2015年02月09日

ウルトラマンスタンプラリー

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というわけで、やはり出かけてしまいました、ウルトラマンスタンプラリー。先月14日、高崎白衣大観音を訪ねた帰り、新宿駅でウーに遭遇したのが運のつきというか何というか。

とにかくスタンプラリーなるものをやるのは完全にこれが生まれて初めてで、どこからどう回ったらいいのかわかりません。
小田急線人の私は新宿が起点なので、とりあえず新宿に降り立ち、でも新宿駅のウーは前回すでに押してあるのでスルーし、ありがちですが、まずは山手線に乗ってみました。

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新大久保はピグモン。先客は2名。

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高田馬場はバニラ。バニラって赤い怪獣ですから赤羽あたりがふさわしいような気がするんですが。ここには女性が1名。やっぱり女性が多いですよ〜。

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目白はややマイナーなステゴン。先客ゼロ。何か閑散としてましたが、

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スタンプ台の下のところに赤と黒のウルトラマンの折り紙が。こういう手作りの趣向はいいですな。

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池袋はアントラー。ターミナル駅なのに、ほとんど案内の表示がなくて探すのに苦労しました。でも、さすが人気怪獣。ちょっとした行列です。

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ここから埼京線に乗り換え。板橋はやはり人気怪獣のはずのゴモラですが…、たまたまでしょうか、誰もいませんでした。

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十条はゴドラ星人。こちらも無人。

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余談ですが、このスタンプラリーの怪獣&宇宙人、スタンプ台のところの写真と、スタンプ台の位置を知らせる案内ポスターの写真が、同一のものと違っているものがありまして、ゴドラ星人は違っていました(下画像参照)。

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やはりこういう風にバリエーションがある方が楽しいですね。

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赤羽は愚鈍、ではなくグドン。ちなみにこの頭部の型は後に『シルバー仮面(ジャイアント)』最終回に登場するワイリー星人にも使われます(制作会社が違うのに…。大らかな時代でした)。

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東十条はアギラ。うーん。グドンといいアギラといい、成田亨が抜けてからのウルトラ怪獣&宇宙人デザインは、どうもあまり私の好みではないようです。

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出ましたメトロン星人。ここはかなり表示がわかりやすい。

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熱心なオタク愛好家の方が何枚も写真を撮っていました。

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スタンプ台が円形なのは、例のちゃぶ台のシーンにちなんでいるとか。

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田端はリリー。わざわざ「総天然色ウルトラQ」から画像を抜いてるのが芸コマだなあ、なんて感心してる場合じゃない。
おいおい、リリーは怪獣でも宇宙人でもないでしょ。一の谷博士いわく「シナプスの崩壊現象」によって精神と肉体の分離が起きて発生した、少女の「精神」のはず。こういうのを入れるくらいなら、ラゴンとかゴルゴスとかパゴスとか、もっと入れるべき「Q」怪獣はいろいろあると思うんですが…。

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というわけで、マニアにもあまり人気があると思えないリリーのスタンプ台は、おばちゃんの荷物台になっていました(当然先客ゼロ)。

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西日暮里は一転して、ファンが多いと言われるダダ。やはりこうして先客が。

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案内もしっかりダダ語表示です。

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日暮里はゲスラ。「これぞスタンプラリー」というべき、何となく微笑ましい光景。

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上野はシーゴラス。NEWDAYSの真ん前でした。

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お待ちかね、ネットでも話題の御徒町。

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どうやらゼットン愛に溢れた駅員さんがいるようで…

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ポスターにもウンチク満載。ほかの駅でもこういうのがもっと見たかったですね。

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さすが最強ゼットンさん、大人気。

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サラリーマンも思わず足を止める。

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「この怪獣は他の駅でも大変人気が高く、様々な難関を突破し、御徒町駅のキャラクターとなりました」とのこと。どんな難関だったか、すごく気になります。

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秋葉原はザラブ星人。こちらも大人気。

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この宇宙人は、携帯用の小型電子頭脳をちゃちゃっと組み立ててしまうようなメカオタクなので、秋葉原にはマッチしてるんじゃないかと思います。

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一駅だけ中央線に乗り御茶ノ水へ。ジラース(エリマキゴジラ)には人だかりなし。

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神田はガンダー。駄洒落ですな。ここもなぜか女性多し。
この辺でそろそろくたびれて来たので、以下、駆け足で。東京(べムスター)、有楽町(ギガス)、新橋(ウルトラセブン)はすっ飛ばします。

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そして因縁の「帰ってきたウルトラマン」@浜松町。

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「ウルトラマンジャック」。大変に違和感のある、このネーミング。

これについては、ちょうどいい機会なのでこの場で意志表示しておきたいのですが、最初期からのオールドウルトラファンである自分にとって、どうしても馴染めない(許せない)ことというのが3つほどあります。すなわち、

1)ウルトラセブンを「ウルトラマンセブン」と呼ぶ
2)帰ってきたウルトラマンを「ウルトラマンジャック」と呼ぶ
3)スペシウム光線、と言いながらワイドショットのポーズをする

の3つ。

1)と3)はあきらかに「誤り」なので議論の余地はありませんが、2)についても、本放送をリアルタイムで見ていた世代の多くは「ポカーン」という感じではないでしょうか。「ウルトラマンジャック」という呼び方は、特撮ファンはそのほとんどがご存じのように、1980年代以降の「公式設定」すなわち完全な後付けで、もともとはウルトラマンタロウの呼称として考えられていたものです。当然、作品中で「ジャック」なる呼び方は一切されていません。2000年以降、DVDの販促ビデオなどを見ると、名古屋章の新録ナレーションで、「がんばれ、僕らのウルトラマンジャック!」などと語られていますが、どうにも違和感が強く、いまだにまったくなじむことができません。

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今回のスタンプラリーでは、われわれの世代には「サドラー」として馴染み深かった怪獣が「サドラ」、「マグラ」として認識されていた怪獣が「マグラー」という呼称でラインナップされています。どちらも、本放送当時のテロップ表記にしたがっているということですが、それなら「帰ってきたウルトラマン」も本放送当時の呼称にしたがって「ウルトラマン」(ドラマ中では「ウルトラマン」以外の呼び方はされていない)、あるいは番組タイトルである「帰ってきたウルトラマン」で統一するべきです。

でもこういうのは世代論でしかなく、「ジャック」「ジャック兄さん」などという呼び方の番組や映画を見て育った人たちには、ほとんど違和感がないものである、というのも頭では理解できているのです。
ちなみに、「ウルトラセブン」に登場するキングジョーやクレージーゴンなどは、本放送当時はそれぞれ「ぺダン星人のロボット」「バンダ星人のロボット」でしかなく、放送終了後、怪獣図鑑や雑誌などに掲載するにあたり、名なしの権兵衛では困るということで命名されたのですが、それでも、まだ幼かったわれわれは、そうした「後付け」の呼称に何の違和感も抱きませんでした。その呼び方に「いつ」出会ったのか、が、こうした問題を語る上で見過ごせないポイントのようです。

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まあ、永遠に解決しようにない問題はそれくらいにして、浜松町の駅にはその「帰ってきたウルトラマン」とスノーゴンのぬいぐるみのような人形も飾られていました。

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それにしても、何でスノーゴン? スタンプラリーにも入っていないのに。もしかするとJRのスキーキャンペーンの一環?

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気を取り直して大崎へ。こういう「サブタイトル活かし」はいいですね〜。

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一部では初代をしのぐ人気の、二代目バルタン星人。細身でスタイルがよく、成田亨のオリジナルデザインは初代よりこれに近いです。

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にも関わらずスチール写真がまったく存在せず、こういうところに飾られる写真もすべて本編からの抜き焼きという不運な存在。とにかく二代目バルタンには個人的に大変思い入れが強いので、いずれ稿を改めて書きたいと思っています(書きました。こちらです)。

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左に写っている小学生カップルは、私が大崎駅に逗留している間じゅう、スタンプ台のそばからまったく動きませんでした。これも二代目バルタンの魅力ゆえ?

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五反田はペスター。この怪獣を選んだのは「五」角形のひとでに似ているからと理由が書かれていました(ちょっとこじつけ?)。

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目黒はイカルス星人。たしかに目が黒いですが…。ここにはなぜか、スタンプが2つ。

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恵比寿はナックル星人。おめでたい神様の名前にはまったく似つかわしくない「坂田兄妹殺し」の悪党です。

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渋谷はスカイドン。ここで10駅達成賞品のめんこをゲット!

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すぐそばにあった渋谷駅のスタンプの前にはこんな表示が。たしかにまぎらわしい。

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この後もうひと駅だけ、と思い原宿に向かったのですが、帰宅ラッシュでスタンプ台が見えません。

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何とか人波をくぐりぬけて、この日最後のスタンプを押しました。

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ナースの案内ポスターは円盤状の写真。このチョイスはナース、いやナイスですね〜。

11時半くらいから回り始めて18時近くまで、約6時間半で24駅のスタンプを押しました。いやあ、結構歩きましたよ。これは運動不足の現代人にはいい運動になるかも知れません。

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では改めてこの日の成果をご報告。

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ウルトラQ 1/12個(リリーのみ!)

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ウルトラマン 12/27個

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ウルトラセブン 6/14個

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帰ってきたウルトラマン 5/11個(ブルーのスタンプインクが全体に薄かったような…)

といった感じで、やはりウルトラマン率が高かったですな。2月27日までの間に再チャレンジするかは微妙ですが、とりあえず、全駅制覇は難しいように思われます(かなり遠い駅もあるし…)。

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10駅のスタンプもウルトラマン限定。下の4つは宇宙からの侵略者でまとめてみました。

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賞品のめんこはウルトラマンとウルトラセブン。文句なしです。

それにしても、幼稚園や小学校低学年のころ夢中になっていた怪獣や宇宙人に、50年近く経った今、東京の主要駅でこうして再会することになろうとは…。

とにかく参加している人の年齢がかなり高いスタンプラリーでした。たまに20代の若者もいましたが、多くは私と同世代(40代後半〜50代)だと思われます。いいオッサンがウルトラマンのスタンプ帳を片手に、半日あるいは1日かけて都内を列車で走り回る…。その原動力は一体何なのでしょうか。

人間というのはある程度成長した時、親や社会から、幼いころに熱中したものを、一度捨て去ることを強要されます(それが大人になるための通過儀礼なのでしょう)。そして今の40〜50代の男性の多くにとって、その対象は怪獣&宇宙人だったと思います。私の場合もご他聞にもれず、小学校を卒業したころ、かなりの量の怪獣本やグッズを処分させられました。また、思春期の到来とともに、興味の対象が異性(アイドル)、音楽、映画といった、怪獣以外のものに移り変わっていったのも事実です。

しかしそれから何十年かが過ぎ、人生も後半戦に突入した今、過去を振り返って、自分が一番熱中したものは何だっただろうと考えた時、まず鮮明に脳裏に蘇るのは、あのアイドルでもあの映画でもなく、あの怪獣、あの宇宙人だったりするのです。少年時代のピュアな情熱に勝るものなど、そうそうありはしません。親の目や世間体などを気にするようになった思春期よりも前に、いわば無条件に心を奪われたものには、抗しがたい魅力があるということです。そして、そう感じているのが私ばかりでないことを、今回のスタンプラリーの盛り上がりは如実に証明しているように思います。もちろん、その心理の深層には、過ぎ去った幼少期そのものへの郷愁も潜んでいるのでしょう。50代といえばシニア世代の一歩手前。残り時間にも限りがあることですし、もはや世間体など気にはしていられません。好きなものにはまっしぐら、でいいのだと思います。

来年(2016年)は、「ウルトラQ」「ウルトラマン」の放送開始50周年、「仮面ライダー」の放送開始45周年という節目の年。こうしたムーブメントが一層の盛り上がりを見せるかも知れません。
posted by taku at 19:54| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月20日

危うし高崎白衣大観音

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新幹線の車窓から浅間山と大観音を望む

去る14日、ついに「日本三大特撮大観音」3箇所目にして最大最古の、高崎白衣大観音を訪ねてきた。

高崎白衣大観音へのアクセスは、JR高崎駅西口から「ぐるりん観音線」バスに乗って約20分。「白衣観音前」で降りると、いきなり正面にそのお姿が。

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上も書いたように、高崎白衣大観音の高さは41メートルで、26メートルの大谷平和観音、25メートルの大船観音をはるかに凌ぐ。またその歴史を見ても、大船観音と大谷平和観音が「戦後」の生まれであるのに対し、こちらは「戦前」である(完成の翌年に日中戦争開始)。

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高崎市の実業家だった井上保三郎(1868〜1938)は、1934年(昭和9年)の陸軍特別大演習の際、昭和天皇と単独で拝謁したことを契機に、観光都市高崎の建設・十五連隊戦死者の慰霊・社会の平安などを願って、幼いころからの信仰対象だった観音像の建立を決意した。原型の制作者は、鋳金工芸家・彫刻家の森村酉三(1897〜1949)。井上は「私はセメント会社を経営していてコンクリートが豊富にある。これを何かに活かしたい」と語り、井上の熱意に打たれた森村はノーギャラで制作することを約束したという(この辺はネットの百科事典より)。

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目線と同じ高さからだと厳かな御顔立ちという印象だが

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下から見上げると、柔和で微笑んでいるような表情

2年余りの歳月と巨額の私費を投じ、高さ41,8メートル、重さ5,985トン、鉄筋コンクリート製の日本一(当時)の大観音像が完成。1936年(昭和11年)10月20日に開眼供養が行われた。翌年、高崎観光協会が設立され、大観音を中心とした市の観光事業は急速に発展。この年大観音を訪れた観光客は85万人に達したという。(この辺は高崎市のサイトより)。
なお、建立の責任者だった井上は、大事業の疲れが祟ったのか、完成のわずか2年後に69歳で亡くなっている。

たしかにセメント会社を経営しているのであれば、材料はまさに「売るほどあった」わけだから、これだけ大規模なものも作れたということなのだろう。大谷平和観音も見上げるほどではあったが、この巨大感はそれの比ではない。ちなみにウルトラマンの身長は40メートル(円谷プロ公式設定)。実際にウルトラマンがいたら、ほぼこれくらいのスケールということになる。

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本堂の千体観音堂は1986年(昭和61年)建立なので割と新しい

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「うわ、なんだこの無数のボツボツは!」と、一瞬戸惑ったが、胎内巡り用の小窓でした。

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この角度で見ていると、何か違うもののように思えてくるのは私の心がねじれているから??

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でもって、恒例(?)の胎内巡りである。といっても、大谷平和観音は構造上胎内に入るのは不可能だったので、大船観音以来2度目というだけだが。

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だそうである。もし帰りに何か事故にでも遭ったら補償して下さるのか?

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大船観音の胎内は、写真パネルで完成までの過程を解説していたが、こちらは油絵。

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全部で20体の仏像が安置されている。

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出た、エンマーゴ! ではなく、普通に閻魔大王。

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出た、不動明! ではなく、普通に不動明王。

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こういう注意書きが多いっていうのは、それだけマナーの悪い人がいるってことなのね。

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最上階からは高崎の街や浅間山が一望できる。

では観光案内的な説明はこれくらいにして、そろそろ特撮作品の紹介をしていこう。前回の『ウルトラマン80』と同時期の1980年、つまり私が高校2年の時に放送されていた『電子戦隊デンジマン』。

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ただ、『ウルトラマン80』はリアルタイムでかなりの回数見ていたのに対し、こちらは第1話以外ほとんど視聴していなかった。第1話を見て、あまり新鮮味を感じなかったからかも知れない。翌81年、次作『太陽戦隊サンバルカン』放送中の夏休みに最初の再放送が(途中まで)行われ、それを見てこの作品の面白さを再認識した次第である。

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第33話「吸血楽器レッスン」
脚本:上原正三 監督:服部和史 特撮監督:矢島信男/佐川和夫
1980年9月13日放送


あらすじ。ベーダー一族のへドリアン女王が、迎賓館(思い切り実在の建物じゃないですか!)に収められている「黄瀬戸の大壺」を破壊する、と予告してきた。何のために?という感じだが、へドリアン女王は「美しいものが大嫌い」という設定が物語の初期において為されているので、それが理由のすべてであろう。デンジマン5人は警察と連携して警備に当たるが、ベーダー怪物サキソホンラーが放った「音波メス」によって大壺は破壊されてしまう。気をよくしたへドリアン女王は同じ手口で貴重な美術品を次々に粉砕していき、そして目をつけたさらなる標的が「大観音」。劇中で名称は明確にされていないが、画面に映るのはまぎれもなく、高崎白衣大観音である。

というわけで、これまた恒例のキャプチャ画像と現在の画像との比較をどうぞ。

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1980年当時

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2015年現在。天候は大きく違うが、観音像自体には変化なし

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「大観音を狙う!」との予告を受け、物々しい警備網が敷かれる

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常香炉の屋根飾りが変わったのがわかる。また、「銭 宝」が「宝 銭」に

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大観音の前に勢ぞろいしたデンジマン

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同じ場所から撮影。太鼓橋の形が少し違うかな? と思ったら、現在のものは1996年(平成8年)に架けられたとのこと

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大観音をバックに困惑した表情のバルシャーク、ではなく黄山(デンジイエロー)の知人・三郎(おそらくこの回は『サンバルカン』のためのテスト出演だったのでしょう)と、彼にサックスの演奏を強要するベーダー一族の女スパイ・ケラー(この場面では一般人の服装なので、普通のきれいなお姉さんです)。

どうしてこんな状況になっているかというと、サキソホンラーは一度「音波メス」を使うと、エネルギーを激しく消耗して半病人のようになってしまう弱点があった。本人いわく「人間に寄生できれば、ご期待に沿う働きができますです」。というわけでベーダーは、サックスプレイヤーを夢見る屈強な若者の三郎に目をつけ、ニューヨーク行きをちらつかせて彼にサキソホンラーが化けたサックスを吹かせ、次々と美術品を破壊していたというわけ。真相を知った三郎は協力を拒むが、「今日だけの我慢よ」とケラーに言われ、もはや「毒食らわば皿まで」の心境(?)でサックスを大観音に向ける。

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上のシーンは観音像正面にある展望台から撮られたのだが…

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現在は木が成長したため、同じ角度からだと観音像が見えづらい

実写で白衣大観音が登場するのはここまで。デンジイエローと残りのデンジマンがその場に急行し、三郎を解放してサキソホンラーとの戦闘が始まる。でもってデンジブーメラン→一回サキソホンラーを倒す→巨大化「お〜の〜れ」の王道パターン。

『デンジマン』の場合、ベーダー怪物が巨大化してからの展開は、ほとんど同じセットを使い回したルーティンワークなので、今回の白衣大観音の存在も放置だろうと、あまり期待はしていなかったのだが、

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巨大化して暴れるサキソホンラーの手前に大観音が!

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そして、ダイデンジンとの戦闘シーンにも、しっかり大観音のミニチュアが!
(ダイデンジンは65メートルという設定なので大観音よりかなり大きい)


さすがに円谷の『ウルトラマン80』での大観音のセットと比べると簡単なものだが、それでもちゃんと画面に入れ込んでいるというのは好印象だった。ただ、せっかく特撮セットに大観音のミニチュアを持ち込んだのだから、破壊は無理としても、サキソホンラーが音波メスで大観音を狙い、それをダイデンジンが阻止するというシークエンスは是非とも入れて欲しかった(それがもともとのサキソホンラーの使命であったわけだし)。せっかくの大観音がただの風景で終わってしまったのは残念なところだ。

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危うし大観音!

というわけで、ついに「日本三大特撮大観音」念願のコンプリートである。落涙するほどの感動ではないが、まあ、それなりに達成感というのはあるものだ。

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大船観音『シルバー仮面(ジャイアント)』15話

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大谷平和観音『ウルトラマン80』43話

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高崎白衣大観音『電子戦隊デンジマン』33話

これで昨年夏以来、悪い病気のように高まってきていた私の特撮熱も、少しは醒めるだろうと胸をなで降ろしつつ、帰路に着いたのであったが、新宿駅に到着した私の眼に、信じられない光景が飛び込んで来た!

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ウルトラマンスタンプラリー!

1月13日に始まったばかりだと言う(高崎に行った日の前日ですよ)。

あ〜、何でまたこういうのが始まっちゃうのかな〜。もういい加減特撮ネタは封印したいのに!! でも、Q、マン、セブン、帰りマンの4作品ていうのが、私なんか世代的にどストライクなんだよな〜(リアルタイムではA以降は見ていないので)。

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ありものの写真ではなく開田裕治画伯のイラストっていうところがまたいいね!

どこまでも運命は私を翻弄する。しかしこうなればやることはひとつだ。スタンプ台の前に置いてあるはずのスタンプ帳が品切れになっていたので、駅員さんに頼んで1冊わけてもらい、早速、新宿駅の怪獣「ウー」のスタンプを押す(でも何でウーが新宿なの? ストーリーとまったく関係ないぞ! ウーが出てくるのは雪山だぞ。新宿でロケをした『帰りマン』のサータンとかのがいいんじゃないか? あと、何でウルトラマンが南流山なんだ? もしかして南=M、流れ=7、山=8でM78星雲に引っかけたとか?)。

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緊張のせいかスタンプ上部がかすれてしまった(泣)

とにかく、ひとつ大きな使命を果たし終えたと思っていた私に、さらなる使命が待っていた感じだ。例えるなら、ショッカーが滅んだと思ったらゲルショッカーが、鉄面党が滅んだと思ったら宇宙鉄面党が、新人類帝国が滅んだと思ったらデスパー軍団が、Σ(シグマ)団が滅んだと思ったら恐竜軍団が出てくるようなものだろうか。戦士に休息はないのだ。

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それにしても今回のウルトラマンススタンプラリー、新宿駅では女性の姿が目立っていた。ていうか、私が見た限り、ほぼ全員女性だったぞ。これは一体?? 「ウルトラ」は妙齢女性の隠れた人気アイテムなのか? その辺も含めて、次回以降考察して行きたいような、もう辞めたいような…(現時点では未定です)。

※このページのキャプチャ画像は、(株)東映が制作したテレビ映画『電子戦隊デンジマン』第33話「吸血楽器レッスン」(1980)からの引用であり、すべての著作権は東映が保有しています。
posted by taku at 14:23| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月26日

大谷町を行く

前回は大谷平和観音のことだけでいっぱいになってしまったので、今回はそれ以外の周辺スポットを、画像中心でご紹介していきたいと思う。

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バス停「大谷観音前」で降りるとこんなのどかな風景が広がる。

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バス通りには大谷「元」観音のお堂。大谷観音とのつながりは不明。

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そのお隣りには銭洗観音。そしておもむろに後方に目をやると…

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廃墟マニアの心を激しく揺さぶる優良物件がそびえているではないか!
(帰宅後にネットで調べたら、かなりメジャーな廃墟だった)

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大谷石が建築物と一体化している!

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うわ〜、入りたい!
何を隠そう私は20数年来の廃墟愛好家で、公式サイトのフォトギャラリーには「廃墟系」というページもあるくらいなのだ。

廃墟単体のみならず、「廃墟プラス黒髪女子」というコンセプトで写真を撮っていた時代もある。

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こんなのとか、

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こういうのとか。

そんな嗜好なので、目の前に優良物件があると、素通りするのがかなり辛い。
しかし、入り口には案の定、下のような注意書きが。

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20代ならいざ知らず、50を過ぎた人間が、年の暮れに不法侵入を通報されて警察の取り調べを受けるのもいただけないので、今回は見送ることに。そして一路大谷平和観音に向かったというわけ。

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大谷平和観音の展望スペースから見た大谷寺。

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自然が作り出した奇岩と建物とが、不思議な調和を生み出していると思う。
弘法大師作と伝えられる本尊の千手観音菩薩(これが通称大谷観音)や壁面に彫刻された10体の石仏を鑑賞(撮影禁止のため画像なし)。

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そして宝物館にも立ち寄り、縄文時代最古の人骨とご対面(撮影禁止のため入場券を再撮影)。

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大谷寺は庭園もなかなか風情があったのだが、すでに時刻は15時17分。
このままでは、今ひとつの目的地である大谷資料館を堪能できなくなってしまうではないか!(同館は17時まで)
というわけで、小走りで資料館に向かうことに。

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急いでいるのに、道すがら何度も足を止めてしまう。それくらい大谷石が織り成す「自然のアート」には独特の魅力があるのだ。

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しまいにはドラム缶までアートに見えてくる(ぴったりはまっているところがナイス!)。

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右手に見える立岩にも心を引かれたが、今回は断念して資料館をめざす。

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この看板を見て「やっと到着!」と思ったが甘かった。ここからまだかなり歩くことに。

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年代もののトラックがお出迎え。

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数々の特撮作品で見覚えのある奇岩(前回紹介した『ウルトラマン80』43話にも登場)。ここが資料館の中庭。

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自動販売機コーナーも独特。

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いざ入館!

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この階段を降りていくと…

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まるで地下要塞。
間違いなく「宇宙刑事シリーズ」や戦隊もので何度となく見た場所ですよ!!!

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階段を進むにつれ、どこまでも地下深く降りていくような、不思議な高揚感が(私だけか?)。

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人影はまばらだったが、ごくたまにカップルの姿も(上写真)。

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年末年始スペシャルということで、普段は非公開のスペースをライトアップして公開中(2015年1月31日まで)。

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外界と隔絶されているせいか、不思議な心地よさを覚える空間。

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この場所も、「かつては採石場だったけれど今はそうでない」という意味において巨大な廃墟であり、もしここにモデルさんがいたら写真を撮りまくっただろうと思う。

しかし残念ながら今回は単身なので、仕方なくセルフで撮ってみることに…

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今は「自撮り棒」とかが売れるくらいの自分撮りブームらしいが、これはかなり寒かった(反省)。

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というわけで、お口直しの1枚。

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「寒い」といえば、坑内の温度もかなり低く、この日は4度。真夏でも12度程度だという。

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壁面には、数多の撮影実績が貼り出されていたが…

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PVや一般映画がメインで、特撮ものはあまり見当たらず(数が多すぎるのか?)

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いつまでもこの「異空間」に身を委ねていたかったのだが、外が暗くなり始め、やがて閉館時間に(この岩の割れ目も、特撮作品ではおなじみ)。

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出口近くの壁面の文言。たしかに大いに創作意欲をくすぐる空間だと思う。

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外に出ると、すでに宵闇が迫り…。資料館を離れてもなお、特撮作品にありがちな「擬似夜間」風の岩壁が目に飛び込んでくる。今夜は悪夢にうなされそうな(幻夢界に引きずり込まれそうな)予感。
posted by taku at 20:48| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月20日

大谷平和観音は強かった!

前回予告したとおり、今回はいよいよ「日本三大特撮大観音」の二番手、大谷平和観音をご紹介。

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大谷平和観音へのアクセスは、JR宇都宮駅から「大谷・立岩」行きのバスに乗って約30分。「大谷観音前」で下車すると、バス停からもうお姿が。

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あれ、「大谷観音」と「平和観音」は別物?

ここで解説を加えておくと、「大谷観音」というのは、バス停からほど近い大谷寺の本尊である千手観音菩薩(平安時代初期のもので弘法大師作と伝えられる)を指し、一方、今回取り上げる「大谷平和観音」は、第二時世界大戦による戦没者の慰霊と世界平和祈念のため、千手観音菩薩の御前立(おまえだて=身代わりの像)として制作されたものである。

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「大谷観音」駐車場から「平和観音」の後ろ姿を望む

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岩盤のゲートを入って行くと…

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いきなり右手にその巨大な御姿が現れる

着工は戦後間もない1948年(昭和23年)9月。大谷石採石場跡の壁面に、すべて手彫りで(機械を使わず)彫刻し、6年後の1954年(昭和29年)12月に完成(今年でちょうど60年)。翌々年の1956年(昭和31年)に開眼供養が行われた…というわけで、大船観音よりも後に着工して先に完成したことになる。

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観音像前の広場は公園になっている

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戦隊ものや「宇宙刑事シリーズ」などで見覚えのある奇岩が聳え立つ

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大谷平和観音は高さ26メートル、胴回り20メートルの巨体で、数字だけ見ると、25メートルの大船観音より少し大きいが、こちらが全身像であるのに対し、大船観音は上半身だけであのサイズなので、顔などは大船観音の方がはるかに大きい。また、面差しも、こちらの平和観音はいささかロンパリ気味の目や低い鼻が気になり、大船観音の方がはるかに秀麗と思われるのだが…(罰当たりな文章、ご寛恕のほどを。しかし近くの大谷寺宝物館に展示されていた平和観音の原型は、ここまで個性的な御顔ではなかった。ちなみに大船観音はセメントで成型してあるがこちらは手彫り。岩肌への彫刻で表情のディテールを再現するのは難しかったのだろうか)。

さて、観音像とその周辺環境を説明し終えたところで、いよいよ特撮作品の紹介である。前回の『シルバー仮面(ジャイアント)』に比べると、ぐっとメジャーになって…

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私が高校2年の時に放送されていた『ウルトラマン80』。パーフェクトではないが、3回のうち2回ぐらいは見ていた。以下の話も、旧知のきくち英一氏が久々に「ウルトラ」に出演するということもあり、親と一緒に視聴した記憶がある。

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第42話「さすが!観音さまは強かった!」
作:石堂淑朗 監督:東條昭平 特撮監督:佐川和夫
1981年1月28日放送


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時は江戸時代末期。大泥棒が盗み出した千両箱が安政の大地震(1855年)のため、大谷石採石場の地下深く埋まってしまう(ここの特撮は圧巻!)。

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それを掘り出しにやって来た、ナレーションいわく「人相の悪い二人連れ」(『帰マン』の中の人・きくち英一&『スペクトルマン』のノーマン・鶴田忍)。どう見ても人のよさそうな二人連れだが…

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二人連れと信心深い少年・信夫が実際の観音像をバックに会話。二人連れの片方は信夫にミカンをあげる(やっぱり人のいいおじさんだ)。

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一方、UGMは大谷町の地磁気の乱れをキャッチし、矢的猛(長谷川初範)とイトウチーフ(大門正明)が現地調査を開始。ここでも観音像をバックにUGMと信夫が会話。UGMの二人は信夫に何もあげないのに、ちゃっかりご飯をご馳走になり宿泊までさせてもらう。

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その夜、観音様の夢にうなされた猛と信夫は、異変を察知し観音像を見にいく(ミニチュア)。

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例の二人連れは千両箱が埋まっている場所は観音像の下であるという結論に達し、足元にダイナマイトを仕掛けていた。

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爆発の衝撃で無残にも横倒しになる観音像(当然ミニチュア)。

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その下から千両箱ならぬ怪獣ズラスイマーが出現して大暴れ(観音様が霊力で怪獣を封じ込めていたという設定らしいが、大谷平和観音は1954年完成だぞ。それまで怪獣は野放しだったのか?)

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UGMの近代兵器は歯が立たず、猛はウルトラマン80に変身して戦うも窮地に。

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町の古老(柳谷寛)のアドバイスにより、80は観音様の力を借りてズラスイマーを地中に封印。

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そして像を元の場所に安置する(もちろんミニチュア)。

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晴れて元通りになった観音様。心なしかほっとしたような御顔(実物)。

エピローグは、事件解決に功績があった(あったか?)信夫が、憧れのアイドル(倉田まり子)と念願の対面を果たし、「これこそ観音様のお導きだな」などとはやされてめでたしめでたし。例の二人連れがその後どうなったのかは、残念ながら描かれていない。怪獣が封印されたのを見て群集とともに歓声を上げていたのが最後の姿になったが、あの二人がきっかけで物語がスタートしたのだから、この辺はきっちり見せて欲しかった。

さて、大観音つながりということで、この「さすが!観音さまは強かった!」と、前回紹介した「怪奇 宇宙菩薩」とを比較してみると、

(1)観音像に執着する地元の少年(その理由はまったく違うが)がキーパーソン
(2)その少年と正義側のメンバーが接触し、少年宅に宿泊
(3)深夜の観音像の異変(目が光るor目から涙)
(4)観音像が破壊されてその下から巨大な敵(宇宙人or怪獣)が出現
(5)ヒーローは苦戦するが、最後は超自然の力を借りて敵に打ち勝つ

等々、設定やエピソードにおいては共通点も多いが、物語の色合いはまったく違う。「怪奇 宇宙菩薩」は、両親を殺された少年の復讐譚で、シリアスドラマとして作られているのに対し、こちらは「まんが日本昔ばなし」風のぬるい話で、登場人物の葛藤もなく、したがってドラマとしてのカタルシスも乏しい。この2作の相違には、時代背景の差異(学生運動挫折の余波でやたら暗かった70年代前半と、お笑いブームで変に浮かれていた80年代前半とでは世相がまったく違う)やライターの個性(前者は市川森一、後者は石堂淑朗)など、さまざまな要因が関わっていると思われる。

ここであえて細かいことを書くと、昭和のウルトラシリーズも後半(『ウルトラマンタロウ』あたり)になるにつれ、真面目に作ってるのかと問い正したくなる作品が増えてきたのは周知の事実だが、それでも5年ぶりにブラウン管に登場した『ウルトラマン80』は、1クール目の教師編、2クール目のUBM編には今見ても鑑賞に堪える良作、佳作が多かった。しかし3クール目以降、メインライターだった阿井文瓶(阿井渉介)が降板し、阿井の師匠だった石堂淑朗が起用されたあたりから、ストーリー重視路線は影を潜め、『タロウ』のような、あからさまな子ども向けの話(しかも子どもはそういう「幼稚」な作品を好まない)が多くなってくる。この42話などもその1本で、特撮クオリティも高くゲスト俳優も豪華なだけに、いささか残念な仕上がりである。

ただ、観音像のあつかいという点に着目すると、「怪奇 宇宙菩薩」では観音像は、宇宙人にさんざん利用されたあげく、無残に破壊されてそのまま放置。一方「さすが!観音さまは強かった!」の方は、一度は横倒しになったものの、観音自身が実質的な怪獣撃退を行った上、元どおりの場所に安置され、そこには菊の花まで咲き誇るという豪華さ。このあたりの描写は、クリスチャンだった市川森一と、保守の論客として知られた石堂淑朗の思想信条の違いがはっきり現れていて興味深いが、お茶の間で家族揃って安心して見ていられるのは後者の方だろう。

なお、『帰ってきたウルトラマン』第27話「この一発で地獄へ行け!」では、手に電動ノコギリのようなギミックを備えた怪獣グロンケンが、信州の観音寺(架空の寺)にある大観音像の上半身を切り刻むという過激なシーンが出てくるが、この脚本を書いたのも市川森一である。クリスチャンの彼にとって観音像(=偶像崇拝の対象)というのは、それほど「許されざるもの」だったのだろうか?(この、ある種対照的な2人の脚本家が、同じ2011年の暮れに相次いで亡くなった時は不思議な感慨を覚えた)

また悪い癖で話が長くなってきたので、以下、さくさくと作中の観音像と現在の実物とを比較してみたい。この話は1981年1月末のオンエアなので、撮影はおそらく1980年11〜12月あたり、今ぐらいの季節と考えていいだろう。

先月こちらのページで、ダイエー向ヶ丘店における『シルバー仮面(ジャイアント)』22話のロケを紹介した際、多くの特撮ロケ地紹介サイトが採用している「定点観測的な撮影」をやってみたら思いのほか面白かったので、今回もその方法を踏襲。

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観音像の前でミカンを食べつつ古地図を見る二人連れ

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それにちなんで、私も観音像の前で昼食を取ることに

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下校途中、観音像に向かう信夫。バックはすぐそばの大谷寺

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現在の大谷寺。門の前の木が大きくなった以外にめぼしい変化はない

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2回ほど登場する観音像のどアップ

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こちらが現在。劣化はほとんど見らず、33年前の画像と区別がつかない

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ただ、観音像自体は変わっていないのだが、どうも周囲の雰囲気が違うと思ったら、何と、右側の上の部分、当時はトンネル状だったのに(上画像参照)、

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現在はその屋根に当たる部分がすっぱり無くなっている。どうしてこんな変化が生じたのか。

そこで入り口の近くにあったお店の人にその理由を尋ねたところ、2005年に宇都宮市の判断で、安全対策工事を行ったという。それ以前はトンネル上部の通行も可能で、地元の人たちは工事には反対だったらしい。たしかに景観的には、工事前の方がはるかに美しい。トンネル部分を何らかの方法で補強して景観を維持するという選択はなかったのだろうか。

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当時大谷市が近隣住民に配布した文書。クリックで拡大

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現在はフェンスで行き止まりになっているが、2005年以前はその先まで歩行可能だった

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さて、今ひとつ注目すべきは上の画像。観音像はミニチュアで、人物を右下に合成してある。実際に大きい観音像があるのに、どうして実写ではないんだろう? ナイター撮影でライティングが大変だったからなのか? …などと思っていたが、

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実際に同じ角度で撮影してみてその理由がわかった。

すでに書いたように、この大谷平和観音は採石場跡の壁面を手彫りで彫って完成させたものである。そういった成り立ちゆえ、御顔などもいささか平板で、みぞおちあたりまでは像として一応独立しているものの、そこから下はレリーフ(浮き彫り)、つまり壁面と一体化しているのである。正面からだとはっきりしないが、斜め前や横から撮影すると、それは一目瞭然だ。

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しかし作品の後半では、ダイナマイトの爆発のため足元の台座が壊れて転倒する場面があり、この物語の中の観音像は、台座部分までが完全に独立した立像でなくてはならない。それゆえ、肩から下がレリーフだということがわからないよう、実写で撮影したのは真正面からのショットのみ、それ以外の場面はすべてミニチュアになったというわけである。

いやあ、現場に行かないとわからないことっていうのはあるんですね〜。だから、寒いからって部屋にこもってばかりいちゃいけないんですよ(誰に言っているんだ)。

平和観音の近くには、やはり特撮や一般のドラマ、映画などで頻繁に使われている大谷資料館があり、そちらにも寄ってみたのだが、平和観音だけでかなり長くなってしまったので、資料館についてはまたの機会に。

※このページのキャプチャ画像は、(株)円谷プロダクションが制作したテレビ映画『ウルトラマン80』第42話「さすが!観音さまは強かった!」(1981)からの引用であり、すべての著作権は円谷プロダクションが保有しています。
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2014年12月14日

日本三大特撮大観音

少し前にこのページで、大船観音が特撮ドラマの「聖地」だという文章を書いたところ、こちらが考えていた以上の反響があった(と言うとオーバーだが、要は「特撮」「シルバー仮面」「大船観音」などのキーワードで検索してこのブログにたどり着く方がそこそこいらっしゃったということ)ので、一念発起して、「日本三大特撮大観音」をすべて参詣してみることにした。

1960〜80年代の、いわゆる昭和時代の特撮ドラマに登場した大観音は、私の知る限り3体しかない(平成以降の特撮はまったくわからないので範疇外)。すなわち、

(1)大船観音 『シルバー仮面(ジャイアント)』15話(1972年3月5日放送)
          『宇宙鉄人キョーダイン』10話(1976年6月4日放送)
(2)高崎白衣大観音 『電子戦隊デンジマン』33話(1980年9月13日放送)
(3)大谷平和観音 『ウルトラマン80』43話(1981年1月28日放送)
             『光戦隊マスクマン』51話(1988年2月20日放送)

の3体、5作品である。
『帰ってきたウルトラマン』27話でも巨大な観音像が出てくるが、これはミニチュアのみで実際のものが登場するわけではないため除外する。

それにしても、おびただしい数の特撮番組が制作されながら、観音像が登場するのがわずかに5作品とは意外なほど少ないが、やはり「そうした番組に信仰の対象を持ち出すのは不謹慎である」という制作側の自主規制によるものだろう。
なお、『マグマ大使』24話には奈良東大寺の盧舎那仏、『ウルトラマン』32話、『宇宙鉄人キョーダイン』11話には鎌倉高徳院の阿弥陀如来が登場するが、これらは「大仏」であって「大観音」ではないため、今回は対象外とする(深い意味はないが、あまりノルマを増やしたくなかったので)。大船観音はすでに参拝を終え記事もアップしているから、あと2箇所を回ればノルマ達成というわけだ。

実は先週、たまたま大宮方面に出かける用事があったため、宇都宮まで足を伸ばし、2箇所目の「聖地」大谷平和観音と晴れて対面してきた。それについて、一昨日から文章を書き始めたのだが、文章そのものがなかなかまとまらない上、画像のセレクトや補正、特撮作品からのキャプチャなど予想以上に時間と手間がかかり、いつまで経っても完成のメドがたたない(泣)。ただでさえ気ぜわしい年末に何でこんなこと始めたんだろう、と正直かなり後悔している。

でも、自分で決めたことなので、どうにかやり遂げるつもりである。一応予告編ということで、1枚だけ写真を貼り付けておく。

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空にそびえる大谷平和観音。全長約26メートル
posted by taku at 18:28| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月26日

消えゆくダイエー

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ダイエー“最後”の株主総会 イオンの完全子会社化承認

流通大手イオン傘下のダイエーは26日、神戸市中央区の神戸ポートピアホテルで臨時株主総会を開いた。ダイエー株を保有する株主にイオン株を割り当てる株式交換を提案、賛成多数で承認した。2015年1月からイオンの完全子会社となり、イオングループの新しい食品スーパーの中核として赤字体質の脱却を図る。

上場企業として一般株主が参加する株主総会は今回が事実上、最後。東京証券取引所1部のダイエー株は12月26日に上場廃止される。イオンの岡田元也社長は今年9月、傘下の食品スーパーを再編する方針を示している。中内功氏(故人)が1957年に創業し、半世紀以上にわたり親しまれてきたダイエーの屋号も、18年度までに消える見通しだ。(後略)
2014年11月26日13時15分 神戸新聞NEXT

先日のフランス映画社に続き、またもなじみの深かった企業がその看板を降ろすことになった。

ダイエーといえば、川崎市多摩区で生まれ育った私としては、小学校以来、向ヶ丘店でずいぶん買い物をした思い出がある。ジーンズ、コート、オリジナルブランド「ブブ」の電気あんか、布団、本棚、そして日々の食料品等々。ダイエーは一回に5,000円以上買い物をすると自宅に配送してくれる「クイック」というサービスを行っているので、つい最近まで、米や酒類などをまとめ買いして届けてもらっていた。去年の秋に引っ越しをしてからは、近所にダイエーがないため、めっきり利用の機会は減ってしまったが、長年にわたって「買い物がしやすいスーパー」という印象を抱いていた。しかし「買い物がしやすい」というのは言い替えれば「いつ行っても混み合っていない」=「品物をゆったり選べる」=「レジも待たされず快適」という意味であり、客としてはそれでよくても、企業としてはアウトなのだろう。かつては「大英帝国」に引っかけて「ダイエー帝国」などと呼ばれ、球団まで所有して栄華を極めていたのだが…。

経済にまったく疎い私には、ダイエー凋落の原因などさっぱりわからず、「やはりこれも時の流れか」などとつぶやくしかない。

しかし、ここで話を終わらせてしまってはあまりに中身が薄いので、先ほど書いた、私にとって大変なじみ深いダイエー向ヶ丘店について少しだけ追加情報を。

何とこの店舗、前に書いた大船観音と同様、かの特撮ドラマ「シルバー仮面(ジャイアント)」の撮影で使われ、画面に登場しているのだ。放送当時はまったく認識していなかったのだが、だいぶあとになって何度か動画を見ているうち、はたと気がついた。

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第22回「弾丸!!ミサイルキック」(1972年4月23日放送)
脚本:上原正三 監督:田村正蔵 特技監督:大木淳
(C)宣弘社


いわばここも、特撮作品のロケ地(聖地)というわけ。早速キャプチャ画像と、現在の店舗写真(2014年11月撮影)とを比較してみよう。

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ひとみ(夏純子)がリカ(北村佳子)の誕生日のプレゼントを買うデパート(?)として登場。建物の外観はほとんど変わっていない。

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店内3階。エスカレーターも40年前のまま。当時は奥に玩具店「キデイランド」があったが、現在は家電のノジマになっている。なお、ここでひとみが買ったプレゼントの人形が、物語の鍵を握る最重要アイテムとなるのだが、内容について触れるとまた長くなりそうなので今回は省略(興味のある方は「弾丸!!ミサイルキック」で検索してみて下さい)。

ちなみにこのダイエー向ヶ丘店は、1977年に第1回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)に入選した、忘れがたき8ミリ映画「ひとかけらの青春」(監督は大久保健吾氏、私は脚本と出演で参加)のロケ地でもある。主人公の中学生カップルがここの文房具売り場で交換日記用のノートを買い、外でソフトクリームを食べる、という場面を撮影したのだ(当然無許可)。たしか1月の終わりの日曜で、大変寒い日だったのを覚えている。そのころの向ヶ丘店は入り口に噴水もあり、地元のヤング(死語)のちょっとしたデートスポットだった。

この思い出多きダイエー向ヶ丘店も、数年後にはイオン向ヶ丘店と名前を変えるのだろうか。
posted by taku at 20:09| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月17日

ナゾー様の素顔を見た!

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(C)第一動画

前回のブログで、アニメ版「黄金バット」の悪の首領「ナゾー様」について、かなり熱く書き連ねてしまったが、その魅力のひとつともいうべきあの美声の持ち主、すなわち島宇志夫についてはわからないことが多い。ネットの百科事典などを見ても、経歴はほとんど記載されておらず、没年も不明となっている。部下のマゾを演じた内海賢二が近年まで旺盛に活動しており、情報も豊富なのとは対照的である。「ナゾー様」を演じただけあって、まさに謎の声優ということか。

しかし、その謎多き島宇志夫について、ひとつ新たな事実が判明した。下の写真は、わが実家の改築に伴い、亡父の所持品を整理していた時に出てきた劇団「雲」の第17回上演パンフレット(1968年8月23日発行)。

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演目は、ユージン・オニール作の「氷屋来る」で、その出演者の中に、何と島宇志夫の名前が!!

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それも、主役である酒場経営者ハリー・ホープを演じた内田稔、ホープの亡き妻の弟エド・モジャーを演じた渥美国泰につづく3番手で、「雲」の中心メンバーであった小池朝雄や仲谷昇よりも先の番手である。すごいぞ島宇志夫!

ここでの島宇志夫はパット・マグロインという元警部補の役。同パンフの「登場人物紹介」によれば「かつて職権を利して羽ぶりをきかせすぎて職を免ぜられ、以来ホープの御気嫌をとりむすんでは、酒をたかって夢みにふける」という人物。そして、パンフには稽古場での写真も載せられており…

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これが素顔のナゾー様=島宇志夫(「黄金バット」放送終了5カ月後のお姿。当時37歳)

いかにも「利権にまみれて職を失い、ふてくされて酒場にたむろする中年男」といった風情である。
この時代の声優は、声優を専業としているわけではなく、俳優が兼業していることがほとんどだったとはいえ、すでに「特別機動捜査隊」や「黄金バット」でお茶の間におなじみとなっていた島宇志夫が、メインに近い役どころで新劇の舞台に立っていたとは予想外であった。

そして気になるのが、名前の前に書かれた「特別参加・造形」の文字。「特別参加」は、劇団「雲」のメンバーではない、外部の俳優が、この公演だけ特別に出演する、という意味だと理解して間違いないと思うが、「造形」というのが理解できない。パンフの<舞台製作>の欄には、金井大道具、高津装飾美術などの名が連なり、そういった業者が舞台美術に関わっていたと思われるが、それ以外に、島宇志夫が何かしらの造形作品を制作し、作品中に登場させたのだろうか。とすれば、彼はそういった技術を修めた人物ということになるのだが…。もしかしたら島宇志夫の経歴を探るヒントのひとつがここに隠されているのかも知れない。

しかし、もうひとつの可能性として、この「造形」というのが、彼が当時所属していた劇団、あるいは事務所の名前であるという考え方も否定できない。何しろ1960年代は、アングラブーム真っ盛りで、かなり意表を突いたネーミングの劇団が多数存在した時代である。劇団「造形」というのがあっても不思議ではない。

と、ここまで書いてから、気になって、「劇団 造形」のキーワードで検索してみたら、あらら、こっちの方が正解であった。早稲田大学演劇博物館のサイトで「劇団造形」の上演記録を見ることができ、それによれば活動期間は1961〜68年。「ぶどうの会」などにも関っていた天野二郎が主に演出を担当し、ウーゴ・ベッティの「牝山羊ヶ島の犯罪」「イレーネに罪はない」、遠藤周作の「海と毒薬」などの作品を上演していた。「海と毒薬」では芸術祭にも参加している。島宇志夫は、この劇団に籍を置く、れっきとした新劇俳優だったのだ。これは私にとっても思いがけない発見であった。こうなると、島宇志夫以外にどういう俳優がこの「劇団造形」に所属していたかも知りたくなってくるが、ネットでは情報を得ることができなかった。今後、折を見てさらに調査してみたいと思う。

それにしても、あらためて劇団「雲」のパンフに載っている俳優陣をながめると、わが愛する特撮作品に出演歴のある顔ぶれが多く、思わずにんまりする。

koriyakitaru03.jpg ←クリックで拡大します。再クリックでさらに拡大

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内田稔は、あまり特撮と縁がないようだが、実は「ジャンボーグA」のサタンゴーネの後半の声がこの人だったりする(ババラスとの掛け合いがおかしい)。あと、「ミラーマン」第17話でも刑事役で顔出し出演しているらしい(筆者は未見)。

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仲谷昇は「ウルトラマンレオ」第31話で特撮デビュー。この時は悪役(子どもたちを眠らせる謎の花咲かじいさん=実はバーミン星人)だったが、その後正義派に転身、「スパイダーマン」のインターポール捜査官・間宮重三、「大戦隊ゴーグルファイブ」の本郷博士、「巨獣特捜ジャスピオン」の宇宙仙人エジンと、70〜80年代の東映特撮ではヒーローのサポート役を好演した。

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名古屋章三谷昇。「ウルトラマンタロウ」のZAT隊長と副隊長がこんなところで共演しているとは! なお三谷昇は「宇宙刑事ギャバン」の魔女キバでも有名。個人的には「電子戦隊デンジマン」第13話のアドバルラー人間態が忘れがたい。

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有川博といえば、近年印象深かったのは「トーソーシン」のCMのお父さんだが、特撮では「風雲ライオン丸」第1話の弾獅子丸の兄・影之進と「超人機メタルダー」の仰木舞の父・信吾(後半のシリアスな展開を引き締めた)。「星獣戦隊ギンガマン」の長老オーギというのもあったが(これはメイクがちょっと…)。

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「宇宙鉄人キョーダイン」第31話でデスガッター人間態を演じ、「流し台に化ける」という前代未聞の作戦で特撮史に名を刻んだ橋爪功

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ご存じコム長官こと西沢利明。「宇宙刑事シリーズ」や「スパイダーマン」のガリアなど、ヒーローを牽引する存在としてなじみ深いが、「怪奇大作戦」第13話では鬼畜な科学者、「コンドールマン」第1話ではサドラー人間態など悪役も。

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最後に神山繁。特撮と言えるか判断の分かれるところだが、「スケバン刑事」でヒロイン・麻宮サキの父を殺害した海槌剛三を演じた。ここからは完全に余談だが、海槌剛三が、劇中の回想シーンで、証拠隠滅のため、侵入した部屋に火を放つという場面がある。ちなみに神山繁は「赤い激流」(宇津井健の友人の医師役で出演)でも、劇中の回想シーンで、証拠隠滅のため、侵入した部屋に火を放つという、まったく同じシチュエーションを演じているため、私の中ではどうしても「神山繁=放火犯」という印象が強い。実際はインテリっぽい役が多い俳優なのだが…。

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これだけの顔ぶれが一堂に会した舞台、是非観てみたかった…

「ナゾー様」役の島宇志夫から、ずいぶんと話が広がってしまったが、あらためてこの顔ぶれをながめると、その多くがすでに故人であるという事実に気づき、いささか悄然とする。ついこの間まで、私は彼らの熱演をブラウン管を通してながめていたはずなのに…。人生の短さをしみじみ思うとともに、自分もそれだけ年を取ったのだなあと改めて感じる秋の終わりである。
posted by taku at 18:42| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月16日

大船観音のこと

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前回このブログで取り上げた大船観音について、もう少し追加を。

ゆめ観音アジアフェスティバル」に参加したのは初めてと書きましたが、大船観音寺そのものへの参詣は、すでに今年の1月に済ませていました。そのころ私は2ヵ月だけ藤沢のマンションに住んでいて、そこからだとバスを使ってわずか20分ほどで大船に出ることができたからです。この観音様は幼少期以来、電車の中から何度となく垣間見て、その温顔には好ましいものを感じていたので、かなり楽しみな参詣でした。そして、実はもうひとつ、私にとっては特別に「聖地巡礼」的な意味もあったのですが、それについては後ほどゆっくり書くことにしましょう。

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藤沢からのバスルート途中の踏切から望む観音像

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駅からは徒歩約10分

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やや急なこの参道を登っていく

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階段を登るにつれ、迫ってくるご尊顔

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正面から対峙。上半身だけで25メートルの威容

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真下から見上げると、かなり印象が変わる

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頭上の化仏でさえ1.5メートルあるという

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バックショット。これだけだと何の写真だかわからないかも

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像の後ろから胎内に入れる

この大船観音の歴史は意外と古く、最初にプロジェクトが立ち上がり、「護国大観音建立会」趣意書が作成されたのが1927(昭和2)年2月。2年後の1929年4月に工事が着手されるものの、世界恐慌やら満洲事変やらの影響で、1934年には工事中断。それからの日本は第二次世界大戦〜敗戦〜占領と混乱期が続き、その間、観音像は未完成のまま23年間(!)も放置されていたそうです。

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20年以上の放置プレイ。観音様もさすがに淋しげ

1954年11月、財団法人「大船観音協会」が発足し、1957年5月、起工式。1960年4月28日、落慶式。その後、観音像を参詣する信者から「信仰の場への移行」を望む声が多くなったため、1981年11月、曹洞宗包括下の「大船観音寺」となり現在に至る…というのが大雑把な流れです(より詳しい沿革はこちら)。

胎内には、この観音像ができるまでの経緯がパネルで展示されており、原型となった30分の1スケールの木像も見ることができます。また、慰霊と平和祈願のための千体仏(現在も制作中)が安置されています。

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原型を制作した彫刻家の山本豊市の言によると、「制作の間じゅう、法華寺本堂の十一面観音の顔が脳裏に現れては消えた」そうですが、当該の仏像はもっと厳粛な風貌で、この観音様のような温顔とはかなり趣(おもむき)が異なるように私には思われるのですが。そして、文化財的な価値は措いて、純粋に表情だけに着目した場合、私は法華寺の十一面観音より、この大船観音の方が好みだったりします。

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山本豊市の手になる観音像の原型

この日も、観音像の胎内を巡ったのち表に出て、さらに左右から何度となくその御顔を仰ぎ見、何枚も何枚も、飽かずにシャッターを切りました。また別の日にも夕暮れの大船駅から、うっとりしながらカメラを向けたこともあります。

この観音像が、見る度に違った表情をのぞかせてくれるその秘密は何なのでしょう。思うに、寺の本堂や宝物館などに安置された仏像は、朝も昼も夕方も夜も、基本的には同じ室内照明で照らされ、いつ観ても違いはありません。一方、この大船観音のような露坐の仏像は、さえぎるもののない空の下で、直接的にその日その時の天気の影響を受け、太陽の向きや翳り具合、あるいは雨や霧などによって、無限にその相貌を変えることができるからではないでしょうか。そう考えると、お天道様の下の仏像というのは、なかなか風流なものだと思えてきます。

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このページのトップ画像と同じ日、同じ場所で夕方に撮ったもの。時間帯でかなり印象が違う

しかし、この土地にはやはり露坐の鎌倉大仏がありますが、どうもあの大仏に関しては、時間や天候でそれほどはっきりした変化を感じたことはないので、やはり像そのものの表情というのも、大きなポイントかも知れません。

さて、文頭で記した「聖地巡礼」ですが、これは、大船観音寺がお寺だから「聖地」というわけではなく、最近、「ウルトラマン」や「仮面ライダー」のロケ地をせっせと訪ね歩く特撮愛好家の方が増えていて、そういう人たちの間では、ロケ地が「聖地」と呼ばれているのです。このごろはそうした聖地巡りのサイトも充実しており(たとえばこれとかこれ)、よくここまで調べあげたものだ、と不精な私はただ感心するばかりですが、この大船観音も、実はそうした意味での「聖地」のひとつだったのです。

ではこの大船観音は、どんな特撮作品でどのように登場するのでしょうか?

実はこれです。

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「シルバー仮面(ジャイアント)」

とはいえ「シルバー仮面」は「ウルトラ」や「ライダー」ほどメジャーな作品ではないため、2014年9月現在、「大船観音」と「シルバー仮面」の両キーワードで検索しても、特撮や地域の掲示板でちらっと語られている程度で、きちんと取り上げているサイトは今のところ見当たりません。しかし私にとって「シルバー仮面」はかなり思い入れのある作品(詳しくはこちら)なので、この場を借りてご紹介してみたいと思います(あくまで観音様を中心に)。

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もうタイトルからしてすごいでしょ?
第15回「怪奇 宇宙菩薩」 脚本:市川森一 監督:山際永三 特技監督:大木淳
1972年3月5日放送


題名にもあるとおり、まさにこの観音菩薩が主役の話ではあるのですが、ドラマでの扱いはトホホ…でした(名称は、大船観音ならぬ鬼姫観音です)。

ある夜、鬼姫観音の近くで原因不明の新幹線転覆事故が発生(劇中では観音像のそばを新幹線が走っている設定になっている)。

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これは実物ではなくミニチュア(念のため)

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御顔がイマイチ似ていないような…

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とはいえ炎上シーンはなかなかの迫力。さすが「呪いの壷」の大木淳!

観音像のすぐ下にあった民家に新幹線が落下し、少年忠二の父と母が死亡。忠二だけは、父に物ぐさを咎められ、家の外に立たされていたため命拾いする。

事故を目撃し、同時に両親を失った忠二は、
「新幹線を転覆させたのはあの観音菩薩だ!」
人殺し観音!
化け物観音!
などの暴言を吐き、さらにはゴムのパチンコでその御顔を狙い撃つなど罰当たりな行動に。

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ここで初めて本物の大船観音が登場!

忠二からの手紙が津山博士(岸田森)の研究所に届き、春日光三(篠田三郎)と津山リカ(北村佳子)が事件調査のため現場に。忠二の証言は真実で、観音は夜になると目から怪光を発し、送電線の電気を吸い取る。新幹線転覆もこの観音の仕業だった。

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怪光を発するミニチュア観音。この角度だと実物の印象に近い

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翌朝、観音を見守る忠二、光三、リカ。これはまぎれもなく大船観音だが…

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ミニチュアに切り変わったと思ったら

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まさかの大爆発。貴重な文化財が…

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その下から ゆるキャラのような宇宙人(ボルト星人)が出現

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駆けつけた春日光二(柴俊夫)がシルバー仮面に変身してボルト星人と戦う

シルバー仮面はボルト星人の電気ショック攻撃にかなりの苦戦を強いられるが、突然の豪雨と春雷の力を借りて、星人を粉砕する。電気をエネルギーにしていた悪者が電気によって成敗されるという皮肉な結末。

津山博士は「春雷も菩薩様のおかげかね」と言い、リカは「宇宙人は菩薩様を悪いことに利用したから罰が当たったのよ」と続ける(前半では「人殺し」だの「化け物」だのさんざんな言われようだったから、フォローの意味もあるのかも)。そして寺に預けられた忠二も、観音菩薩の功徳で、以前の物ぐさを改め仏道修行に励み、将来は偉いお坊さんになるか、と思いきや、物ぐさ癖は直っていなかった…。

以上がざっくりしたあらすじで、物語としてはなかなかよくできています(さすがは市川森一)。

特にこの話は、1年後に「ウルトラマンタロウ」で主役を演じることになる篠田三郎のメイン回で、とにかく彼のセリフも動きも表情も全部いい! 忠二の手紙を読んでも半信半疑の津山博士や兄弟たちに向かって、
「オレたちの父さんが宇宙人に殺されたんだって訴えて歩いたころ、何人の人が信じてくれた? ほとんどの人々からキチガイ扱いされたじゃないか。宇宙人と、観音様の違いだけだよ」
と、初期設定をきちんとふまえた発言して調査に出かけるくだりや、ニッケル爆弾を作って観音菩薩に復讐しようと企てる忠二に対し、
「敵討ちなんてことを考えていたら、君の一生は台無しになってしまうんだよ」
と諭す場面などは、今見ても感涙ものです。特に敵討ち云々のセリフは、
「怨みを以て怨みに応ぜば怨みやまず。徳を以て怨みに応ぜば怨みすなわち尽く」
という釈迦の箴言に通じるものがあり(ゆめ観音フェスティバルの冒頭のあいさつでも耳にした言葉)、大船観音との相性もぴったりではないでしょうか。

とは言うものの、ラストでの菩薩様礼賛もセリフだけですし、ボルト星人にさんざん利用されたあげく破壊された観音像については、そのまま完全放置。まあこういうのは特撮ものの宿命ではありますが、実際の観音像は、実に30年以上の歳月と多くの人の労力と浄財の結晶であるわけで、よくこの内容で、当時の管理団体だった大船観音協会が撮影許可を出したものだと不思議に思います。
「あのころはまだ寺院ではなかったからいろいろと寛大だったのか? いや、それにしても…」などと考えつつ映像を見返してみると、オープニングのどこにも「撮影協力:大船観音協会」というクレジットが出て来ません。同時期に撮影された第14回「白銀の恐怖」では「協力:上越国際スキー場」と、きちんとタイアップ先がクレジットされているというのに…。

となると、これはもしやゲリラ(無許可)撮影? たしかに、実際の大船観音が映るのは数カットで、ほとんどはミニチュアセットですから、それも不可能ではありません。でも、本物にかなり近いミニチュアを作ったり、俳優を呼んで現地でのロケを行っているのに完全なゲリラというのは考えにくく、謎は深まるばかりです。あと考えられるのは、「非公式」な協力なので、あえてクレジットしなかったということですが…。

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観音様はおそらく一部始終をご存知なのでしょう

それにしても、世界平和希求の象徴ともいうべき大船の白衣観音が、ドラマ中で「人殺し観音」とののしられ、あげくの果てに宇宙人によって爆破されていたとは…。
しかしこれも今は昔、すでに42年も前のお話です。

※このページのキャプチャ画像は、(株)宣弘社が制作したテレビ映画「シルバー仮面」(1972)からの引用であり、すべての著作権は宣弘社が保有しています。

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posted by taku at 19:46| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月09日

解かれた封印

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来月から年末にかけ、実家の全面改築を行うことになりました。2階は表具や畳の取替えと屋根の葺き替えだけですが、1階は少し増築して間取りもすべて変えることになり、そうなると当然、押入れの中の物なんかも全部一回外に出さなくてはなりません。ずいぶん面倒なことになったと思いつつ、数日前から実家に日参して、荷物を段ボール箱に移す作業を進めています。

ちなみに私の実家は、1967年(私が4歳の時)に亡父が購入したもので、今年で築47年。私自身は20代の後半に一応独立し、東京・神奈川近郊を転々として今に至りますが、幼少期から20代なかばまでの「所有物」はほぼすべて、実家1階の閉め切った押入れの中で、何十年という永い眠りについていました。

それが今回の改築のため、封印はもろくも解かれ、眠りを脅かされた「彼ら」は、うず高く積み重なった埃を巻き上げつつ、次々にその姿を現したのです。

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この押入れから、出るわ出るわ…

ウルトラマンの「ミイラの叫び」や「悪魔はふたたび」では、大昔の遺物を現代の人間が掘り返してその眠りを覚ました(封印を解いた)結果、「ミイラの叫び」ではドドンゴが、「悪魔はふたたび」ではアボラスとバニラが現れて町はパニックになります。これらの作品は「昔からのものはそのままそっとしておいた方がいい」という教訓話のようにも受け取れるのですが、私も、そっとしておいた方がよかった昔のものをほじくり返した結果、眠っていた特撮魂が蘇ってしまい、ここ数日、どうにも落ち着かない、もっというなら「物狂おしい」精神状態に陥っています。

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ちなみにテレビでは「3億5000年前」です

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2点とも現代コミクス「ウルトラマン」第11話より。漫画は井上英沖

とはいえ、その方面のマニアにとっては、それなりに貴重なものもあると思うので、この場を借りて、数十年ぶりに白日の元にさらされた「お宝」をご紹介していきたいと思います。

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現代コミクス ウルトラマン(1966〜67)
先ほど引用した、現代芸術社発行の月刊誌。ウルトラマンの漫画2本に読み物、ふろくなど。漫画執筆陣は井上英沖、岸本修、加来あきら。このほかにも数冊あるが、保存状態はあまりよくない。

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マルサン スパイダーガン(1967)
アラシ隊員の愛機・スパイダーショットの形をしているが、中にはシャンプーのスプレー缶が入っていて、引き金を引くとシャンプーが出る。幼稚園入園くらいまで、これで頭を洗っていた(と思う)。

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キネマ旬報 世界怪物怪獣大全集(1967)
「ルポルタージュ円谷プロ」には金城哲夫、成田亨ら、「若い」スタッフたちの貴重なスナップが。座談会「怪獣映画は僕らが作る」も資料的価値高し。

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講談社のテレビ絵本 ウルトラセブン かいじゅうずかんのまき(1967)
ネットで調べてびっくり! あまり現存していない絵本らしく、思わぬ高値がついていた。スペル星人のカラー全身写真が載っているのも人気の秘密か。

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怪獣ウルトラ図鑑(1968)
秋田書店刊。2012年に復刻されて話題になった、かつての大ベストセラー。私の手元にあったのは1970年5月の第19版で、スペル星人からガッツ星人に記事が差し替えられる前のもの。

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ウルトラ怪獣大百科(1969)
誤植の多さで定評(?)のあるエルムの図鑑。1969年発行にもかかわらず、収載されているウルトラセブンの怪獣宇宙人は初期のみ。しかしながら「ダーク・ゾーン」のノベライズはシナリオを元にした細密な描写で読みごたえあり。

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仮面ライダー図鑑 たのしい幼稚園新案カード(1971)
ヒトデンジャーがヒトデライラ、カニバブラーがカニバブルなど、企画段階のネーミングで掲載されているものも。またヒドラーゲン、マクロファンデス、タコおとこ、ワニおとこなど、本編には登場しなかったオリジナル怪人が多数収載されているのが興味深い。

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仮面ライダーカード(1972〜73)
おなじみ、カルビーの仮面ライダースナックのおまけ。従兄弟からダブりのカードをもらったもので、レア度はさほど高くない。全35枚。

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帰ってきたウルトラマン ウルトラ大怪獣カレンダー(1972)
スーツアクター・きくち英一氏のサイン入り。月替わり全13枚。表紙しか残っていないのが惜しまれる。
※きくち英一氏演じる「帰ってきたウルトラマン」の撮影スタジオを訪問した時の様子はこちら

というわけで、いろいろご披露してきましたが、押入れの整理は現在も継続中なので、また珍しいものが出てきたら、随時、紹介していきたいと思います。
posted by taku at 21:01| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月12日

田中秀夫監督追悼

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「スケバン刑事」関連の訃報が続く。去る6日には原作者の和田慎二が亡くなっているのが報じられ、そして9日には、テレビシリーズのメイン監督で二本の劇場版も手がけた田中秀夫が胃がんで逝去したという。ついこの間、暗闇指令を演じた長門裕之の追悼文を書いたばかりだというのに…。

田中秀夫といえば、「宇宙刑事」シリーズ(1982〜85年)と「スケバン刑事」シリーズ(1985〜87年)が双璧である。「宇宙刑事」ではギャバン、シャリバン、シャイダーとメイン監督を務め、「シャイダー」の劇場版もやはり二本担当している。「シャイダー」が終了した数カ月後に「スケバン刑事」の現場に入り、舞台を異次元空間から学園に移して異色の刑事ドラマを監督し続けた。その演出は正攻法でわかりやすく、細かいカットを積み重ねるためテンポがよく密度も高い。30分ドラマのメイン監督として申し分ない資質を持った人だったと思う。その反面、斉藤由貴がヒロインを務めたパート1では、第1、2話の監督を務めた坂本太郎が、かなりクセのある、恨みや情念を前面に押し出した演出をする人だっただけに、坂本演出と田中演出のタッチの違いが著しく、全体の不調和を生むという弊害もあった。しかし、南野陽子のパート2からは完全に田中がメイン監督となり、復讐譚ではありつつも、エンタテインメントを基調としたシリーズのカラーは一貫したものになっていく(もっともこのカラーについては、パート1のメイン脚本を務めた杉村のぼる[升]と、パート2のメインだった土屋斗紀雄との資質の違いによるところも大きいのだが)。

何はともあれ、私の印象では、田中秀夫といえば、80年代における東映テレビ部の代表的監督という存在だったので、新聞の訃報で田中が山本嘉次郎監督に師事していたというのを読み、「何で?」と首を傾げてしまった。山本嘉次郎といえば、戦前からの東宝の名監督で、あの黒澤明の師匠として知られる人物である。黒澤の自伝的著書『蝦蟇の油』には、山本が黒澤明という監督の誕生にどれだけ貢献したか、言い換えるなら、黒澤にとってどれだけ素晴らしい映画の師であったかが連綿と綴られている(私は黒澤の映画を観て泣いたことは一度もないが、この本の、とりわけ山本と黒澤の師弟愛の描写には何度も泣かされた)。そんな、黒澤にとって唯一無二の存在である山本に、田中も師事していたとは!

手元にあった『スケバン刑事研究』(1987年・バンダイ)をめくると、田中のインタビューページの略歴には「58年に東宝へ入り、山本嘉次郎監督に師事する。その後、60年に東映テレビプロに移り、当時の人気番組『特別機動捜査隊』の助監督となる。64年、同番組で監督に昇進」とある。1958年といえば、山本が山口淑子(李香蘭)の引退記念作品「東京の休日」を撮った年である。とすると、その現場に若き日の田中もサードかフォースの助監督でついていたのかも知れない。しかし田中が東宝に籍を置いたのはわずか2年。その後東映テレビプロに移籍したのは、田中の将来を思いやる山本の薦めによるものだったらしい(1960年代、娯楽の首座は映画からテレビへと移り変わる)。だが、2年間の東宝時代に、田中が山本から「活動屋」としての基本を叩き込まれたのは間違いないだろう。『スケバン刑事研究』のインタビュー後半で田中は、劇場版の「スケバン刑事」が大ヒットしたことにふれて、次のように語っている。

ファンのみなさんのおかげで、ヒットさせてもらって……正直、公開するまでは不安だったんですよ。果たしてお客さんは入ってくれるだろうか……と。だけど結果としてあれだけの成績を残したのは、『劇場に見に来て損した』とだけは思わせない映画になっていたからではないでしょうか。技術的なことを言えば、テレビよりもワイドな画面を使いこなすことは難しかったんですが、一方先程お話したような、短かいカット割は避けました。平気で一分半くらいカメラを回しつづけたシーンもあって、陽子たち出演者には、テレビ以上のボルテージの芝居を要求したことも確かですね。

田中のフィルモグラフィは、その9割以上がテレビドラマだが、それだけに、劇場版に賭ける熱い思いが伝わってくる。今ではテレビも映画もネット配信も、何やら混然としてきているが、この年代の映画人にはまだ「活動屋」としてのプライドがあったのである。

「スケバン刑事」シリーズが制作されていた1985〜87年はちょうど私の大学時代で、そのころは映画サークルで次々に8ミリ映画を作っていた。恥ずかしい話だが、当時の私はゴダールもトリュフォーもロメールも小津も成瀬もほとんど見ておらず、作品の参考にするのはもっぱら東映特撮と刑事ドラマであった。したがって特撮であり刑事ドラマでもある「スケバン刑事」などはまさにバイブルといってもよく、構図やカット割、効果音、タイトルの出し方に至るまでずいぶん参考にさせてもらったものである。その意味で、田中秀夫監督は私の遥かなる師といっても過言ではない。数多の作品を思い返しつつ、謹んでご冥福をお祈りしたい。

 最近、人が亡くなった時にブログを書くことが多くなっている。なんだか葬式を喜ぶ坊主のようで気がひけるが、どうしてそうなってしまうのかつらつら考えるに、自分が生きてきた時代を振り返り、考察するためには「きっかけ」が必要であり、ひとつの歴史が完結する「人の死」というものがその「きっかけ」として一番無理がないからではないかという結論に至った。もっと端的にいうなら、亡くなった人のことについてあれこれ文字にしたくなるくらい、自分も年を重ねたということなのかも知れない。
posted by taku at 09:13| 特撮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする