘員のホルスターが左右逆なことから裏焼きだったことが判明。正しくは下画像。

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ただ、こうした裏焼きは、怪獣や怪人に限ったことではなく、古くはビートルズやボブ・ディランのレコードジャケットなどでも行われていたそうだから、ある時期までは、印刷媒体の世界では暗黙の了解だったのかも知れない。

いやあ、こういうブログは疲れる! この間の「新案カード」の時も、撮影やスキャン、フォトショップでの画像処理、そして文章書きと2日以上かかっているし、今回も、ページのセレクトを含めると4日がかりだ。
やるべき事はたくさんあるのに、腰も肩甲骨もバリバリに痛いのに、その上、一文の得にもならないのに、何ていう馬鹿なことを!!!
と、自分で自分の行動が無性に腹立たしいのだが、一度作業を始めてしまうともう止められないのである。

3月15日放送の「NEWS23」のエンディングで、膳場貴子氏がドラクエ30周年について言及した際、
「子どものころに好きになったものというのは、大人になってもなかなか卒業できないもので、(今でも)どっぷりとはまっているんですが…」
と述べておられたが、まったく同じ心境である。人間は、子ども時代に心を奪われたものから、永遠に逃れられない定めなのだろう。

【次回予告】

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我らが仮面ライダー生誕45周年を祝う、タクラマブログが送った次なるお宝本は、今回に続き、黒崎出版刊『仮面ライダー画報』。ダブルライダーの登場、そして本郷ライダーの完全復帰と、放送開始1年にして絶頂期を迎えた「仮面ライダー」の魅力をあまさず紹介。地獄大使、死神博士の2大幹部、人気のザンジオーをはじめとする50怪人も全員集合する次回『仮面ライダー画報』にURLを合わせるのだ!(次回予告のナレーション風味で読んでね!)
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2016年04月03日

祝!仮面ライダー生誕45周年(2)

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「仮面ライダー」誕生45年を祝い、私の手元にある放送当時の関連書籍をご紹介していくシリーズの第2弾。本日は放送開始の4月3日当日ということもありますので、もっともレア度の高い逸品をお目にかけましょう。

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『仮面ライダー図鑑 たのしい幼稚園新案カード』(講談社)

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「図鑑」と題されてはいますが、「新案カード」と添え書きがあるように、中身は全32枚のカードです(寸法は125×180mm)。

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発行日は1971年8月28日。前回紹介した『仮面ライダー怪人大画報』よりも2ヵ月弱あとで、一文字ライダーの変身ポーズも定着し、人気に火が点きつつあった時期のものといえます。

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前回も書いたように、「仮面ライダー」放送開始当時、私は小学2年生でした。小学2年生といえば、もうそれなりの自意識を備えています。実年齢よりも上に見られることを望むお年頃です。そんな8歳の少年にとって、「たのしい幼稚園」などと印刷された図鑑を本屋のカウンターに持っていくのは、かなりの屈辱感をともなう行為でしたが、それでも購入したのは、このカードのイラストに、不思議な魅力を感じたからです。60年代に一世を風靡した梶田達二や前村教綱といった怪獣絵師の写実的な表現とは違う、もう少し「アート(作品)」に近い感じといえばいいのでしょうか。そして、どうやらそれは思い込みではなかったようです(それについては後述します)。

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どれもかっこいいです。かつての怪獣絵師たちの絵は、ほとんどが写真を元にしていたため、ポーズが限定されていましたが、こちらはもっと自由度が高いように思います。

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背景の色や構図も、怪人のことをよくわかっている人が描いたように見受けられます。

本当はすべてをこのサイズでお見せしたいのですが、そうわけにもいかないので、以下はサムネイルで。

さて、このカード図鑑には3通りの怪人が収載されています。

1)テレビに登場した怪人

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カード32枚のうち、24枚までがこれに該当します。ですが、ピラザウルス以降は名前が微妙に違っているものが多くなり…

ヒトデライラ → ヒトデンジャー
カニバブル → カニバブラー
ピラニドン → アマゾニア
ムササビおとこ → ムササビードル
アリジゴク → 地獄サンダー
どくクラゲおとこ → クラゲダール
イソギンチャーゲル → イソギンチャック

という具合(左がカード、右が正式の名称)。これは、台本での呼称を使ったためだと思われます。このカードが実際に店頭に並んだのは8月中旬ごろだと思われますが、入稿はそのひと月くらい前でしょうから、ヒトデンジャーやカニバブラーの回はまだ完成していなかったのでしょう。そして、前回も書いたとおり、やはり制作が早かったキノコモルグは正式な名前になっています。もっとも、あきらかに制作前だったと思われるアルマジロングも、デザイン、名称ともに正確なものになっていますが…。なお、最後のイソギンチャーゲルについては、石森章太郎の原作漫画「海魔の里」に出てきたイソギンチャク怪人のアレンジのようで、実際のイソギンチャックとはかなり容姿が異なりますが、一応「原型」であると判断しました。

2)テレビに登場した怪人と同じモチーフだが、明らかに別デザインなもの

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カミキリむし → カミキリキッド
サメおとこ → ギリザメス
どくバラおんな → バラランガ

という解釈も成り立つと思いますが、どれもフォルムが違いすぎます。実際の怪人とオリジナルの中間という位置づけでしょうか。

3)テレビに登場しない怪人(完全オリジナル)

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マクロファンデス、ヒドラーゲン、タコおとこ、ワニおとこの4体。マクロファンデスはユニコルノスの原型だろうと長い間思っていたのですが、実は同じ「たのしい幼稚園新案カード」の『図鑑 ぼくらの仮面ライダー』に「いっかくじゅうおとこ」という怪人が掲載されているのを最近知り、どうみてもこっちが原型だろう、と判断した次第です。これらオリジナルデザインの怪人たちも、なかなか魅力的です。

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さて、これらの独自性あふれるイラストは、一体誰の筆によるものでしょうか。奥付けを見ても画家の名前はありません。しかし、私はこれを描いたのは、実際に「仮面ライダー」の美術を担当していた高橋章氏ではないかと推測しています。以下、そう考える理由をいくつか提示していきましょう。

まず、こちらをご覧下さい。

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上の2点は、第11話「吸血怪人ゲバコンドル」の冒頭シーンで、ショッカー基地内の壁面に飾られていた怪人の肖像(遺影?)です。怪人のデザインや造形、基地壁面の装飾画など、美術関連物の制作は、当時、高橋章氏が一手に引き受けていたということですから、これらの肖像も、おそらく高橋氏の手になるものでしょう。この劇中画と今回のカード、色使いといいタッチといい、よく似ていませんか?(特にさそり男の顔に注目して見て下さい)

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まだあります。

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こちらは、第23話「空飛ぶ怪人ムササビードル」の基地内のシーンです。手前に立つムササビードルは、ゆるキャラを思わせる愛嬌のある顔立ちですが、その背後の壁画のムササビは目が釣り上がり、異様な迫力です。ムササビおとこの表情にも同じような鋭さを感じませんか?

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さらにもうひとつ。下の左は雑誌に掲載されていたクラゲダールのデザイン画ですが、右のどくクラゲおとこのイラストにそっくりだと思いませんか?

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もし、私の推測が正しければ、この『仮面ライダー図鑑』は、作品本編の美術や造形を担当していたデザイナー本人によるイラスト集ということになり、例えて言えば、「ウルトラマン」の美術デザイナーだった成田亨氏の描いたウルトラマンや怪獣のイラストと同等の価値を持つものということになります。もしそうなら、ちょっとすごいことだと思うのですが…。

――などと書き綴っているうちに、すっかり日も暮れてしまいました。45年前の放送開始時間の19時半まであとわずかです。久しぶりに第1話「怪奇蜘蛛男」を見てみるとしましょうか(時間に合わせて視聴する愛好家の方がかなりいるんだろうなあ…)。

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posted by taku at 19:29| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月02日

祝!仮面ライダー生誕45周年(1)

今年(2016年)が鎌倉アカデミアの創立70周年に当たる特別な年であることは、前回のブログで書きましたが、実はそれ以外にも今年は、とりわけ特撮ファンにとって見過ごせない記念の年であります。何しろウルトラマン誕生50周年、仮面ライダー誕生45周年ですから。

というわけで、まずはこの4月3日で満45年を迎える「仮面ライダー」の誕生を祝い、私の手元にある放送当時の関連書籍を、数回にわたってご紹介していきたいと思います(「ウルトラマン」については、満50年を迎える今年の7月にでも)。

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第1回めは、1971年7月7日発行の『仮面ライダー怪人大画報』(朝日ソノラマ)。放送開始の3ヵ月後、つまり、一文字ライダーがお目見えした直後に世に出たもので、数ある「ライダー」関連書籍の中でも、かなり早い時期のものといえます。表紙絵は怪獣絵師として名高い梶田達二。スチールが混在しているのが斬新です。

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「仮面ライダー」放送開始当時、私は小学2年生。完全にリアルタイム世代です。当時の掲載誌であった『ぼくらマガジン』は毎週購読していましたが、「ライダー」単独の書籍としては、これが一番最初に手にしたものでした(左ページ下のイラストは『ぼくらマガジン』連載開始号の表紙で使われたもの)。

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1〜3話に登場の蜘蛛男、蝙蝠男、さそり男。この三体こそ、ショッカー改造人間の原点。今見てもそのフォルムの美しさにうっとりします。この三体は、美術の三上陸男氏みずからが造形を手掛け、手間と時間がかかる型抜きで作られたとのこと(ただ、このページの蜘蛛男と蝙蝠男は本編撮影時の写真ではなく後日撮られた特写スチールのため、蜘蛛男は本来していないショッカーベルトを着用、蝙蝠男の翼も正式なものとは形状が異なるなど残念な点も)。

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4話のサラセニアン以降は、三上氏が多忙となったため、高橋章氏がデザインと造形を引き継いだとのことですが、三上氏のデザインコンセプトが見事に継承、発展されていったことがわかります。

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怪人のコンセプトをあえて崩し、怪獣を意識したトカゲロンと、怪人コンセプトに忠実なキノコモルグ。ちなみにこの図鑑に載っている2号ライダー編の怪人はこのキノコモルグとサボテグロン(14、15話に登場)だけで、こんなところからも、キノコモルグのエピソード(24、25話)が、かなり早く(実際にはピラザウルス編の前に)撮影されていたことがわかります。キノコモルグは、この図鑑を購入した当時、唯一のテレビ未登場怪人でした。

ちなみにそのころの大嶋家は、毎年夏休み期間の7月下旬から8月下旬まで、北信州の黒姫山荘で暮らすのが慣わしで、そのため、その間は「仮面ライダー」を視聴することができませんでした(当時の黒姫は、NHK以外は信越放送しか映らず、その信越放送は「ライダー」のネット局ではなかったため)。夏休みが終わったあと、学校の友だちに、「キノコモルグの話はどうだった?」と聞いてみたところ、「まだやってないよ」と言われ、「何ヵ月も前に図鑑に出ていたのに、どうしてだろう?」と首を傾げたのを覚えています(その後関連本などで、「あまり前後編エピソードが連続するのはよくない」という局の判断により、放送順が入れ替えられたというのを知りました)。

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縦見開きの「仮面ライダーのすべて」。このフォルムは間違いなく藤岡弘、氏本人ですね。現在、新作映画も絶賛公開中のようですが、この当時はまさかご本人も、45年も後に同じ役を演じるとは、想像だにしなかったでしょう。

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見開きの反対側は石森章太郎サイン入りイラスト(下の怪人は石森プロによるものか)。これと同型のポスターも何かの景品でもらった記憶があります。

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いまだに根強い人気の蜂女。イラストとの並置もいい感じですね。

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こちらは蝙蝠男とライダーの戦いを、やはり写真とイラストの並置で。どうして蝙蝠男の翼は簡略型ばっかりなのでしょう。

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ちなみにこれが蝙蝠男の正式な翼。

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奥付けページ。右ページイラストのマスクの青色は、当時の私が色鉛筆で塗りました。

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何と、貴重なメイキング写真が。かなり小型の16mmフィルムカメラを使っていることがわかります。オールアフレコなので、録音部さんもいません。

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見返し写真。ゲバコンドルが、覆面戦闘員(キノコモルグバージョン)に命令している特写スチール。

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なお、朝日ソノラマだけに、この図鑑にはソノシートが付いていましたが、残念ながら現在手元にはありません。ですが、youtubeにアップされた方がいらっしゃいましたので、参考までに貼っておきます。


https://www.youtube.com/watch?v=bWqUjds8Mno

キャストはソノシート用の完全オリジナルで、また「トカゲロンと怪人大軍団」をベースにしたストーリーにも関わらず、主人公は本郷猛ではなく一文字隼人になっています。2号ライダー編に入ってからの刊行物であるため、やむを得ぬ変更なのでしょうが、その一方「ヤモゲラス」が台本上の名称である「ヤモラー」になっていたりと、いささか迷走しています。

いかがでしたでしょうか。写真とイラストを効果的に併用していて、なかなか楽しめる図鑑になっていると、今回改めて見て思いました。
何か、こういう文章を書いていると、知らないうちに心があの時代に戻り、現実の感覚を喪失してしまうのですが、ふと冷静になった瞬間、「こんなブログは、一般の、あまり特撮には興味のない人には、まったく面白くないのではないか」と、言い知れぬ不安に駆られたりします。まあ、アニバーサリーということでどうかご容赦を。この企画、多分あと2回続きます。
posted by taku at 21:23| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月29日

時を越える大川めぐみ

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先日、渡辺宙明卆寿記念コンサートvol.2で「ゴーグルファイブ組曲」を聴いたら、何となく懐かしくなり、久しぶりに「ゴーグルファイブ」の動画をいくつか視聴してみた。そして再認識した事実がある。すなわち「ゴーグルピンクを演じた大川めぐみこそ、歴代戦隊中、最も普遍的な美しさを備えたヒロインであった」ということ。

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久しぶりで、20歳のころに買った特撮系の雑誌を引っ張り出してしまった。

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『宇宙船別冊 スーパーギャルズ・コレクション』(1983年4月30日発行・朝日ソノラマ)

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『宇宙船別冊 スーパーギャルズ・コレクション'84 夢・翔・女』(1984年6月15日発行・朝日ソノラマ)

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『特撮ヒロイン ベストセレクション』(1985年2月25日発行・徳間書店)

美しさというのは主観的なものであり、またかなり流行に左右されるところもあるのだが、大川めぐみの整った容姿は、30年近い歳月を軽々と越えてしまう。動かぬ証拠がこれだ。

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現在も販売されている女性用カミソリ、フェザー「フラミンゴシリーズ」(カタログはこちら)。
パッケージを飾るのは紛れもない、あの「桃園ミキ」こと大川めぐみ。いつデザインチェンジになってもおかしくないので、この機会に気合いを入れて楽天で買い揃えてみた(さすがに店頭で買うのは恥ずかしいし、実際、ドラッグストアではほとんど見つけることができなかった)。

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私が初めてこの商品の存在に気付いたのは、「ゴーグルファイブ」終了から数年が過ぎた、1980年代後半だったと記憶している。スーパーの日用品売り場でたまたま目に止まり、
「お、ゴーグルピンクの人じゃないか。こんな仕事もしているのか」
と、少し意外に思ったのを覚えている。「ゴーグルファイブ」後の彼女は「カンフーチェイン」や「思春期の妻たち」になど出ており(どっちもちらっとだけ見た)、その後も女優業を続けているとばかり思っていたから、こうした仕事もこなしていたことに、少々場違いな印象を受けたのである(元々モデル出身だったことは後から知った)。

ネットの情報などでは、「フラミンゴシリーズ」のモデルは90年代の仕事とされているが、もう少し早い時期に撮影されたものではないだろうか。下に貼った1992年の「ウィスパー」CMの動画と比べても、パッケージの方がかなり幼い印象を受ける。

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大川めぐみの「その後」については、いろいろな情報がネットで飛び交っているようだが、どこまでが事実かわからないので、ここではこれ以上掘り下げることはしない。ただ、

小川一枝(本名)→大川一枝→大川めぐみ→小川璃瑠子→眞間一枝

と、頻繁に変わっていった芸名が、この人の平坦ではなかったであろう芸能人生を物語っているようだ(現在は平穏に暮らされているらしい)。

それにしても、今から30年近く前、この国がバブルに浮かれていたころに撮影されたであろうこのパッケージ写真が、平成28年の現在においても、まったく古臭さを感じさせず、それどころか、今なお瑞々しい美しさを纏(まと)っていることには驚きを禁じ得ない。

これほどの普遍的な美を備えた大川めぐみがどうしてブレイクしなかったかは大きな謎だが、彼女と同時代の「角川三人娘」にしても、一番正統派美少女と評判の高かったお嬢さんが、一番大衆のハートをつかむことができなかった。普遍的な美しさというのは、移り変わりの激しいポピュリズムとは本質的に相容れないものなのかも知れない。

【大川めぐみ動画集】(リンク切れの際はご容赦を)


エリエールCM


ウィスパーCM


花咲くゴーグルピンク(大川めぐみVersion)
posted by taku at 19:36| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月06日

渡辺宙明 卆寿記念コンサートVol.2

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昨日(3/5)、「渡辺宙明 卆寿記念コンサートVol.2」に行ってまいりました。会場は前回と同じ、渋谷区文化総合センター大和田4F さくらホール。

前回、かなりの燃え尽き感があったので、本当はVol.2以降はパスするつもりだったのですが、キカイダー、イナズマンのみならず、デンジマンの組曲まで演奏されるということが昨年12月の時点で明らかになったため、前回のコンサートについてのブログで、

「デンジ姫のテーマ」は屈指の名曲なので、いつかこの曲を生演奏で堪能してみたい。そのためにも、ぜひ「電子戦隊デンジマン」組曲を!

などと声高にリクエストした私としては、行かざるを得なくなったというようなわけです。しかし、果たしてお目当ての「デンジ姫のテーマ」は演奏されるのか?? 期待半分、不安半分で会場に赴いたのでしたが…。

結果から書きますと、大変残念ながら、あの哀感に満ちた「デンジ姫のテーマ」のメロディーが会場に流れることはありませんでした。パンフレットの解説によると、「劇場版に合わせて制作されたサントラアルバム『テーマ音楽集』に収録された音楽は割愛されている。(中略)組曲は純粋にテレビ用BGMからのみ選曲構成した」とのことで、そういうコンセプトでは、劇場版用BGMである「デンジ姫のテーマ」が選ばれるはずもありません。とは言いつつも、何とも残念でしょうがなく、コンサートのしょっぱなでそういう厳然とした事実を突きつけられてしまったためか、あとは、何となく気持ちの高揚が前回よりも控えめなまま、ラストまで突き進んでしまった感じでした。
また、前回が50人近いフルオーケストラだったのに対し、今回はサブタイトルにも「ブラスサウンドの魅力」とあるように、全体で22人のブラスオーケストラで、弦楽器はゼロ。かなりこじんまりした編成で、たしかに当時のサウンドトラックの再現ということならこれで正解なのでしょうが、前回のフルオケと比較してみると、いささか音の厚みと広がりに乏しいように感じられたのでした(これは完全に個人的な見解です)。

今回の演奏曲目は次のとおり。

宇宙刑事ギャバンより主題歌(1982)新アレンジ版

前回の「ギャバン組曲」では、主題歌サビ部分のメロディーが演奏されなかったため、これは嬉しい趣向でした。

デンジマン組曲(1980)

演奏後、成田賢氏による主題歌の歌唱あり。

キカイダー組曲(1972)
イナズマン組曲(1973)

休憩(15分)

ゴーグルファイブ組曲(1982)
ゲッターロボ號組曲(1991)

さて、演奏終了後は前回同様、「みんなで歌おう」コーナーもあったのですが、ここで何とも豪華なゲストシンガーが次々登場し、そのたび会場からは割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こりました。以下、曲名とゲストシンガーです。

「ああ電子戦隊デンジマン」(成田賢)
「大戦隊ゴーグルファイブ」(MoJo)
「宇宙刑事ギャバン」(串田アキラ)
「ゲッターロボ號」(水木一郎)
「ハカイダーの歌」(水木一郎)
「ゴーゴーキカイダー」

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渡辺宙明先生(中央)を囲むゲストの面々

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左からムトーユージ、伴大介、成田賢、渡辺宙明、福田滋(指揮)、水木一郎、串田アキラ、MoJoの各氏。前回のコンサートの時は、全員仕事で大阪にいて参加できなかったとのことだが、今回は勢ぞろい!

世にも豪華な歌声喫茶のようなひとときで、まあ、みなさんよく声を張り上げて歌うこと。私の右隣にいた、ガタイのいいおっさんも、つんざくような大声で、「デンジマン」や「ゴーグルファイブ」のコーラス部分(漕げ〜漕げ〜、とか、獅子たちよー獅子たちよ、とか)まで歌っていました。おかげで、肝心のゲストシンガーの歌がほとんど聞こえないという、よく考えるとかなりもったいない事態が起きていたのですが、全員が声をそろえて同じ歌を歌う一体感、充実感が勝っていたのでしょう。私も、この豪華な歌唱の場で声を合わせられただけで、このコンサートに参加した価値は充分あったと思います。また、前回よりもステージ寄りの席を確保できたため、撮影タイムにはかなり近い場所から宙明先生のご尊顔をカメラに収めることができました(冒頭の写真などはかなり気に入っています)。

それにしても渡辺宙明先生は相変わらずお元気で素晴しい。肌の色艶もおよろしいし、前回のコンサートの時より若くなられたようにさえ見受けられました。プレトークの最後では、ムトーユージ氏の提案で、「ギルの笛の音でジロー(伴大介氏)と会場中が苦しむ→キカイダーに変身して決め技」という即興パフォーマンスをやったのですが、その時には宙明先生も、ちゃんと頭を抱えて苦しげな表情をなさるなど、茶目っ気を披露されていましたし(この時の様子だけ見ると、本気で危ない状態の人という感じでしたが…)。
これからもますますご健康で、素敵なスコアを書き続けていただきたいと願っています。

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永遠の歌姫からもお花が届いていました
posted by taku at 20:40| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月31日

渡辺宙明 卆寿記念コンサート

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8月とは思えない、まるで梅雨のように陰鬱な天気が続いている。もう1週間近く、お日様が顔を出していないではないか。というわけで、「まぶしい太陽を隠す黒い雲を吹き払う」(「宇宙刑事シャイダー」主題歌風)意気込みで、昨日(30日)、「渡辺宙明 卆寿記念コンサート」を聴きに行ってきた。場所は渋谷区文化総合センター大和田4Fさくらホール。セルリアンタワーのすぐ裏にある渋谷区の施設である。

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「卆寿」というのは字の示すとおり「九十」、すなわち今年で渡辺宙明先生はめでたく90歳を迎えられ、それを記念して初の大々的なソロコンサートが開かれたというわけだ。
私たち1960年代生まれの特撮・アニメファンにとって、その名前は「マジンガーZ」「人造人間キカイダー」「イナズマン」や戦隊シリーズなどの作曲家として小学生のころから認知され、そしてそのメロディは、40数年が経った今も深く心に刻まれている。

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ロビーにはおなじみの歌手の方々からのお花も

会場に着いたのは開演の10分前。すでにプレトークが始まっていた。15分前からプレトークが行われることは知っていたが、多分コンサート関係者によるトークだろうと思い、あまり重要視していなかったのだ。ところが予想に反し、舞台上にはなんと、御大みずからが当たり前のように立って、司会者の質問に温顔で答えられているではないか! うわ! こんなことなら15分前に来ておくべきだった、と残念に思ううち、プレトークは終了。
「これからもまだまだやっていくつもりです。でも、今日はひとつのしめくくりとしてね」
の言葉を残し、宙明先生は舞台から降り、一階中央の座席に移動。客席でファンとともにこのコンサートを鑑賞するとのことだ。

14時、演奏開始。以下は、完全に個人的な印象&感想である。

1)「マジンガーZ」組曲

やっぱ宙明先生といえばマジンガーでしょう、と言う感じのオープニングナンバー。あの聴き慣れたイントロが40名を超すフルオケで奏でられると心が震える(放送開始当時、私は小学校3年生)。「機械獣の進撃」なども原曲に近いアレンジとのことで、機械獣たちがビル街を焼き尽くしながら跋扈する場面が鮮明に脳裏に蘇った。後半には主題歌候補だった「Zのテーマ」も。8/25のニコニコ生放送で、先生みずからがこの曲のエピソードを語り、なおかつピアノでメロディを爪弾きながら、作曲技法について解説していただけに感激もひとしおである。

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「マイナーペンタトニック」という技法について解説する宙明先生(ニコニコ動画より)

2)「グレートマジンガー」組曲

「マジンガーZ」から「グレートマジンガー」という流れは非常にわかりやすいのだが、残念! 自分はどういうわけか放送当時、「マジンガーZ」の後半(あしゅら男爵が死んでピグマン子爵が出てきたあたり)で視聴をやめ、そのあとの「グレート」は1回も見ていないので、この曲についてはまったく知らないのだ。どうして視聴をやめたのかは謎だが、このころは小学5年生になっていたので、そろそろロボットアニメは卒業、という感じだったのかも知れない。というわけで、原曲についての知識がゼロに等しいため、これについてはコメントができない。演奏中は、つれづれなるがままに、パーカッション奏者の女性が、次に演奏する楽器が置いてある場所にすーっと移動する姿をながめていたりした。

3)「大鉄人17」組曲

演奏前に、奏者の半数以上が退場し、ステージには打楽器とブラスセクションのみが残留。パンフレットによると、原曲を録音した当時の編成を再現し、これだけの少人数(16人)でも重厚なサウンドが表現できる(これぞ宙明先生の力技!)ということを示す狙いがあったそうだ。こういうこだわりは素晴しいと思う。
「グレートマジンガー」と同様、「大鉄人17」も、本放送当時はまったく見ていなかったのだが、最近になってYouTubeの東映特撮チャンネルで、初めてほぼ全話を視聴した。それだけに記憶も鮮明で、曲を聴けばいろいろな場面が頭をよぎるのでは、と期待したが、聴き慣れた主題歌もエンディングも一向に出てこず、なぜか危機感をあおるような曲(敵ロボットが現れて暴れる、的な)が続く。これでは頭に浮かぶのは、ブレインロボットの暴れ回る場面ばかりである。「17」はドラマ部分も充実していたし、それに照応するメロディアスなナンバーも多々あったはずなのに…と少々物足りなく思う。やっと最終パートで主題歌とエンディングを聞くことができたのだが、構成としては、このあとの「太陽戦隊サンバルカン」や「スパイダーマン」のように、なじみ深い主題歌メロディを早いうちに一回提示する方が、聴き手は安心するのではないかと感じた。

※なお、パンフレットによれば、この「大鉄人17」については、「危機」をイメージする曲が、その後多くの作品で流用されたため、「宙明サウンドのトータルイメージとして聴いていただけるようセレクトした」との説明があった。なるほど、そういうショーケース的な意図があったのか、とあとから納得した次第である。


4)「太陽戦隊サンバルカン」組曲

「大鉄人17」組曲とは反対の大変明快な(ある意味王道的)構成で、文句なしに楽しめた。圧倒的な存在感を示す主題歌メロディから始まり、サブタイトル曲をはさみ、次がなんと、あの「巨大モンガ〜」のテーマである。思わず依田英助の声が脳内再生されたのは言うまでもない。

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わかる人にはわかる、あの場面のBGMです

まさかこのテーマをフルオケで聴けるとは、と、なぜか非常に感慨深いものがあった。次のパートでのジャガーバルカン出撃のテーマもスケールの大きい名曲で、巨大感あふれるジャガーバルカンの口が開いて、ブルバルカンとコスモバルカンが発進していく一連のシーンがはっきり頭に蘇った。やはりリアルタイムで見ていた作品は思い入れが違う。「太陽戦隊サンバルカン」の放送当時私は高校3年生だったが、なぜかこのころからまた特撮に回帰していたのだ(「サンバルカン」に関しては、岸田森が長官役でレギュラー出演していたというのも大きい)。

-----休憩(20分)-----

5)「スパイダーマン」組曲

リアルタイムでは見ていなかったが、その後ビデオやマーベルのサイトなどいろいろなところで断片的に見て、その全容はほぼ把握しているこの作品。当時は特撮番組冬の時代で、放送開始当時、東映制作の特撮ドラマはこれ一本。しかもキー局が東京12チャンネル(現・テレビ東京)という厳しい状況だったが、曲はそんなことを微塵も感じさせない賑やかなもので、解説によると、レコーディングにはかなり多彩なパーカッションが使用されたという。今回の演奏でも、その片鱗を見ることができた。
主題歌メロディから始まってスパイダーマン行動のテーマ、そしてマリンバソロによる叙情的なメロディ(「ひとみのテーマ」というらしい)。この時、奏者が手に2本ずつのマレット(ばち)を持って、ポリフォニックな演奏をしていたのが印象的だった。そのあと淋しげなバラード曲をはさんで、一気にレオパルドンのテーマへとなだれ込む。このコントラストには、心と体の双方が震えた。ソードビッカーによる「瞬殺」で知られるレオパルドンは、巨大ロボット最強と噂されるが、このテーマ曲も、数ある巨大ロボのテーマの中でも最強の一曲ではないかと思う。

ここで特別ゲストとして、ご子息でやはり作曲家の渡辺俊幸氏が登壇。息子から父へのプレゼントとしてスペシャルアレンジの「ハッピーバースデイ」を指揮(この時は会場の観客も合唱)。またご自身の音楽遍歴にも触れ、
「もともとは作曲家ではなくドラマーをめざしていて、グループ『赤い鳥』にもドラマーとして参加しました」
「23歳の時『未知との遭遇』を見て作曲家になろうと決意した時は、すでに結婚しており父とは同居はしていなかったので、直接の影響は受けていないはずですが、やはり蛙の子は蛙だったのでしょうか」
などと語っていた。
また宙明先生の楽曲に関しては、
「父の音楽は、たとえBGM(劇伴)であっても非常にメロディアスですね。さすが『宙明節』と言われるだけのことはあるなと。どんな曲であっても、少しでもメロディアスにしよう、印象深い曲にしようと心がけているのを感じます」
と語り、最後に、
「父はみなさんの思いに支えられて、90歳の今でも現役の作曲家として活動しています。みなさんが応援を続けてくれることによって、父はこれからも元気で過ごせると思います。どうぞよろしくお願いします」
と締めくくった。

6)「宇宙刑事ギャバン」組曲

今回最後のナンバーにして最長の組曲ということで、大変力がこもっており、いろいろと趣向も凝らされていたが、個人的に残念に思ったのは、主題歌メロディがフルで演奏されなかったこと。主題歌Aメロのアレンジ曲は流れたものの、「若さ若さって何だ〜宇宙刑事ギャバン」に至る、一番盛り上がるサビ部分は、どうしたわけか一度も登場しなかった。今回のコンサートで一番の心残りはこれかも知れない。とはいえ、それ以外の名曲(星空のメッセージ、電子星獣ドル、レーザーブレード等)が次々に演奏され、数々の名場面が眼前に再現されていく感じは心地よかった。
ちなみに「宇宙刑事ギャバン」は「太陽戦隊サンバルカン」の翌年(1982年)の作品で、私は1年目の浪人生活を送っていたが、この作品はほぼ毎週見ていたので、かなり鮮明にいろいろなことを覚えている。ミミー役の叶和貴子が、スケジュールの都合なのか予算の都合なのか途中から出なくなったこと(ラスト間際に復帰したが)、しばらく東映特撮から遠ざかっていた潮健児がこの作品で復帰し、メフィスト風の衣装で登場したこと(14話)、ハンターキラーの退場の仕方がかなり悲惨だったこと(30話)、バッファローダブラーはどう見てもクワガタだったこと(42話)、千葉真一ゲスト出演の43話「父よ」は本格的な親子再会ドラマで宙明節炸裂、Bパートに通常のバトルシーンがなかったこと、等々、書き始めるときりがない。また、この時代の東映特撮では、ミニチュアワークは最初にまとめて撮って、あとはそれを使い回すのが主流だったが、「宇宙刑事ギャバン」では、最終エピソードに近い41話で電子星獣ドルの宇宙飛行シーンが一部新撮だったことも印象的だった。

という感じでプログラム上はこれで終了だが、「卆寿記念コンサート」でもあるし、当然これだけでは終わらない。まずはアンコール第1弾として、レーザーブレードのテーマ3連発(マニアには説明の必要もないだろうが、「ギャバン」「シャリバン」「シャイダー」のレーザーブレードのテーマをメドレーで演奏)。

さらに第2弾として、渡辺宙明先生みずからの指揮で、オーケストラをバックに、「グレートマジンガー」「マジンガーZ」の観客による大合唱! いやあ、これはまさかのサプライズ、ファンには嬉しすぎる趣向である。まさか宙明先生がタクトを振り、それに合わせて往年のテーマ曲を歌う栄誉に預かれるとは…。しかし、先ほども書いたように、私は「グレートマジンガー」はよく知らないので、声の限りに歌い上げたのは「マジンガーZ」だけだったのだが。それでも、なぜか歌っている最中涙があふれてあふれて、宙明先生のお姿もくもって見えなくなることがしばしばだった。会場をあらためて見渡せば、かなり頭の白くなった中高年の姿が目立つ。みんな、この合唱で声を合わせながら、脳裏には過ぎ去った少年少女の日々が去来していたのではないだろうか。

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演奏終了後の撮影タイム。携帯カメラなので悲惨な画像だが、指揮台のすぐ左が渡辺宙明先生

こうして約2時間のコンサートは終演。入場時には会場に届いていなかった全52ページの豪華パンフレットを入り口のところで受け取ってホールを出る。外は相変わらずの空模様だったが、心の中は、あたかも「胸のエンジンに火がついた」状態(「ギャバン」主題歌風)で、霧雨も大して気にならず、足取りも軽やかに駅までの道を歩き出したのであった。

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ちなみに、この「卆寿記念シリーズ」は今後も続く模様で、来年の3月、5月に行われるコンサートでは、「キカイダー」「イナズマン」「シャリバン」「ジバン」などの組曲が予定されているようだ(パンフレット巻末に情報が記載)。それらももちろん悪くはないが、私としてはぜひ一度、「電子戦隊デンジマン」組曲を聴いてみたいと強く思う。
「デンジマン」は主題歌、挿入歌、BGMとすべてが名曲ぞろいなので選曲も困難を極めると予想されるが、絶対にはずしてほしくないのが「デンジ姫のテーマ」である。あの哀感に満ちたピアノのイントロを聴くだけで反射的に涙腺がゆるみ、自分で自分がどうにもならなくなるくらいだ。この曲は「デンジマン」劇場版で初披露ののち、ドラマ本編「デンジ姫の宇宙曲」や「二人いたデンジ姫」、そして翌年の「太陽戦隊サンバルカン」の「エスパー」「日見子よ」でも効果的に使われていた。故郷を失ったデンジ星人の悲しみと、デンジ姫の凛とした美しさの双方が、シンプルなメロディで見事に表現された名曲で、これぞ「宙明節」と呼ぶにふさわしい(と勝手に思っている)。どうにかして、いつかこの曲を生演奏で堪能してみたい。そのためにも、ぜひ「電子戦隊デンジマン」組曲を!

※当方のブログでは、著名人は基本的に敬称を省略することにしているのだが、今回は、渡辺宙明氏への賛辞と敬慕の情が抑えがたく、多くのファンの方に倣って「先生」の呼称を使用した。
渡辺宙明先生、90歳のお誕生日おめでとうございます。これまで、素晴しい曲をたくさん世に送り出して下さってありがとうございました。今後のご健康とさらなるご活躍をお祈りしています!
posted by taku at 19:11| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月07日

「ウルトラ兄弟」誕生の夏(2)

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お待たせしました。
内山まもる「決戦★ウルトラ兄弟対11大怪獣」のご紹介です。

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真夏の関東地方に突然大雪が降り、街は真冬のような光景に(涼しそうで少々うらやましい気も…)。

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それは、ペギラやガンダーといった冷凍怪獣の仕業で(なぜかチャンドラーも混じっているが)、郷は帰マンに変身して怪獣を退治する。

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そのおかげで東京にはまた暑さが戻るが、休暇をもらった郷が、アキや次郎と待ち合わせた京王プラザホテルに向かう途中、ビルが突然揺れ出し、その下からゴモラ、エレキング、ゴルバゴスが出現。

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郷はまたも帰マンに変身し、ウルトラダブルという内山漫画オリジナルの特殊能力で2倍のサイズになりビルを支えるが(見開きをタテに使っているところが斬新!)、変身時間は半分になるという欠点があるため、早くもカラータイマーが鳴り出す。

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そこに、突然ウルトラセブンが現れ、3体の怪獣をあっさり倒す。セブンは帰マンに、「おまえにもっと強力なエネルギーをやろう」と告げ、2人はどこかへテレポートする。

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しかし、そのセブンはにせウルトラセブンだった。郷はこの事件のラスボス・チブル星人の円盤に拉致されてしまう。

チブル星人の命令で、怪獣軍団(ゼットン、ジェロニモン、レッドキング、ステゴン、モグネズン)が東京に出現し都市を破壊。MATは例によって役に立たず。

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怪獣軍団に混じって復活させられていたらしいピグモン(このあたりの設定は「小さな英雄」を踏襲していますな)の協力で郷の拘束は解かれるが、その代償にピグモンは命を落とす(この辺も「小さな英雄」です)。

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郷は三度帰マンになってにせセブンと対決しこれを倒し、東京に駆けつける。

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帰マンと対峙するゼットン。この時のゼットンのセリフに注目。
「フフ、あのウルトラマンの弟か。すこしは、強そうだな」
1971年の時点では、「ウルトラ兄弟」は実際の兄弟という設定だったことがはっきりわかる。

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ゼットンはお得意の1兆度の火の玉を帰マンに連続発射するが、帰マンはウルトラスピンという、これまた内山漫画オリジナル技で跳ね返し、ゼットンを倒す。
しかしすでにカラータイマーが点滅、まだ怪獣は4体も残っており、もはやこれまでかと思った時、空から3つの火の玉(赤い玉というべきか)が落下し、中からゾフィー、「前の」ウルトラマン、ウルトラセブンが現れる。

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それを見届けた帰マンは、「にいさんたちだ。よかった」とつぶやき、タイムアウトで姿を消す。何と、この漫画の主役たるべき帰マンは、兄弟たちと共闘していないのであった。主役不在のラストバトルというのは、いささか物足りないような…。

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ウルトラ3兄弟と怪獣軍団の戦闘が開始。それぞれの持ち技で4怪獣をあっという間に倒す。

戦いのあと、郷はテレパシーでゾフィーに、自分を助けてくれたピグモンがチブル星人の円盤にいること、事件のラスボスがチブル星人であることなどを伝える。それを受けて3兄弟は、円盤で逃走をはかるチブル星人を倒し、ピグモンの遺骸を持って光の国へ戻っていく…。

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なお、このラストのコマにも、主役である帰マンの姿はない(一見すると中央は帰マンのようだが、物語の展開からして、胸のボツボツを書き忘れたゾフィーだと思われる)。

お話の方はこんな感じ。登場する怪獣側には、帰マンの怪獣数体に加え、かねてから人気の高かったレッドキングやゼットン、エレキングなどを配し、それを迎え撃つウルトラヒーローも勢ぞろいで、夏休みならではの「夢のオールスター戦」といった趣(おもむき)である。当時はまだテレビでは、このように複数のウルトラヒーローが一堂に会し、怪獣・宇宙人の大群とバトルを繰り広げるというシチューションは皆無だったので、当時の小学生(もちろん私も含む)はかなり熱くなって、この漫画を繰り返し読んだものである。

とは言うものの、実はこのストーリーにはどこかで既視感があり、それはなぜだろうとずっと考えていたのだが、最近になって理由がわかった。
この漫画が書かれる1〜2年前、美研というメーカーから発売されたフォノシートつき紙芝居「ウルトラ大決戦」において、すでにこれとほぼ同じシチュエーションを目の当たりにしていたからだった。

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「ウルトラ大決戦」1969or1970年(美研)

こちらは、フォノシートは残っているものの、紙芝居の方は残念ながら中学校にあがるころ処分してしまったため、画像でご紹介することができないのだが(上記画像は某オークションに出品されていた時のものを拝借)、あらすじは、かつてウルトラマンと引き分けたメフィラス星人と、一度はウルトラセブンを十字架にかけたこともあるガッツ星人が手を組み、怪獣軍団を率いて地球総攻撃をかけるというもの。

ある晩、横浜・鎌倉方面にペスター、ゲスラ、ザンボラーなどが出現、激しいバトルを繰り広げる。ウルトラセブンが現場に駆けつけ、ペスターとザンボラーを氷づけにしたガンダーを倒すが、傭兵(?)として戦線に加わったバルタン星人の大群に翻弄され体力を消耗、大ピンチに陥る。その時、上空からウルトラマンが現れ、これに助けられたセブンも闘志を取り戻し、それぞれの得意技(スペシウム光線とアイスラッガー)でほかの怪獣たちとメフィラス&ガッツ星人を粉砕する。
最後は「これからも力を合わせてがんばろう」と決意を新たにしたウルトラマンとセブンが、地球を背にして宇宙を飛んでいる絵で終わり。

まあ、この手のストーリーには、それほどバリエーションがあるとも思えないので、この両者の類似は仕方のないこととは思うが、「ウルトラ兄弟」の設定が為されるよりも前に、ウルトラマンとウルトラセブンというWヒーローの、番組を超えた競演ドラマが描かれ、世に出ていたというのは、注目すべき事実だと思う。

しかし、さらにさかのぼれば、「ウルトラセブン」制作後期に、上原正三と川崎高(実相寺昭雄)が共同執筆した「宇宙人15+怪獣35」というNGシナリオが存在する。この作品はタイトルが示すとおり、これまでウルトラシリーズに登場した怪獣・宇宙人が多数復活してウルトラセブン&カプセル怪獣と激闘を繰り広げるというもので(ラスト近くでピンチに陥ったウルトラセブンを助けるのは宇宙獣神ゴード)、上記の「ウルトラ大決戦」も「決戦★ウルトラ兄弟対11大怪獣」も、ともにこの「宇宙人15+怪獣35」をベースにしているように思われる。もしこのエピソードが映像化されていれば、「セブン」放映時にすでに、「マン」と「セブン」は同一世界での物語、という設定が明確になっていたわけだ。

【付記1】紙芝居「ウルトラ大決戦」はウルトラ画家として知られる前村教綱の筆になるもので、その絵の迫力もさることながら、フォノシートの出演者が異様に豪華なことも特筆にあたいする。何とメフィラス星人とウルトラセブンを永井一郎、ガッツ星人とウルトラマンを北川国彦(米彦)、バルタン星人とナレーターを野田圭一が担当しているのだ。当時はフォノシートを聞いて、「どうして『サザエさん』のお父さんがこんなところに?」と、大いに違和感を覚えたものだ。

※フォノシート音声はこちら(一部抜粋・mp3ファイル)

【付記2】「ウルトラセブン」放送と並行して桑田次郎が『少年マガジン』に執筆していたコミカライズ版では、その第1話冒頭に、ウルトラマンがセブンに任務の「引き継ぎ」を行うという珍しいシーンが描かれている。円谷プロの公式見解だったかどうかは謎だが、多分これが、「マン」と「セブン」が同一時空間に存在した最初の場面ではないかと思われる。

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桑田次郎「ウルトラセブン」第1話「姿なき挑戦者」より
posted by taku at 13:39| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月06日

「ウルトラ兄弟」誕生の夏(1)

暑い。あまりにも暑い。
東京では1週間連続の猛暑日だとか、本当にもう常軌を逸している。

というわけで、ほとんどブログを更新する気力も集中力もないのだが、夏休みでもあることだし、久々に特撮ネタを一発お送りしてみたい。例によって数十年自宅に眠っていた、今や稀少な雑誌のお蔵出しである。

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「小学二年生 夏の増刊」1971年8月発売(小学館)

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「怪獣とさよなら星特集号」
男の子には「怪獣」、女の子には「谷ゆきこ漫画」というキラーコンテンツ2連発!

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巻頭を飾るのは、二子玉川園で行われていた「ウルトラ怪獣大会」の紹介。筆者も夏休みの終わりに観に行きましたよ(その時の写真はこちら

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一方、「怪獣なんて全然興味ないわ」という女の子のために、谷ゆきこ大先生による「さよなら星」のスーパーダイジェスト142ページ!(当時、ひとつ学年が上の学習雑誌で連載中だったものを大幅に圧縮)

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これがまたたいへんな「不幸のズンドコ」ドラマで、

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突然ヒロインの弟が倒れてアメリカで治療を受けることになったり(その後あっけなく死亡)、

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治療費の足しにと老夫婦に家を貸したら、老婆は家の中でトラを飼うマジキチだったり(実際に漫画の中で「おばあさんが気ちがい!?」というセリフがある)、

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マジキチ夫婦の掘った落とし穴に落ちたヒロインが、当時「サインはV」でおなじみの「骨肉種」におかされ、片足を切らなければならないかも知れなくなったり、

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でもって、何か無理やりのハッピーエンド。ちなみに一学年上の学習雑誌での「さよなら星」連載はその後も続くが、最後はヒロイン一家が全員死亡という信じられないバッドエンド。具体的に知りたい方はこちらのブログがとても詳しいのでご参考に)。

ほかにも、あのころ必ずあったクイズコーナーや、

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帰ってきたウルトラマンの「やられ」シーン限定写真特集(どういう趣味だ?)、

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つよい ウルトラマンも、
時には、怪獣に くるしめられる。
これは、その 時の かなしい かお。(何となく相田みつを調)


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などなど盛りだくさんだが、そんな中でもひときわ目を引くのがこちら、

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「決戦★ウルトラ兄弟対11大怪獣」 作・田口成光 え・内山まもる(全73ページ)

当時、月刊誌「小学二年生」では内山まもるによる「帰ってきたウルトラマン」が連載中で、この読みきり長編は、いわば本誌の派生作品なのだが、本誌連載の「帰ってきたウルトラマン」が2011年に単行本化された際、[完全復刻版]と言いつつ、どういうわけかこの作品は収録されなかった。いまだに「幻の大作」と称される由縁である。

帰ってきたウルトラマン[完全復刻版] -
帰ってきたウルトラマン[完全復刻版]

内山まもるといえば、70年代以降のウルトラ漫画の巨匠ともいうべき存在であり、オリジナルストーリーでウルトラ戦士、ウルトラ兄弟たちが活躍する作品を数多く手がけているが、そんな内山がはじめて、「ウルトラ兄弟」という設定の元で兄弟(ゾフィー、ウルトラマン、ウルトラセブン、帰マン)と怪獣軍団とのバトルを描いたのがこの作品である。

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ちなみに「ウルトラ兄弟」という設定そのものは、この増刊号が発売されるひと月前、『小学二年生』1971年8月号の誌面上で公式に発表されたもので、これはすなわち、「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」という物語がすべて同一世界での出来事であることを意味する。それまで、「ウルトラマン」と「ウルトラセブン」は、「ヒーローはともにM78星雲出身の宇宙人」という設定は共通していたものの、どちらの作品にも登場するキャラクターというのは一切存在せず、その世界観が同一であるかどうかはあいまいなままだった(一方、「ウルトラマン」とその前の「ウルトラQ」については、ラゴンとケムール人が両作品に登場することから、その世界観は共通という認識があった)。それがこの「ウルトラ兄弟」設定によって明確になったわけで、当時の特撮少年たちには、かなり画期的な出来事であったのだ。

前口上はこのくらいにして、それでは肝心の漫画をご紹介…と言いたいところだが、すでにかなり長くなってしまったので、今回はここまで(続きは数日中にアップする予定)。

では、どなた様も熱中症にはくれぐれもお気をつけ下さい。
posted by taku at 14:28| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月25日

二代目バルタンと毛利博士

ウルトラマンスタンプラリーは先月末で終わってしまったが(結局、ラリーに参加したのは1日限りだった)、あの時のブログに、「バルタン星人の二代目については、稿を改めて書きたい」と予告めいたことを綴ってしまったので、一応その「公約」を果たしたいと思う。というわけで今回は、二代目バルタン星人について。

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まず何より目を引くのは、初代よりもスマートで洗練されたフォルムだろう。デザイナーの成田亨も「オリジナルデザインに近い」という理由で、完全な新規制作である二代目の方を気にいっていたらしい(初代はセミ人間の頭部を改造したもの)。
上の写真は1983年に発売されたバンダイのプラモデル「The 特撮Collection 1 二代目バルタン星人」。浪人中だったにも関わらず、すぐに買って組み立て、机に飾ってその造形美を堪能した。

もちろん初代の造形も充分魅力的なのだが、セミ人間をベースにしているためか、パーツのひとつひとつは割と大作りな印象である。しかし、そのインパクトの強さは比類がなく、ウルトラ関連の怪獣宇宙人の中でも常にダントツの人気を誇っている。

baru01.jpg 初代

それに対し二代目は、現場で写真撮影を行っていないためオリジナルのスチールがなく、ある時期まではほとんど幻の存在であった(いまだに「へー、二代目なんていたんだ」などと言われることが多いが、そもそも「二代目」という呼び方自体、1970年代に入り、本編映像からの抜き焼き写真が出回るようになった時からのもの)。そうしたミステリアスさも手伝って、こちらのバルタンへの思い入れが強まったというのもあるかも知れない。

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成田亨によるラフデザインと決定稿。たしかに初代より二代目に近い

次に特筆するべきは、その二代目バルタン星人が登場する第16話「科特隊宇宙へ」の素晴しさ。傑作ぞろいの『ウルトラマン』の中でも、間違いなく五指に入る名エピソードではないだろうか。少なくとも特撮シーン&戦闘シーンの多彩さ絢爛さにおいては、初代が登場した第2話「侵略者を撃て」をはるかに凌ぐというのが、多くの特撮ファンの共通認識だと思う。

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第16話「科特隊宇宙へ」1966年10月30日放送

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脚本:千束北男 監督:飯島敏宏 特殊技術:高野宏一
※「千束北男」は飯島敏宏のペンネームなので、この回は脚本と監督が同一人


では簡単にあらすじを。
人類初の有人金星探検ロケット「オオトリ」が発射された。宇宙飛行士として乗り込んだのは、ロケットの発明者である宇宙開発研究所の毛利博士(奇しくも日本人2人目の宇宙飛行士と同じ苗字。日本には30万もの苗字があり、その一方、宇宙に飛び出した日本人がいまだ10人前後であることを考えると、これは大変な偶然の一致というしかない)。科学特捜隊のブレーンである岩本博士も、同じ性能を持つロケット「フェニックス」を開発していたが、テスト回数の不足から、一番乗りを毛利博士に譲る形となった。

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「オオトリ」船内の毛利博士(池田忠夫)

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爽やかに敗北を宣言する岩本博士(平田昭彦)

「オオトリ」は無事軌道に乗り、金星までの飛行は順調に進むかに見えたが、バルタン星人の陰謀で制御不能に陥ってしまう。第2話でウルトラマンにほぼ全滅させられたバルタン星人の生き残りが、地球人類とウルトラマンにリベンジマッチを仕掛けてきたのだ。

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バルタンは「オオトリ」をオトリにして(洒落ではありません)科学特捜隊とウルトラマンを宇宙に誘い出し、その隙をついて地球を侵略する作戦を立てていた。バルタンの狙いどおり、科学特捜隊の主戦力(ハヤタ、アラシ、ムラマツ)はロケットエンジンを搭載したビートル機で宇宙に向かい、毛利博士を救助するが、博士の肉体にはすでにバルタンが憑依しており、その力でビートル機はR惑星に不時着させられる。そのころ、地球にはミニバルタンの大群が来襲し都市を破壊、イデが単身で迎撃するも苦戦を強いられていた。

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ハヤタはウルトラマンに変身して、まずR惑星のバルタンと対戦。バルタンは前回の轍を踏まぬため、ウルトラマンのスペシウム光線を跳ね返す「スペルゲン反射鏡」を胸に装備して戦いに臨むが、新技「八つ裂き光輪」に破れ去り、一方、地球を襲ったバルタンも、「テレポーテーション」で光速移動してきたウルトラマンによって倒される。そしてビートル機が不時着したR惑星には、岩本博士が「フェニックス」で自ら救助に赴くのだった。

…という感じで、とにかく見どころ満載、素早い展開、新メカ新技続々登場、まばたきする隙も与えてくれないような大サービス回なので、未見の方はぜひとも本編を見ていただきたいところであるが、それが難しいという方は、このページこのページがとても詳しいので参考までに。

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上の3点は、ウルトラファンならおなじみ、「スペルゲン反射鏡」によってスペシウム光線が跳ね返されるシーン。「スペルゲン反射鏡」「スペルゲン反射光」「スペシウム抗体反射板」などいろいろな言い方があるようだが、物質的な名称は「スペルゲン反射鏡」でいいのではないかと。その反射鏡が反射した光が「スペルゲン反射光」ということで。ちなみに劇中で毛利博士(中身はバルタン)は「スペルゲン反射光の餌食にしてやれ!」と言っている。

この第16話は何度見直しても、その度に幼いころのわくわくどきどき感が甦る、大変充実したエピソードであるのだが、私にはただひとつ、どうしても納得のいかないところがある。それは、ドラマの中盤までは主役級の扱いだった毛利博士が最終的にどうなったのか、きちんと描かれていないことだ。劇中では、R惑星でバルタン星人として巨大化して以降、まったく姿を見せず、その生死についても一切触れられていない(おそらく、正味23分という時間的制約によるものだろう)。

しかしながらこの毛利博士、ロケットの飛行が安定した後に、宇宙服を脱いでスーツ姿になり、宇宙食ではなくステーキを食べるという仰天パフォーマンスを披露してみたり、バルタンに乗っ取られた無重力状態のロケット内で、天井に張り付いた状態で悶絶したり、それ以外にも、バルタンに憑依された後、ミニバルタンを手のひらに乗せて指令を下す、それを「ふっ」と口で吹いて飛ばす、何度となく狂ったような高笑いをする、等々、とにかく、一度見たら絶対に忘れない、大変インパクトの強い(マッドサイエンティスト系の)キャラクターなのである。しかもドラマ上の設定では、あの岩本博士のライバルと言ってもいい偉大な科学者。これだけ存在感のある登場人物について、何のフォローもないままドラマを終えるのは、少々配慮に欠けているのではないだろうか。

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ドラマ中盤までは間違いなく主役級の毛利博士。怪しい高笑いに毒蝮もビックリ!

もっとも、そう考えたのは私だけではなかったようで、この16話が放送されて程なくして発行された現代コミクスのコミカライズ版では、その消息がはっきりと語られている。

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現代コミクス『ウルトラマン』1967年2月1日発行

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「新バルタン星人の巻」。作者はご存じ井上英沖。

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前半の流れはほぼテレビ版と同じだが、毛利博士の容姿が大きく異なる。こちらはつるっぱげに白ひげで、いかにもこの時代の「博士」といういでたち(どう見ても50代なかば以上。よく宇宙に行く体力があったものである)。

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岩本博士が開発競争で後塵を拝したエピソードもきちんと描かれる。ホシノを諭すムラマツのセリフもほぼテレビ版どおり。

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中間ページのイラスト。初代バルタンのスチールを元に、スペルゲン反射鏡を無理やり書き足して「二代目」を表現。絵は藤尾毅。

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バルタン星人の宣戦布告。ほとんどテレビ版を踏襲。

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バルタン星人に憑依される場面。「おまえのからだをかりるぜ」なんて軽く言ってますが…

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テレビ版と異なり、ロケットエンジン搭載のビートル機で「オオトリ」救助に向かうのはハヤタのみ。

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ここではっきりと、毛利博士の死が語られる。
「わたしはもう毛利ではない。バルタン星人だ。毛利はこの世にいなくなったぜ。ウヒウヒウヒ」

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地球に残ったムラマツや岩本博士も、眼前の状況から毛利博士の死を悟る。

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ついでながら、井上版の「スペルゲン反射鏡(光)」シーン。「ブヒーッ」って、豚じゃないんだから…

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2体のバルタンの反射鏡を向かい合わせにして同士討ちさせる(でも反射鏡は、元の光がないと「反射」しないはずですが…)。

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そしてラストページ。ハヤタはウルトラマンに助けられたという設定で、岩本博士による「フェニックス」での救助シーンはなし。しかし最後のコマで、岩本博士の毛利博士への哀悼の意が表明される。

どうです。こっちの方が納得が行くでしょ?

実は、私は幼児期にこの現代コミクスを繰り返し読んでいたので、テレビ版も、こういうラストだと思い込んでいた。だから、中学3年生の時、久しぶりで「ウルトラマン」の再放送が(どういうわけかフジテレビで)行われた時、この16話を改めて見て、「え、毛利博士はどうなったの? 行方不明?」と困惑したというのが正直なところである。

ちなみに、16話のコミカライズ版はこの現代コミクスのほかにもうひとつある。当時雑誌『ぼくら』に連載されていたもので、こちらは一峰大二の筆になるもの。せっかくなのでこちらも紹介しておくが、かなりオリジナル度が高く、岩本博士も登場しない。

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「バルタン星人の巻」(『ぼくら』1966年12月号別冊付録)

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一峰版の毛利博士は、井上版よりは若そうだが、やはりかなりのおっさん(しかもメタボ)。注目すべきは、テレビ版や井上版と違い、ロケットに複数の乗組員がいること。こちらの方が自然という感じも。

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「おおとり」のSOSを受けて「ハヤタ救助艇」が出動(井上版同様、こちらも救助に向かうのはハヤタのみ)。

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「おおとり」は損傷も激しく、乗組員は全滅かと思われたが、なぜか毛利博士だけ生存が確認される。

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救助された毛利博士は科学特捜隊内の病室(そんな場所があったのか?)に収容されるが、やがて憑依していたバルタン星人が姿を現わした。この時、毛利博士とバルタンが分離し、毛利博士は正気を取り戻す。

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せっかくなので、一峰版の「スペルゲン反射鏡」シーンもご紹介。

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こちらは、反射鏡のついていない背中をスペシウム光線で狙い撃ち、勝利を収める。

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ラストページ。朝日を浴びながら帰還するビートル機を出迎えるフジ、ホシノ、そして毛利博士。「おう、なんとすばらしい……」なんてセリフまである。まさにすばらしい。一峰版コミカライズでは毛利博士は死んでいないのである。こういうラストもありだと思う。

以上、『ウルトラマン』第16話「科特隊宇宙へ」のテレビ版とコミカライズ版2つにおける毛利博士の扱いの違いについて記してみたが、どのような印象を持たれただろうか。

この16話に限らず、テレビ版の『ウルトラマン』は内容を詰め込みすぎているせいか、ラストが異常に駆け足で、ドラマとしてのカタルシスが弱い話が少なからず存在する。それをコミカライズが救っているケースはほかにもあり、たとえば、「トラックにひき逃げされて死んだ少年の霊が乗り移った」とされる高原竜ヒドラが車を次々に襲撃する第20話「恐怖のルート87」などは、テレビ版では、ラストでハヤタが「ひき逃げをした運転手も自首して警察に捕まりましたよ」と語るだけで、その姿は画面には一切登場しないのだが、井上版では、物語の後半にひき逃げ犯人のトラックをヒドラが襲う場面がきちんと描かれており、そのトラックを巡って、ヒドラと科学特捜隊、さらにウルトラマンが争奪戦を繰り広げるクライマックスが用意されている。ドラマとしてどちらが完成度が高いかは言うまでもないだろう。コミカライズというと、元のストーリーをなぞって漫画にしただけ、と思われることも少なくないが、このように、オリジナルを補完する機能を果たしているケースもあるのである。

閑話休題。話を二代目バルタンに戻そう。もう一度、現代コミクス『ウルトラマン』2月号の表紙をよく見て欲しい。

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柳柊二の筆になるこの表紙絵のバルタンは、…そう、初代とはあきらかに違う細身の面容、まぎれもなく二代目バルタンである。

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プラモを横に置くと一目瞭然!

しかし、前にも触れたように、この二代目バルタンは制作現場でスチール写真の撮影を行っておらず、それゆえ1970年代以降に公開されるようになった画像も、すべて本編からの抜き焼きである。したがってこの当時、二代目バルタンのスチール写真というのは存在しなかった。だから上に紹介した井上版も一峰版も、そして藤尾毅のイラストも、すべて初代バルタンをモチーフにして描かれている。
にも関わらずこの表紙絵だけは、きちんと二代目バルタンが描かれているのだ。これは一体どういうことなのだろう。あるいは成田亨のデザイン画を見て書いたのかとも思ったが、比較してみると、かなりの隔たりがある。もしかするとこの当時、限られた関係者の間だけで出回ったスチールというものが存在したのだろうか。それとも、柳柊二は実際の放送を見ながら、それをスケッチするなどして、この表紙絵の下絵としたのだろうか(16話のオンエアは1966年10月30日。現代コミクス『ウルトラマン』2月号発売が1967年1月なので、表紙絵の納品は多分12月初旬くらいと推測され、時間的に不可能な話ではないが、かなり無理のある仮説である)。いずれにせよ、大変にレアなケースだと思う。

※このページのキャプチャ画像は、(株)円谷プロダクションが制作したテレビ映画『ウルトラマン』第16話「科特隊宇宙へ」(1966)からの引用であり、すべての著作権は円谷プロダクションが保有しています。
posted by taku at 19:03| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月13日

ウルトラ絵本あれこれ

ウルトラマンスタンプラリー開催中でもあることですし、実家の押入れに眠っていた、ウルトラ関連の絵本類をいくつかご紹介していきましょう。

まずは『ウルトラマン』の放送中に出版された幼児絵本を2点ほど。

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講談社のテレビ絵本 ウルトラQ「ガラモンのしゅうげきのまき」 ウルトラマン「バルタンせいじんのまき」
ともに1966年8月28日発行


ガラモンとバルタンといえば、それぞれ「Q」と「マン」でも一、二を争う人気キャラ。当然、今回のスタンプラリーにも名前を連ねております。

こういうのを持っている人も、もはや少ないんじゃないかと思ってネット検索してみたら、何と、両方ともつい最近まとめて復刻されていました。やはりニーズがあるんですね。

講談社のテレビ絵本 ウルトラQ 完全復刻 -
講談社のテレビ絵本 ウルトラQ 完全復刻 -

講談社のテレビ絵本 ウルトラマン 完全復刻BOX (KCピース) -
講談社のテレビ絵本 ウルトラマン 完全復刻BOX (KCピース) -

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「ガラモンのしゅうげき」は、金城哲夫脚本の「ガラモンの逆襲」をベースにしつつ、かなりオリジナル度の高い展開。ガラモンが3体都心に現れ、町を破壊します。

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ガラモンを操る宇宙人を発見して飛びかかるのが万城目ではなく一平というのが新鮮(単に名前を間違えただけのような気も…)。

最後に宇宙人が正体を現わすのですが、その姿も、セミ人間ではありませんでした。

絵は矢木靖彦。この人の名前を検索しても、この「ガラモンのしゅうげき」しか上がってきません。この時だけのペンネームだったのでしょうか。

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一方、「バルタンせいじん」の方は、かなり千束北男(飯島敏宏)脚本に忠実で、科学センターに異変が起こり、アラシ隊員とホシノ少年が現場に向かったところ、守衛がこちこちに固まっていて、そこでアラシ隊員も固められてしまう、という前半のミステリアスな展開は本編とほとんど同じです。

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ただ、そこから先がかなりはしょられ、防衛会議やバルタンが語った自分の星の滅亡エピソードなどはすべてカットされています(まあ幼児向けの本ですし、ページ数も少ないですからやむを得ないでしょう)。

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ひとつ気になるのは、ウルトラマンもバルタンも異様に横幅が広いこと。ウルトラマンはアメコミヒーローのようなマッチョだし、バルタンも、実際の造形を大幅に裏切る体型で、正直ちょっとカッコ悪いです。正体不明の異星人という感じはよく出ていると思いますが…。

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こちらは、何とあの辻真先が「脚色」を担当。
そして絵は花野原芳明(かのはら・ほうめい 1921〜1979年)。「海底探検」「コグモの冒険」「でっぷり船長の冒険」といった漫画の作者で、少年少女向け読み物の挿絵も多く手がけていた人のようです。

つづいてご紹介するのは、フジテレビの「とびだすえほん」。

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ウルトラ大行進 怪獣オンパレード
1969年4月30日発行(1969年7月1日三版)


「とびだすえほん」といえば万創が有名ですが、もともとはフジテレビから出されていました。それが、当時の「放送局の出版事業を禁止する」という法律に抵触したため、1970年に万創が創設されたとのこと。この本は、その前年のものです。

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左からネロンガ、ペスター、ベル星人。「ウルトラ怪獣」というくくりで、ベル星人の横に「キャプテンウルトラ」のバンデラーがいます。(伊藤展安・画)

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左から恐竜戦車、ゴルゴス、アントラー、そして何故かピーター(深海怪獣なのに)。岩陰にいる左端の女性隊員は多分アンヌでしょう。男性隊員は後ろ姿なのに、女性隊員は顔をちゃんと描いているところに画家のこだわり(?)を感じます。(前村教綱・画)

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まさかのザンボラー単体掲載。そんなに人気怪獣とも思えないんですが…。本編でも為し得なかった新幹線大破壊をやっちゃってます。(伊藤展安・画)

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逃げ惑う群集の描写がけっこう細かい。

最後に、以前にもちらっと紹介した、今は無きエルムの怪獣絵本を2冊ほど。これらは、「大百科」「大画報」などと謳われていますが、中味を見る限り、絵本という分類でいいと思います。

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ウルトラ怪獣大百科
1969年6月25日初版発行


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ペギラ、ジラース、ガラモン(ピグモンと誤記)。

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ギャンゴとアボラスは国立競技場で。

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シーボーズとゴモラは古都で戦う。

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ギガスとウー、ゲスラとピーターの戦い。後者は、実写では実現不可能(ゲスラはピーターのぬいぐるみを改造したものなので)。

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オール怪獣大画報
1970年6月1日初版発行


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ブルトンとキーラのシュールな戦闘。

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ビラ星人、アントラーとウルトラマンの番組を超えた戦い。

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宇宙空間で戦うザラブ星人とジャミラ。なぜかウルトラホーク1号が…

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レッドキングとグビラ。見出しがスポーツ新聞のようでおかしい。

この当時(1960年代後半)は、まだホームビデオはありませんでした。怪獣の雄姿を見たいと思えば、この手の絵本をめくるしかなかったわけです。いや、実際には『ぼくら』などの雑誌の特集ページや5円引きブロマイドなどで、怪獣のカラー写真を見る機会もなくはなかったのですが、あのころのわれわれにとっては、写真よりも絵で描かれた怪獣の方が、ダイナミックで胸のときめく存在だったのです。絵ならではの自由奔放さ(上の画像でも明らかなように、実写では実現不可能な怪獣同士の対決場面も、絵ならばいくらでも描くことができます)が、空想力豊かな子どもの感覚にマッチしたのかも知れません。

70年代に入り、第2次特撮ブームが起こるころから、こうした児童向け絵本も、写真を使ったものが主流になっていきます。それらはリアルな怪獣のビジュアル情報を正確に伝えてはくれましたが、絵で描かれたもののみが持つ、ある種のファンタジーは、誌面から失われていきました。
posted by taku at 17:53| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする