2021年05月08日

ルリ子をめぐる冒険(9)映画「緑はるかに」公開まで

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浅丘ルリ子(本名:浅井信子)が「緑はるかに」のルリ子役に応募した時の写真。
読売新聞紙上での募集告知が1954年8月6日、締切は8月31日。この写真も8月に撮影したようで、かなり日焼けしている。

さて、今日、5月8日は、今からちょうど66年前に映画「緑はるかに」がロードショー公開を果たした記念すべき日である。というわけで、いつも以上に画像多めで話を進めていこう。

まずは前回のつづき。『ジュニアそれいゆ』1955年早春号から、中原淳一デザインによるルリ子の衣裳の数々を見ていこう。

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この映画の中の衣裳は、中原淳一先生が受け持たれています。ルリコのお母さまとか、他の大人の方たちのも中原先生のデザインですが、ここではルリコのドレスを御紹介しましょう。
「緑はるかに」は日活初のテクニカラー(天然色)の映画なので、ドレスの色彩にも中原先生はいろいろ心をくばられたようです。連載された物語では、ルリコのお父さまは病気の場面しか出ていませんが、映画では幻想の場面が多くあって、ルリコがお父さまと一しょに暮らしていた頃の愉しい美しいシーンが沢山見られるということです。(※実際はほんの少しです)
浅丘さんは、本当は中学二年生なのですが、映画では小学校六年のルリコです。それでこれらのドレスも子供っぽく見えますが、これはスカートをそのまま膝の下位まで長くするだけで中学から高校までの方たちにも似合うデザインです。(後略)

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「これはずっと旅をしている時に着ているジャンパー・スカート。下にスウェターを着るのです」……中原先生がデザイン画をかかれて、ルリコさんに説明していられます。或る日の撮影所での打合わせの一コマ。

当時、女学生の憧れだった中原淳一デザインの洋服を着られるというのは、大変な栄誉だったに違いない。浅丘ルリ子自身、『徹子の部屋』で、「(ルリ子役に)受かったことよりも、中原先生のお洋服が着られることの方が嬉しくって。すごく可愛いお服なんですよね」と語っている。

なお、「旅をしている時に着ているジャンパー・スカート」の写真は『ジュニアそれいゆ』には掲載されていないが、要するにこれである。

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このキャプチャ画像でわかるように、ジャンパースカートはライトグレー、セーターは薄いピンクなのだが、どういうわけかDVDのジャケット写真では、ジャンパースカートはスカイブルー、セーターはクリーム色になっている。

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恐らく白黒写真に後から着色したものと思われるが、どうして映画オリジナルのカラーリングにしなかったのだろう。

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ピンクのウールで作ったこのワンピースは、最初の場面に着る普段着です。衿にそった小さな丸いヨークは、可愛いギャザーを両側にちょっととって、胸のふくらみを出しています。ヨークと身頃の境を共布のループで押え、そのギャザーの上に飾られた二つのボウは、蝶々のようで可愛い。

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「小さな丸いヨーク」とか「可愛いギャザー」とか「共布のループ」とか、何のことだかさっぱりわからないが、映画だとこんな感じ。

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これはまだお父様がお家にいらっしゃった頃、いろいろの花が一杯咲いている春のお庭で遊んでいた時の回想の場面で着る、薄いグレーのジャンパースカートです。胸に飾られた花のアップリケは、ピンク、クリーム、ブルーといった淡い色のものばかりで、ピッタリさせずに、浮き上ったようにつけます。

ということなのだが、この「春のお庭で遊んでいた時の回想の場面」というのは映画本編のどこにも存在しない。撮影したのに尺の関係でカットされたか、それとも撮影さえされなかったのか……。もはや永遠の謎である。

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これもやはり楽しかった頃の回想の場面のクリスマスパーティの時に着るものです。真黒で張りのあるタフタで作った、地味な色合いのこの服は、ふっくらふくらんだスカート、ケープ風の肩を覆う様なカラー、スカート丈までの長いビロードのリボンによって、ジュニアらしい可愛いカクテルドレスとなりました。

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はいはい、このシーンはたしかにあったのだけど、座っている姿が引きで一瞬映っただけで、バストアップのショットは人形やプレゼントを抱えているためドレスはほとんど見えず。素敵なデザインなのに、実にもったいない。もう少し撮り方を考えて欲しかった。井上梅次監督はこれら一連の衣裳が、天下の中原淳一デザインだということを本当にわかっていたのだろうか?

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美しいスミレ色の薄手のウールでつくったこの服は、最後の場面で、お父様が無事にお帰りになって、一家揃って愈々ルリコに幸わせが訪れた時に着るものです。胸に飾ったボウは、濃い紫のグログランリボンです。後も前も浮いてつけられた肩幅一杯の真白いカラーは、取りはずしが出来るようにしてもいいでしょう。

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やっとまともにフルショットで見えるワンピースが……、と言いたいところだが、これも、映ったのはごくごく短い時間(ちなみに、白黒スチールでは胸元の大きなリボンがポイントだが、劇中ではかなり細身なものに変更されている)。

以上が中原淳一デザインによるルリ子衣裳のすべてである。1着1着コンセプチュアルに、丁寧にデザインされているのに、それがあまりうまく映画に活かされていないのはいささか残念に思う。

『ジュニアそれいゆ』には「ルリコ人形」の作り方も載っている。

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中原淳一いわく、

「緑はるかに」のルリコは、苦しさの中にもやさしい美しい気持を失わない、本当に良い少女です。さしえを画く時も、いつもそういう少女をあらわしたいと思っていました。(後略)

たしかに原作のルリ子は、映画の何倍も苦しい目、辛い目に遭ってきた。原作のストーリーを10ヶ月間追いかけてきた中原は、映画のルリ子が迎えた甘すぎるラストをどう感じたのだろう。

さて、日活の記録によると、映画「緑はるかに」は1954年のクリスマスイブ(12月24日)にクランクインし、1955年2月12日にクランクアップしたとのこと。90分という尺の割に撮影が長期間なのは、いかなる理由によるのだろう。撮影終了間際、読売新聞には次のような記事が載った。

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日活 緑はるかに 完成迫る

本紙に連載され好評を得た北条誠作「緑はるかに」は、日活初の色彩作品として最後の追い込みに入っているが、井上梅次監督の配慮から、子供たちに美しい夢を誘うようなみなみならぬ努力がつづけられている。(中略)
中原淳一考証の衣装、木村威夫の美術も国産色彩のコニカラー・フィルムに美しくうつるよう研究された。森の中、ルリ子の家、ショウ乳ドウ(鍾乳洞)内の科学研究所、幻想に出てくる月の世界、サーカスの内部セットなど文字通り目もまばゆい色のシンフォニーで、しかもうやわらかい感じが出るよう原色に白をまぜたハーフ・トーン(中間色の調子)が使われた。父親のとじこめられる科学研究所や幻想の月の世界もすべてこれビニールとナイロン製といったきらびやかなもので、おとぎの国にまよいこませようと努力している。
こうして去年の十二月末撮影に入ってからすでに五ステージ二十四セットを使い、セット数だけでも日活撮影所再開以来の最高記録といわれる。
読売新聞1955年2月10日夕刊

これを読む限り、慣れないコニカラー(3色分離ネガ)の撮影に手間取ったことと、美術セットの作り込みや組み換えに時間を取られたことが、長丁場の理由のようだ。それに加え、メインの出演者5人が義務教育期間中であることも、少なからず進行に影響したように思われる。

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こちらは同時期の「家庭よみうり」の記事。水の江滝子おばさん、という呼び方がおかしい。

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貴重な現場スチール。洞窟で初めてルリ子と三人組(チビ真、デブ、ノッポ)が出会うシーンを演出する井上梅次監督(後姿)。「キネマ旬報」3月上旬号より。

年度が代わり、4月9日の夕刊児童欄には、ついに映画の完成を知らせる記事が。

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美しい色、楽しい物語
えい画になった「緑はるかに」

日活でさつえいしていました、本紙連さいの「緑はるかに」(北条誠作)のえい画ができ上がりました。総天然色で、あらすじは、お父さまの研究のひみつが入っているオルゴールを中心に(中略)、ついに悪ものたちはつかまって、ルリ子は、お父さまとお母さまにめぐりあい、チビ真たちにも、幸福な日がおとずれます。
読売新聞1955年4月9日夕刊

公開1ヶ月前にもかかわらず、ネタバレ全開である。この時代はあまりそういうことは気にしなかったのだろうか。

約1週間後の4月17日には、「子供の日記念・児童映画会」の囲みで、試写会開催の告知記事。

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5月1日(日)午前10時、午後0時半、3時
池袋 豊島公会堂

◇招待方法◇ 小・中学校生徒に限り一校5名以上、20名以下まで招待します。申込み希望者は各校引率教員が往復ハガキに学校名、参加人数記入のうえ京橋局区内読売新聞社企画部あて申込んで下さい。締切(4月)22日までに必着のこと。抽選により各回900名計2,700名を招待します。

対象が小・中学校生のため、生徒個人ではなく、引率する教師が応募するという形になっている。これは言うまでもなくクチコミ宣伝のための一般試写なのだが、それにしても2,700名を招待というのは、結構な太っ腹である。

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5月4日の夕刊広告。左には大映のカラー映画「楊貴妃」が。大女優・京マチ子vs新人女優・浅丘ルリ子という構図。この時点では「緑はるかに」は5月10日からの公開を予定していたようだ。

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5月6日の夕刊広告。スペースの関係か、チビ真がハブられている。

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5月7日、公開前日の夕刊広告。今度はデブがハブられてしまう。メインのルリ子以外に4人も配置するのは難しかったのだろうか。

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よく見ると、ノッポの足元に「漫画本 トモブックス社」の文字が。

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なんと、公開に先立つ4月5日には、トモブック社より「映画物語シリーズ1 緑はるかに」と題したコミカライズも刊行されていたのである(画・わちさんぺい)。

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この漫画版、表紙と裏表紙、そして中扉まで映画版のスチールを使っているため、てっきり映画版のストーリーかと思いきや……

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中原淳一の魅力的な挿絵とは似ても似つかぬ、なんとも牧歌的なタッチの絵にまず軽いめまいを覚え……

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しかもあろうことか、ストーリーは完全に新聞連載の原作版を踏襲しているのだ!
これは、ルリ子とマミ子が「スミレ劇団」で悲惨な巡業生活を送っているところ。

映画版を期待して手に取った多くの少年少女も、これには肩透かしを食らった気分になったのではないだろうか。

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さて、話を映画版に戻そう。今も昔も興行界の慣例は変わらないようで、初日の8日には早速、「満員御礼」「スゴイ爆発的人気で日活系上映中!」の広告(追いパブ)が。個人的にはお隣りの資生堂の香水の広告も気になる。余白の美と呼ぶべきか…(値段が150円から18,000円ていうのも幅がすごいね)。

時を同じくして読売新聞系列の「週刊読売」に映画評が載るが、これが、思ったよりも辛口だった。

緑はるかに 日活作品 児童向きの色彩編

読売新聞に連載された北条誠作、中原淳一画のコドモ向き読物を原作として、女性プロデューサーに再生した水の江滝子がコニ・カラーを使用して製作した天然色作品。だから、あくまで観客の対象を小学校低学年に向けて、井上梅次脚本・監督も、つとめてその線を守ろうと努力している。(中略)
主役に選ばれた浅丘ルリ子も達者な児童劇団のワキ役に助けられ、まずまず、さしたる破たんはみせない。むしろおとなの俳優のまずさ、わざとらしさの方が目ざわりになるくらいである。ただ、前後の貝谷バレー団が出演する夢の場面は、コドモたちの幻想をさそうよりも、音楽にマッチしない動きや、白っぽけた色彩が、かえってブチこわしになりはしまいかと思うのだが、どんなものであろう。コドモたちの目もディズニー・プロ作品で案外こえているのではあるまいか。
コニ・カラーも前作の東映作品「日輪」とくらべたら大進歩のあとを、その技術的な所置にみとめるが、大映のイーストマン・カラーを念頭におくと、まだまだ研究の余地は十分にある。
週刊読売 1955年20号

ひとつ気になったのが、カラー作品としてどうか、という視点が前面に出ていること。しかし、これは当時の状況を考えるとやむを得ないのかも知れない。同年3月上旬の「キネマ旬報」の作品紹介記事にも、

この映画は今日本を風靡しているイーストマンカラーを使用せず、コニカラーシステムを使用して撮影されるが、国産カラーシステムの成果を知る意味で、作品そのものとはちがった大きな興味が持たれる作品である。

という一文があり、この時期、日本映画界は白黒からカラーへと、大きな時代の転換期を迎えていたことがわかる。

ちなみに、日本における映画会社ごとの最初のカラー作品は以下のとおり。

松竹 「カルメン故郷に帰る」(1951.3.21公開 フジカラー)
東宝 「花の中の娘たち」(1953.9.15公開 フジカラー)
大映 「地獄門」(1953.10.31公開 イーストマンカラー)
東映 「日輪」(1953.11.18公開 コニカラー)
新東宝 「ハワイ珍道中」(1954.9.14公開 イーストマンカラー)
日活 「緑はるかに」(1955.5.8公開 コニカラー)

ただ、厳密に言えば、日活は「緑はるかに」の前年の1954年に「白き神々の座」という山岳記録映画をイーストマンカラーで撮影、11月23日に公開している。だから、日活初のカラーは「白き神々の座」ということになるのだが、劇映画というカテゴリにおいては、「緑はるかに」が第一作で間違いはない。

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ここからは「緑はるかに」関連ビジュアル。まずはポスター2種。

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劇場配布用のチラシ。

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プレスシート(報道関係や業界向けの配布資料)。

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このプレスシートには、井上梅次監督の「コニ・カラーについて」という文章が掲載されているが、内容はまさに題名のごとしで、

その色の調子は、イーストマンよりはずっとハーフ・トーン(中間色)が出ます。つまりどぎつい色よりも自然の儘の調子が出るわけです。

などと、映画の内容はそっちのけ、ほぼテクニカルな説明に終始している。カメラマンや照明、美術などの技術スタッフではなく、監督みずからがこういう文章を書いていることからも、当時のカラー映画への関心の高さがうかがわれる。

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「緑はるかに」パンフレット(一般販売用)。

井上監督みずからが、「コニカラーはハーフ・トーン(中間色)が…」「どぎつい色よりも自然の調子が…」と書いているのに、それをまったく顧みない着色センス。特にこのパンフはひどい。ポスターやプレスシートはそれなりだったのに、これはどうしたことだろう。

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このまゆげはもはやギャグの域。

こうして次世代の期待を担ったコニカラーだったが、フジカラーやイーストマンの勢いに押され、間もなく映画の世界から淘汰されてしまう。そのため、コニカラー独自の3色分離ネガに対応できる現像所はなくなり、「緑はるかに」も長らくモノクロのプリントしかない状態が続いていたが、1990年代に東京国立近代美術館フィルムセンター(現・国立映画アーカイブ)がオリジナルネガからカラー版を復元、そのおかげで現在も、DVDなどで当時の色彩をしのぶことができる。

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長々続いた「緑はるかに」小論も、一応次回で完結としたい。最後は、メディアミックスとしての「緑はるかに」、そして、「ルリ子」のその後などについて書いていく予定。
posted by taku at 14:45| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月14日

ルリ子をめぐる冒険(4)映画「緑はるかに」(後)

前回までのあらすじ

小学6年生のルリ子は、北海道にいる科学者の父が病気になったと聞き、母とともに迎えの車に乗ったが、それは父の研究の秘密を盗もうとする某国スパイ一味の罠だった。両親とともに奥多摩にある研究所に捕らえられたルリ子は、発明の秘密を隠したオルゴールを瀕死の父から託され、どうにか脱出。孤児院から抜け出してきたという三人組と行動をともにすることになるが、スパイ一味に追われ、オルゴールを橋から川に落としてしまう。失われたオルゴールを求めて一行は東京に向かい、そして古道具屋の店先でそれを発見。靴磨きをして金を貯め、オルゴールを買い戻そうとするが…


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5日が経って無事に1500円が貯まり、5人はいさんで古道具屋に向かうが、ショーウィンドーにオルゴールの姿はなかった。店主に聞くと、今朝、「27、8歳くらいのキレイな奥さん」に売ったと言う(妙に具体的だ)。

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ルリ子たちが気を落として店を出た直後、大入道とビッコが店を訪れる。緑のオルゴールが店先に並んでいたことを聞きつけてやって来たのだ。それがすでに売れてしまったこと、そして、ルリ子たちも買いに来ていたことを店主から聞いた2人はすぐそれを田沢に報告。田沢は、
「いい手があるぞ。オルゴールかルリ子か、どっちかが引っかかる罠だ」
と2人に耳打ちする。

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田沢の命を受けた大入道とビッコがピエロの格好で、
「明日、サーカスに緑のオルゴールをご持参の方には、5万円を差し上げます」
と歌いながら町中を宣伝して回る(フランキーを出すならこのシーンでもよかったんじゃないかと思ったが、それだとフランキーも直接の共犯になるから無理だったのだろうか?)。それにしてもこの時代に5万円とは…。大変な太っ腹である。

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その話は5人の耳にも届いたが、チビ真は「あの広告を見てサーカスを調べに行ったら大入道がいた」と報告、ルリ子たちは、「ユニオンサーカス」が田沢一味の本拠地であることを知る。このままでは緑のオルゴールは田沢たちの手にわたってしまうかも知れない。しかし、顔を知られている自分たちがうっかり出て行けば捕まってしまう…。

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チビ真は、自分が以前いた孤児院「光の家」に行き(どう見ても絵です)、

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仲間たちに応援を要請(子供たちが浴衣姿で坊主刈りか坊ちゃん刈りなのが時代を感じさせる)。

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翌日、「ユニオンサーカス」の前には、オルゴールを持った子供たちの長蛇の列が。

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列には、面を被り顔を隠したルリ子、三人組とマミ子、そして「光の家」の孤児たちも混じっていた。

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そんな中、並んでいる子供の顔をうかがおうとする27、8歳くらいの婦人が…

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楽屋で田沢は、集まったオルゴールを調べていたが、どれもこれも偽物。

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だが、最後の最後に本物を発見する。
「これだ!」

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それを廊下で聞いていたチビ真たちは、楽屋に飛び込み、

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田沢の手からオルゴールを奪い取る。

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ルリ子と三人組、「光の家」孤児たちと田沢一味との、サーカス小屋での大乱闘。
ついにノッポからルリ子に、オルゴールが手渡された!

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そんな中、先ほどの婦人がマミ子を見つけ抱きしめる。彼女こそマミ子の母親だった。

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ドタバタの乱戦が続く中、警官隊がなだれ込んで来る。「光の家」から子供が集団脱走してサーカスに向かったとの通報を受け出動して来たのだ。

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警官隊の隊長は山田禅二(当時40歳)。「特別機動捜査隊」の田中係長など、叩き上げの刑事役がよく似合う俳優だが、こんなに昔から警官役だったのか、と思わず頬がゆるむ。

チビ真は隊長に、「こいつらは外国のスパイです」と告げるが、田沢は、「こいつらこそスリや不良です」とうそぶき、また、ルリ子の手にあるオルゴールは自分のものだから返させて欲しいと要請する。ルリ子は思わず激昂し、

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「いいえ! この中には大事な秘密が隠されています。ほんとにこいつらはスパイなんです!」
と、この作品で初めて、感情をあらわにした金切り声をあげるが、この声のトーンは、明らかに後年の浅丘ルリ子に通じるものがあった。

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そんなルリ子の熱弁も空しく、隊長は田沢に言われるまま、ルリ子のオルゴールに手をかけるが、

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その時「隊長、奥に木村博士が」という部下の声。

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そしてルリ子の父母、まさかの再登場。

え、え、え???

完全に、口(くち)ポカーン状態。あんたたち死んだはずでしょう? それなのに、ちゃんと立って歩いてますよ。

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「お父様、お母様!」
抱きつくルリ子。感激の再会、と言うのとは明らかに違う、強烈な違和感。

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木村博士ははっきりした口調で隊長に「この男たちを捕まえてくれ」と伝え、田沢らはあえなく逮捕される。

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「お父様も、お母様も、生きてらっしゃったのね」
「秘密を言えと毎日責められてね、今度こそダメかと思ったよ」
と言いつつ、あの時よりずいぶん元気そうな木村博士。奇跡の回復力。
三人組は自己紹介し、博士は、
「ルリ子が大変にお世話になったようだね」
と礼を言う(あんた、なんで知ってるの?)。

うーん。これはダメなんじゃないかなあ。子供向けだからいいの? こういうことをやるから「子供だまし」って言われるんじゃないの? いろいろと大変納得の行かないクライマックスである。

さらにここからも、いささか首を傾げる展開。

木村博士はチビ真から渡されたオルゴールの蓋を開けるが、流れてきたメロディが違う。ルリ子は「あ! これじゃない!」と顔色を変える。これだけ苦労してきたのに、偽物だったのか…と肩を落とす一同。

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その時、本物のオルゴールのメロディが聞こえて来る。

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曲の流れている園長室に向かったルリ子が見たのは、母親とともに緑のオルゴールに耳を傾けているマミ子の姿だった。

マミ子の母は、マミ子が一人で東京に向かったという手紙が届いたので、毎日、子供が集まりそうな所を探していたのだと言う。有島店主の言っていた、「27、8歳のきれいな奥さん」とはこの母親のことだったのだ。母親はオルゴール好きなマミ子のために、これを買い求めたというわけ。

これまでの事情を理解したマミ子は、そのオルゴールをすぐルリ子に渡す。そしてルリ子から博士の手に。

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博士はオルゴールの蓋の鏡をはずし、方程式らしきものが書かれた数枚のメモを取り出す。それにしても鏡の裏とはずいぶん単純な隠し方である。その程度の細工なら、以前、田沢たちがオルゴールを入念に調べた時に発見されそうなものだが…。ちなみに原作のオルゴールの秘密はこれよりずっと「高度」であるが、それについては後述する。

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木村博士は警官隊の隊長からライターを借りると、なんと、そのメモに火をつけて燃やしてしまう。どんな研究だったのかは、結局最後までわからずじまい。
「これは永久に悪い人たちに追われる秘密なんです。焼いた方がいいんですよ」
と博士。これにも口(くち)ポカーンである。
だったらどうしてそんなものをオルゴールに隠してルリ子に託したのか。

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ネットでこの作品の感想を検索していたら、以下のような文章があった。まったく同感である。

一番解せないのは、この世にない方が良いと判断した自らの研究を、わざわざオルゴールの中に入れ、娘に持って逃げさせると言う危険で愚かな行為をする木村博士。
それを必死に追い求めたルリ子ちゃんの目の前で、博士自ら書類を焼いてしまうと言う行為は、娘の気持ちを逆なでするだけだと思うのだが…
通常、この手の争奪戦で敵が破れ、秘密が守り抜かれた場合、ラストでその研究が実現し、みんなで「平和利用」などを誓って喜びあう…と言うのがパターンではないかと思うだけに、正に意表を突かれる展開と言うしかない。
http://www.ne.jp/asahi/gensou/kan/eigahyou69/midoriharukani.html

原作では、上の感想にあるように、作品の終盤で父の残した研究が実用化されることになり、ルリ子たちがそれを喜びあう描写もある(これについても後述する)。ただ「緑はるかに」の映画化は原作の連載と並行して進んでおり、映画の脚本が完成した時には原作はまだ完結しておらず、したがって原作のラストを映画のラストに反映することができなかったという事情もある。

以下は完全にエピローグ。

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プロローグでは、たった一人でベランダに佇んでいたルリ子だったが、今、ルリ子のそばには、三人組とマミ子の姿が。

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ルリ子の両親の計らいで、三人組はこの家から学校に通うことになり、母親と暮らし始めたマミ子も、今日は泊りがけで遊びに来たというわけ(ちなみに、自分の家にみなし児を引き取って一緒に暮らす、という設定は、「タイガーマスク」の若月ルリ子とまったく同じである。ルリ子が兄と運営する孤児院「ちびっこハウス」はもともとはルリ子の父母が私財を投じて始めたもので、ルリ子と兄はそこで孤児たちとともに育ったのだ)。

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ルリ子がオルゴールの蓋を開けると、例のメロディが流れてきて、またしてもストーリーと無関係な幻想の世界へと誘われる。しかも今度はルリ子単独ではなく、三人組、マミ子も一緒に…

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「5人の夢は大空へ飛びます」とナレーションは語るが、これは一体どう解釈したらいいのだろう。プロローグでは単なるルリ子の脳内妄想に思えたが、5人が共通の幻覚を見るということは、「星の世界」とやらはこの作品の中では実在するということなのか。

もしそうであるなら、岡田眞澄扮する月の王子様とやらが、人智を超えた力で、一度は死んだ父と母を生き返らせた、という展開にすればよかったのではないか。もともと現実離れしたストーリーだし、こういう異世界のセットまで組んだのだから、完全なファンタジー作品にした方が潔かったように思う。

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妙にガタイのいい人が踊っているなあ、と思っていたら、後の石原裕次郎夫人(北原三枝)であった。

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ルリ子を先頭に、以下、三人組とマミ子がカメラ目線で行進してくる。おそらくカーテンコール的な意味合いだろうが、映画でこういう趣向はいかがなものか。

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そんなこんなで、音楽だけが盛り上がる中、ヒロインみずからエンドマークを持って「おわり」。

レビューが思った以上に長くなってしまったので、映画と原作との違いなどについては次回に。

※動画の一部がYoutubeに上がっていたので、さりげなくリンクを張っておきます。

○プロローグ(星の世界)
○ダイジェスト&主題歌

※このページのキャプチャ画像は、日活株式会社が製作した映画「緑はるかに」(1955年)からの引用であり、すべての著作権は日活株式会社が保有しています。
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2021年03月12日

ルリ子をめぐる冒険(3)映画「緑はるかに」(中)

前回までのあらすじ

小学6年生のルリ子は、北海道にいる科学者の父が病気になったと聞き、母とともに迎えの車に乗ったが、それは父の研究の秘密を盗もうとする某国スパイ一味の罠だった。両親とともに奥多摩にある研究所に捕らえられたルリ子だが、研究の秘密を隠したオルゴールを瀕死の父から託され、どうにか脱出。孤児院から抜け出してきたという三人組と行動をともにすることに。


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翌朝、洞窟で目を覚ました4人は、近くの池まで行き顔を洗う。

「まあ、キレイなお水ね」
なんて言ってはいるものの、どこからどうみてもスタジオにあつらえた小さいプール。

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デブ(右端)がうがいをしているそのすぐ隣りでルリ子が同じ水で顔を洗っているのを見ると、何だか気の毒に思えてしまう。

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三人組は朝食の木の実や果物を探しに行き、ルリ子は池のほとりで野菊(食用?)を摘み始めるが、繁みに隠れていた田沢、大入道、ビッコのスパイトリオに拉致される。

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戻って来た三人組は、地面に落ちていた野菊からルリ子の拉致を悟り、彼女が故意に落として行ったと思われる野菊の後を追って吊り橋をわたり、エレベーターに乗って、研究所までたどり着く。

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前にも出てきた洞窟の断面(すごい特撮)。右に吊り橋の端が見える。

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研究所では、ルリ子が大入道に両腕を押さえられ、田沢がオルゴールを入念に調べているところだった。

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三人組は壁のスイッチを適当にいじくり、

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一部の機械をショートさせる。このあたりもコント風演出全開で、

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これにはルリ子も苦笑い、である(笑っているのがわかる)。

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途中でエレベーターを止められ、扉をこじ開け脱出したら、今度はそのエレベーターに押しつぶされそうになるなどの危険に遭うが、どうにか難を逃れる。

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なおも追ってくる田沢一味と、吊り橋の上でオルゴールの奪い合い。

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ここら辺は実際の橋ではなくオープンセットで撮られている感じ。

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ここでもルリちゃん笑ってるんだよね。案外楽しかったのか? あるいは照れ笑い?

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敵が手にしたオルゴールをチビ真が奪おうとしたその時、

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オルゴールは橋の下の川に真っ逆さま。一同呆然。

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と同時に、重量オーバーのためか吊り橋の綱が切れ、橋は真っ二つに(特撮班ご苦労様)。

絶対に死傷者が出るレベルの事故だが、子供向け映画なので敵味方とも全員無事。ルリ子&三人組と田沢一味が川の両岸に分かれてしまう。

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こんな時も笑っているルリちゃん。劇団出身の子役たちは必死で芝居をしているのに。でも、演技経験ゼロの素人がいきなりヒロインに抜擢されたのだから、随所に「素」が出てしまうのは仕方がない。むしろ、現在の「大女優・浅丘ルリ子」からは想像もできない初々しさが好印象。

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橋が分断されたおかげで、4人は田沢一味の追跡をひとまず逃れる。
「あの流れはどこまで行ってるのかしら」
「東京さ」

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落ちたオルゴールは、川を下って東京方面に流れていく。この辺の描写は、映画「緑の小筐」(1947年・大映・監督 島耕二)との類似を指摘する意見もある。

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ルリ子&三人組も、オルゴールを追いかけるように川に沿って東京へ向かう。

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旅を続ける4人のバックに主題歌(作詞・西條八十 作曲・米山正夫)がフルコーラスで流れる。

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緑はるかな 地平の彼方(あなた)
だれかよんでる まねいてる
汽車もいく 馬車もいく
思い思いの 夢のせて
ああ しあわせは どこにある

旅の小鳩の 翼が折れて
青いリボンに 雨がふる
父いずこ 母いずこ
歌え形見の オルゴール
ああ しあわせは どこにある

ビルの都(みやこ)は つめたいけれど
のぞくやさしい 青い空
泣かないで 行きましょう
今日も希望(のぞみ)の 花摘みに
ああ しあわせは どこにある

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その途中、4人はマミ子(渡辺典子)という家出少女と道連れになる。田舎で祖母と暮らしていたが、東京で歌を歌っている母親に会いたくなり、東京に行くところだと言う(父親はいない様子)。こうして一行は5人にふくれあがる。

※このマミ子は原作でも途中から登場するキャラなのだが、ルリ子の妹分的な存在として作者が思いつきで投入した感じで、大した活躍もしないまま、後半はほぼ忘れられて終わる。そんなわけで、映画でもあまり存在価値がない、と言いたいところだが、実は、伏線回収という点で、原作よりはきちんとした役割が与えられている。

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ところ変わってこちらは東京のある街。
空き地に小屋が建てられ「ユニオンサーカス」の公演が行われている。

フランキー堺(当時25歳)演じるピエロがいきなり登場し歌い踊る。呼び込みをしているという設定のようだが、同一画面に映っているのはエキストラばかり。他のキャストとまったく絡まない、フランキーの完全独演会である(しかもメイクが濃いので、言われないとフランキーなのか谷啓なのかよくわからない)。

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いささか不可解な出演形態だが、実は、この「緑はるかに」の公開5日前に封切りされた日活の「猿飛佐助」の主演がフランキー堺で、製作・水の江滝子、監督・井上梅次、スタッフも撮影・照明・録音が同じで、市川俊幸、内海突破、有島一郎など出演者もかなりダブっている(一部撮影期間が重なっていたのかも知れない)。そういうつながりでの「特別出演」のようだが、登場時間わずか1分40秒、カット数2カット。テストと本番で2時間もあれば撮影は終わったのではないか。

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どんな形であれ、当時売出し中のフランキー堺の名前を入れておけば、少なからず集客がアップするだろう、という製作側の思惑が透けてみえるようだが、せっかく出演するのであれば、単独ではなく、どんなに短くてもいいから浅丘ルリ子との掛け合いを見てみたかったと思う。

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さて、そのフランキーは出番の最後に「ユニオンサーカス」の園長室のドアを差し示すのだが、その中にいたのが何と田沢であった。世を忍ぶ仮の姿としてサーカス団を運営していた、ということなのだろうが、いささか唐突な話だ(フランキーの演じるピエロも田沢の手下だったことになる)。

田沢に、オルゴールもルリ子たちの行方も皆目わからないと報告している大入道とビッコ。
「この世の中から消えてなくなったわけではあるまいし。草の根を分けても探し出せ!」
と発破をかける田沢。

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一方、東京に着いたルリ子たちは、廃墟を隠れ家にして共同生活を始めていた。デブとノッポが靴磨きをして生計を立てているのだった。
全員分のおむすびを作っているルリ子。終戦からほぼ10年が過ぎているのだが、どうにも「戦後」を感じる光景である。

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ルリ子たちがオルゴールの話をしているのを聞いたマミ子は、オルゴールなら持っていると言いバスケットの中から取り出して見せるが、それは桃色と黄色の別物だった。
マミ子はオルゴールが大好きなので、去年、母親が買ってくれたのだと言う(これ伏線です)。

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マミ子のオルゴールの音色を聞くうちにルリ子は、幸せだったかつてのクリスマス(1年or2年前)を思い出し、
「あのころはよかったわ〜 父もいたいた母もいた〜」
と口パクで歌い出す(歌はやっぱり安田祥子)。

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絵に描いたような回想シーン。

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プレゼントをもらい満面の笑みのルリ子。

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父も母も元気そうだ。

それにしても庶民とはかけ離れた、なんともゴージャスな暮らしぶり。木村博士は何かの発明で巨大なパテント料でも手にしていたのだろうか。

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しょぼ〜んとしてルリ子の歌を聞く一同だったが(映画は開始からすでに1時間が過ぎてあと30分しかないため)、泣いてばかりいるわけにもいかず、ノッポ、デブ、マミ子は靴磨きに出かけ、ルリ子とチビ真はオルゴールを求め、当てもなく河口付近にたたずむ。

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そこでたまたま大入道&ビッコと遭遇(たまたまにも程がある)。

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またも追いかけっこが始まり、

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ルリ子とチビ真は古道具屋のタンスの中に身を隠す。

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大入道とビッコが去った後、2人は店主に謝って一度店を出るが、その店のショーウィンドーに、緑のオルゴールが飾られているのを発見する。
余談だが、チビ真のボロボロの服とルリ子のシミひとつない洋服との対比が笑える。ルリ子だって(推定)10日以上は着たきりすずめのはずなのに…。この辺はさすがのヒロイン待遇である。

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蓋を開けてメロディを聞くと、まぎれもなくルリ子が持っていた、あの緑のオルゴールだった(奥多摩で落としたオルゴールが巡り巡ってこの店にあったというのだが、もう少し経緯が語られないと話に説得力がないような…)。

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これはルリ子のオルゴールだから返して欲しい、と店主に頼むチビ真。しかし店主いわく、
「元は誰の物だろうと、金を払って仕入れてきたものだから。1500円なら売りましょう」
演じるは有島一郎。岡田眞澄とフランキー堺には裏切られたが、有島はきちんとルリ子と「共演」していた。この当時38歳とは思えぬ落ち着きで、もう芸風も完成されている。

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ルリ子とチビ真は隠れ家に戻り、あとの3人にことの次第を報告。デブは、
「靴磨きを5人でやったら、1日300円。5日間で1500円ぐらい貯まるさ」
と言い、5人は翌日から早速ガード下で靴磨きを始める(ガード下の靴磨きというのも時代を感じるが、この当時はまだ日常的な風景だったようだ)。

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可愛いルリ子にお客が殺到し、あとの4人はヒマを持て余す、などというシーンがあってもいいような気がしたが、それはなかった(この靴磨きのシーンもそうだが、どうも全体的にルリ子のアップが少ない。あまりアイドル的な売り方をすることは考えていなかったのだろうか)。

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1日の仕事が終わるごとに、ショーウィンドーのオルゴールを眺める5人。このあたりの展開はテンポもよく、明るい音楽と相まっていい感じ。

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雨の日には閑古鳥が鳴くが、翌日は靴が汚れているため繁盛するという流れも、さながら人生の縮図のようである。

さて、4人は無事にオルゴールを手に入れることができるだろうか? というところで次回につづく。

※このページのキャプチャ画像は、日活株式会社が製作した映画「緑はるかに」(1955年)からの引用であり、すべての著作権は日活株式会社が保有しています。
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2021年03月10日

ルリ子をめぐる冒険(2)映画「緑はるかに」(前)

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まずは浅丘ルリ子の映画デビュー作「緑はるかに」から紹介していこう。

正直に言うと、今回、浅丘ルリ子の経歴をネットで調べるまで、こういう作品があったことはまったく知らなかった。不勉強と言われても仕方ないが、概要を知るほどに食指が動く映画である。何より興味を引かれたのは、まったく演技経験のない普通の中学2年生が、一般公募で選ばれていきなり主演デビューを果たしたこと、そしてそれが「ザ・女優」のイメージが強い浅丘ルリ子だったという意外性である。しかも、ヘアカットと衣裳デザインは、美少女イラストで一世を風靡したあの中原淳一(これもかなり異色)。フランキー堺、有島一郎、岡田眞澄といった、個性派俳優陣との共演も興味をそそる。そしてメガホンを取るのは、「嵐を呼ぶ男」「鷲と鷹」から「江戸川乱歩の美女シリーズ」「スーパーガール」「ミラクルガール」まで、何でもござれの井上梅次監督。というわけで、かなりの期待を胸に早速DVDを注文し、視聴してみたのだが……。

以下、私的な感想も交えつつレビューをしていきたい。

全国の少年少女を湧かせた讀賣新聞連載絵物語の映画化。
全国2千人から選ばれた浅丘ルリ子主演、
日活初の豪華総天然色映画巨篇!

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製作/水の江滝子 原作/北條誠(讀賣新聞連載)
撮影/柿田勇 照明/岩木保夫 録音/橋本文雄
美術/木村威夫 衣裳考証/中原淳一 舞踊構成/飛鳥亮
編集/鈴木晄 助監督/井田探 色彩技術/小林行雄(日本色彩)
音楽/米山正夫
主題歌=コロムビアレコード
作詞・西條八十 作曲・米山正夫
「緑はるかに」河野ヨシユキ、安田祥子
「ルリ子の歌」安田祥子
コロムビア ひばり合唱団 
現像/日本色彩映画株式会社
脚本・監督/井上梅次
日活公式ページ

※このページのキャプチャ画像は、日活株式会社が製作した映画「緑はるかに」(1955年)からの引用であり、すべての著作権は日活株式会社が保有しています。

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牧歌的なメロディーの主題歌が流れ、ほのぼのした映画なのかなあ、と想像していると…

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自宅のベランダで、ひとり淋しげに空を見つめる主人公・ルリ子(生身の人間というよりお人形さん的な可愛らしさですな)。
科学者の父親が北海道へ行って1年も経つのに、便りがないのが心配なのだ。

実際の浅丘ルリ子は当時中学2年生(14歳)だが、物語の設定は小学6年生(12歳)なので、中原淳一はそのあたりを考慮してやや幼くみえる衣裳デザインにしたらしい。

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ルリ子は父からもらったオルゴールを開く。するとたちまち幻想の(星の)世界へ…

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学芸会的というか、なんとも児童劇的なセット。リアリズムの排除という点では、木村威夫らしいと言えないこともないが。

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ルリ子の右側にいる月の王子様が当時19歳の岡田眞澄(ただ立っているだけでひとことのセリフもなし。がっくり)。ちなみにこのシークエンスは物語とはまったく関係がない(なくても問題なし)。ただ単に「ミュージカル風の群舞シーン」を作品に入れたかっただけのように思える。

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ルリ子はここで「さみしいさみしいルリ子です〜」と自己紹介の歌を歌うが、残念ながら口パクで、実際に歌っているのは安田祥子。浅丘ルリ子本人が語るところでは、「美空ひばりに憧れて、歌手を目指していたが、小学校6年生の時、テイチクのオーディションに落選。そこで歌は諦めた」とのこと。あまり歌唱は得意ではなかったということか(それでも後年、そのテイチクから30枚以上のシングルを発表しているのだが)。

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無駄に長い幻想シーンが終わると、母が慌てた様子でルリ子を呼びにくる。

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「お父様がご病気なんですって。ひどくお悪いから、すぐ、私とルリ子に来るようにですって」
母親役は藤代鮎子。この人のプロフィールはよくわからないが、当時40歳ぐらいか。日本映画データベースによると、大映京都(1948〜1951)、松竹京都(1953〜1954)、日活(1955〜1957)と渡り歩いた脇役俳優のようだ。

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父の病気を知らせて来たのは北海道の研究所長を名乗る田沢という男。

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演じるは植村謙二郎。『ウルトラセブン』第9話「アンドロイド0指令」のおもちゃじいさんの若かりし日の姿である(といってもこの時すでに40歳)。一目見ただけで堅気でないと誰もが気づく、わかりやすいキャスティング。

ルリ子は母とともに、田沢の案内で父の元へ向かうことに。

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しかし田沢の部下が運転する車は、駅とは違う方向へ。いぶかしがるルリ子と母に、田沢は拳銃を突きつける。彼らは某国のスパイであった。

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田沢の部下・ビッコ(役名)と大入道(役名)。演じるは内海突破と市村俊幸。

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一行は奥多摩に作られた秘密の研究所へ(吊り橋とエレベーターを利用)。

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近未来的(?)なイメージの研究所セット。

田沢いわく、ルリ子の父・木村博士は「ここですげー研究を完成した」とのこと。
「宅がここに?」と母。自分の夫のことを「宅」と言うのが何ともレトロ(今はまず言わないだろう)。

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しかし完成したとたん、博士は書類を全部焼いてしまい、そして病気になってしまったという。
「お前たちが博士から研究の秘密を聞き出せ。そうすれば博士ともども東京へ返してやる」と田沢。

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木村博士と、ルリ子&母の涙の対面。
博士は病気でかなり弱っているようだったが、
「殺されても、お前たちを犠牲にしても、研究の秘密をあいつらに教えるわけにはいかん。善良な地球の人々のためにも」
と、悲壮な決意を語る(その研究は、平和利用すれば人類に幸福をもたらすが、悪用すれば災厄をもたらすものらしい。まあ定番の説明ですな)。

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木村博士を演じているのは往年の二枚目俳優・高田稔。私の世代では『ウルトラQ』の実質第1話「マンモスフラワー」の源田博士が思い出されるが、この時すでに55歳。14歳の娘の父親にしては少々年を取りすぎでは? もう少し若い俳優はいなかったのだろうか。まあ、年がいってる分、衰弱している感はよく出ていたが…。

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誰かの視線を感じてはっとするルリ子。

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壁に飾られた仮面越しに、田沢たちが様子をうかがっていたのだ。

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この演出はどこかで見覚えが…と思ったら、『江戸川乱歩の美女シリーズ』第2作「浴室の美女」(1978年)のワンシーンであった(こちらも井上梅次監督作品)。

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一夜明けて、ルリ子が目を覚ますと、母の姿がない。

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あわれ母は隣室で鞭打たれていた。鞭の音と悲鳴が響き渡る。思わず耳を塞ぐルリ子。

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木村博士に精神的な揺さぶりをかける田沢の卑劣な作戦なのだ。

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このあたりも『美女シリーズ』的で、とても子供向け映画とは思えない。ネットの感想で「和服の御婦人を縛り上げて、鞭打つなんて、伊藤晴雨の(責め絵の)よう」というのを見たが、まさにそんなノリである。これも監督の趣味だろうか。

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博士はルリ子に、「わしはもうダメだ。秘密を持って逃げてくれ…」と言い、それからは衰弱のため会話不能となり、筆談でやり取りするのだが、その間(2分ぐらい)ずっと母が鞭打たれる音と悲鳴が聞こえ続けている。なんともサディスティックな演出。

「オルゴール ハヤクニゲロ」とノートに記す博士。
博士は昨夜のうちに、ルリ子が持ってきていた緑のオルゴールに、研究の秘密を隠したらしい。

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ルリ子に後事を託した博士はついに力尽き、

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その20秒後に母もこときれる。子分のビッコが「親分、死んでますぜ」と言う(よく覚えておいてください)。

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「お父様…ルリ子は行きます。さようなら!」
ルリ子は父の亡骸に別れを告げ、オルゴールを持って決然脱出。

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木村博士の様子を見に行った大入道は「博士がくたばってますぜ!」と田沢に報告(これもよく覚えておいてください)。
田沢は博士の枕元にあるノートを見て、ルリ子がオルゴールを持って逃げたことを知り、大入道、ビッコに後を追わせる。

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ルリ子はエレベーターで外に出て、吊り橋をわたり、

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洞窟の中に逃げ込むが、

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突然現れた、赤、黄、青の鬼(の面)を見て気絶してしまう。

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追ってきた大入道とビッコも、鬼(の面)に驚いて逃げ出す。このあたりの演出は妙に喜劇的で、先ほどの「伊藤晴雨の責め絵的世界」とのギャップが激しい。

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気絶したルリ子を抱えて洞窟の奥に運ぶ3人の鬼たち。どさくさにまぎれて触りまくり。

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ルリ子が気づくと、被っていた面をはずして正体を見せる。

冒険を探して東京の孤児院「光の家」を飛び出してきたと言うチビ真(浅沼創一)、デブ(石井秀明)、ノッポ(永井文夫)の3人。さながら「ズッコケ三人組」(以下「三人組」と表記)。

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頼まれもしないのに下手クソな自己紹介の歌を歌い始める三人組。無理にミュージカル仕立てにしなくてもいいのに…。すでに作品が始まって30分、全体の3分の1を過ぎているというのに、一向に盛り上がっていかないのが残念。

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「あたしがヒロインなのに、どうしてアップも見せ場も少ないの」
と泣き出すルリ子(嘘です)。

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実際は、
「あたしもみなし児なの。お父様もお母様もスパイに殺されちゃったの」
と言って泣くのだが、父親が絶命したのはそばにいたからわかるとして、母親の死は認識していないはずなんだけどね。

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ルリ子の涙が呼び水になって、三人組も泣き出す。どうにも湿っぽくていただけない。

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今度はルリ子が三人組を慰めるという展開。4人は指切りで友情を誓う。

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おや、みなし児たちとともに夜空を見上げ明日の幸福を祈るその姿は…

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「タイガーマスク」のルリ子さんを彷彿させるものがあるじゃないですか! と勝手にわくわくしつつ、だいぶ長くなったので今回はこの辺で。
posted by taku at 12:48| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする