2016年07月16日

映画『彦とベガ』本日より公開

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最近ほとんど映画のことについて触れていない当ブログですが、今回は珍しく劇場公開作品のお知らせを。

『彦とベガ』という日本映画で、本日(16日)から22日まで、新宿のK's cinemaで公開しています。時間は連日13時〜(1日1回上映)。

■映画『彦とベガ』公式サイト

現役の介護福祉士が自身の体験から着想を得た、認知症の妻とその夫のドラマです。私は1年前に見ましたが、今でも心に作品の「芯」が残る、ある意味忘れがたい映画となっています。監督の谷口未央さんは37歳の若手ですが、大ベテランの川津祐介・原知佐子コンビを向こうに回し、たしかな演出力で現代の老いの姿を画面に刻みつけました。

実は、谷口さんはニューシネマワークショップという映画学校での、かつての私の教え子です。
若い人が、着実に成長していく姿を見るのは、こちらも刺激になりますし、なかなかいいものです。

あさって(18日)の上映終了後には、その谷口さんとトークをさせていただくことになりました。

ご興味のある方は、是非とも劇場に足をお運び下さい。
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2015年11月12日

加藤茂雄さんの朗読劇

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鎌倉アカデミアの「語り部」として、このブログでも何度かご紹介してきた俳優兼漁師の加藤茂雄さん。アカデミア卒業後、東宝と専属契約を結び、黒澤明の「生きる」「七人の侍」、本多猪四郎の「ゴジラ」「怪獣大戦争」など、数え切れないほどの作品に出演してきた日本映画黄金期の「生き証人」でもあります。今年90歳を迎えられましたが、ますますお元気で、来週土曜日には朗読劇にご出演されます。先月にも都内のライブハウスでプレ上演が行われましたが、今回は満を持して、豊島区立勤労福祉会館「きんぷくまつり」のプログラムのひとつとしてお披露目されるとのこと。入場は無料です。どうぞお誘い合わせの上ご来場下さい。

ピアノ演奏付き朗読劇「輝いて! プランクトン」

作:石川千穗子
出演:加藤茂雄 松本謙二 寺田有紀美 石川千穗子
ピアノ:青木ゆうこ

日時:11月21日(土)14:20ごろ(多少時間が前後する場合あり)
場所:豊島区立勤労福祉会館 6F大会議室
JR池袋駅(メトロポリタン口)より徒歩7分
〒171-0021 豊島区西池袋2-37-4
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2015年01月11日

公式サイトリニューアル

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早いもので、新しい年を迎えて10日以上が過ぎてしまいました。
遅ればせながら、今年もよろしくお願いいたします。

さて、この年末年始をどのように過ごしていたかといいますと、実に6、7年ぶりとなる、公式サイトのリニューアルに忙殺されておりました。今回は既成のテンプレートを利用したので、かなりサクサク(2、3日もあれば)できるだろうと踏んでいたのですが、正直甘かったです。毎度のことながら、サイト関連の作業は驚くほど時間を取られます(しかも、それだけ時間を費やしても、リンクのミスとかいろいろあったりする)。

思い起こせば私が公式サイトを最初に立ち上げたのは、忘れもしない2001年1月1日。21世紀の幕開けの日です。その時はまだ自分にスキルがなかったので、Sくんという知り合いに全部おまかせしていたのですが、2年後の2003年からは自分で作成するようになり、何度かのリニューアルを経て、今回に至るというわけです。最初はプロバイダのサーバーを使っていましたが、すぐに容量が足りなくなって有料のサーバーに移ったり、独自ドメインを取得したりと、いろいろ試行錯誤の連続でした。おかげで、HTMLとかその辺のことは、ある程度わかるようになりましたが、このごろでは手軽なブログやtwitter、facebookなどが主流で、いわゆるホームページというのはいささか時代遅れの印象もあります。私がサイトを始めてから数年はちょっとしたホームページブームで、まわりの知人もかなりの人が手を染めていましたが、今でも続いているのはごく少数になってしまいました。

でも、私はどうもSNSという奴が得意でないため、相変わらずネットでのツールは、公式サイトとこのブログだけです。しかし公式サイトは数年放置、ブログについては更新はしているものの最近は特撮などの趣味に走りすぎており、さすがにこのままでは社会人として怠慢ではないかと反省し、年末から作業を開始しました。トップページをはじめとするすべてのページから、直接主要な作品紹介ページに飛べるようにしたり、個々のページにyoutubeの動画(予告編やダイジェスト)を貼り付けたり、テキストなども全部チェックし、内容が古いものは適宜修正してみました。約2週間の労作です。お時間がありましたら、一度ご覧になってみて下さい。

大嶋拓 公式サイト:タクラマネット

先ほども書いたように、既成のテンプレを使用していますので、デザインはそれなりにバランスが取れていると思いますが、逆にこれまでのようなハンドメイドっぽさは薄れてしまったかも知れません。というわけで、旧サイトのページの一部は前のデザインのまま残し、右下のメニューから入れるようにしてみました。また、最近スチール写真への興味が再燃しつつあるので、フォトギャラリーも前より少しだけスタイリッシュにしてあります。今後もコンテンツの充実をめざし、定期的に更新できたらいいな(確実に「する」と断言できないところがダメですねえ)と思います。
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2014年07月06日

『影たちの祭り』+Plus(プラス)

今月の29日(火)〜31日(木)、座・高円寺2にて、劇団かかし座による<KAKASHIZA SPECIAL SUMMER 2014>が開催されます。同劇団の人気作品「魔法つかいのおとぎばなし」、手影絵パフォーマンス「Hand Shadows ANIMARE +Plus(プラス)」の上演に加え、最終日には映画『影たちの祭り』の上映も行われますので、皆様どうぞご来場下さい。

このスペシャルイベントでは、すでにおなじみの「Hand Shadows ANIMARE」ではなく、新作や新演出をふんだんに盛り込んだ「Hand Shadows ANIMARE +Plus(プラス)」がお目見えするとのことなので、映画の方もこれまでの『影たちの祭り』 に+Plus(プラス)して、完全未公開のバックステージ映像(17分)をこの日限定で上映することにしました。

それは何かと言いますと、去る4月13日、「第20回日本フルートフェスティヴァルin横浜」で披露され好評を博した、「Hand Shadows ANIMARE」の手影絵と8名から成るフルートオーケストラとのコラボレーションのリハーサル映像です(演目は「みにくいアヒルの子」と「Syrinx」)。
この意外な組み合わせは、音楽大学時代にフルートを専攻していた後藤圭かかし座代表が、受験生時代からの友人である石井孝治氏の提案を受けて実現したそうで、「ANIMARE」が生演奏と競演するのは初の試みとのこと。
「これは記録しておかねば!」と私こと大嶋がその稽古の全てに立ち会ってカメラを回し、かなりの時間を費やして編集しました。

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左から後藤圭かかし座代表、指揮を務める石川洋光氏、1stフルートの植村泰一氏

今月の1日に関係者試写を終え、あとは上映用のディスクに焼くばかり。手前味噌かも知れませんが、滅多に観られない、相当にレアな映像だと思います(私自身、フルートオーケストラというものの存在を今回初めて知りました)。作曲の石川洋光氏が新たにアレンジしみずから指揮も務めた「みにくいアヒルの子」のフルートバージョンも必聴! ぬくもりのある音色とハーモニーが心に沁みます。また「Syrinx」は、日本フルート界の重鎮・植村泰一氏がソロを担当し、「ANIMARE」のメンバーたちと人生の物語をライブ感豊かに紡いでいきます。すでに映画をご覧になったという方も、今年新たに生まれた『影たちの祭り』のアナザーストーリーを是非ご覧下さい。もちろん、終映後には舞台挨拶とミニパフォーマンスも行います。

…というわけで、久々にイベントの告知でした。思い起こせば、『影たちの祭り』の撮影を始めたのが2012年の7月3日。今から2年前です。かかし座60周年記念公演の「Hand Shadows ANIMARE」の稽古は、この日にスタートしたのでした。ついこの間のような、それでいて、ずいぶん昔のような…。
この作品の東京公開は、それから1年後、つまり今から1年前の2013年7月13日から。去年の今ごろは、公開の諸準備でかなりバタバタしていたのを、昨日のことのように思い出します。
そして今年の7月には上記のようなイベントが行われるという次第で、『影たちの祭り』は、どういうわけか7月に縁の深い映画のようです(かかし座の創立記念日が7月14日だからでしょうか?)。

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2013年10月13日

お知らせ

この度、当ブログの更新をしばらくお休みすることにしました。5年ほど前に立ち上げたものの、このブログという形式は、どうも私とはあまり相性がよくなかったようです。最近では、ツイッターやフェイスブックなど、さらに速報性重視のツールが人気のようですが、50歳を迎えてどんどんスローライフの方に向かっている私には、何やら別次元の出来事のように思われます。

今後は、以前のように、公式サイトの中に「コラムのページ」を復活させることも考えていますが、具体的なことはまだまったく決めていません。
なお、映画『影たちの祭り』の最新情報については、同映画のフェイスブックページをご覧下さい。
これまでのご愛読に心より感謝申し上げます。
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2013年04月28日

映画『影たちの祭り』

ついに告知する時がやって来ました。これまで何度か書いてきた、劇団かかし座のドキュメンタリー映画。正式なタイトルは『影たちの祭り』です。「Hand Shadows ANIMARE」というパフォーマンスを扱ったものなので、サブタイトル的な表記として「Backstage of “Hand Shadows ANIMARE”」の文言が付いています。

公開は7月13日(土)から新宿K's Cinemaにて。その何週か後には大阪のシネ・ヌーヴォでも上映される予定です。チラシとチケット、公式サイトも出来上がって、いよいよ公開が近づいてきたのを実感します。

しかし、そういったものは、当然のことながら勝手に出来上がってくれるわけではありません。先週からつい先ほどまで、チラシとチケットのデザインチェック、入稿、納品、公式サイトの作成、修正、アップロード…と、まさに息つく間もない1週間でした。世間は大型連休に突入したそうですが、今の私にはまったく別世界のお話のようです。

でも、今回のメインビジュアル、かなり気に入っております。影絵にまつわる作品だけあって、黒が占める割合がかなり多いのですが、実は、これまでの私の劇場公開作のビジュアルは、『カナカナ』も『火星のわが家』も『凍える鏡』もすべてが白ベースで(内容が淡白だからでしょうか)、そういう世界観はそろそろ食傷気味だったのです。ですから、今回出来上がってきたラフデザインを見た瞬間、「よし!」と心の中で思わずガッツポーズを取ってしまいました。

デザインを担当してくれたのは、前作『凍える鏡』の時にもお世話になった秋山京子さん。素材に多少難があったとしても、間違いなく安定感のあるビジュアルに仕上げてくれるベテランのデザイナーさんですが、決してそれだけではなく、遊び心も失わず、そして作品ごとに発想を切り替え、時にはっとするような斬新な提案をされる方です。
今回もしかり。一般に認知されているかかし座の手影絵のイメージといえば、ます思い浮かぶのがキツネ、フクロウ、ニワトリなどの動物たちで、当然これまでの「Hand Shadows ANIMARE」関連のチラシなども、そういった動物がビジュアルの主役でした。ところが『影たちの祭り』では何と、動物が出てこない「Syrinx」がメイン。この映画のサンプルDVDを観た秋山さんが一番目を奪われたのが、コンテンポラリーダンスを思わせる「Syrinx」だったからのようです。そして私にとっても、この「Syrinx」が、最も前のめりでカメラを回した演目でした。そうした思いが交錯して、出来上がったチラシがこちら(最終的にはバランスを考えて動物たちも配置しましたが)。

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キャッチコピーは「そこに光と手があれば やがて生命が動き出す」。
その言葉どおり、手影絵は光と手だけで誰でも簡単に楽しむことが出来ますが、その反面、光が消えてしまったり、手をほどいたりすれば、いとも簡単に消え失せてしまう、大変「はかない」ものです。そしてまた、映画のタイトルになっている「祭り」も、大勢の人が分けへだてなく楽しむものであると同時に、終わってしまうと、一抹の寂しさ、はかなさが漂うという点で、手影絵に通じるものがあるように思われます。今回のビジュアルには、そうした「はかなさ」も織り込まれているように感じるのですが、いかがでしょうか。

暗闇の中で命を宿した影たちが歌い、踊り、飛び跳ね、愛をささやく、ひとときの饗宴。それはまた、映画の「原型」と言えるかも知れません。原初的であるが故にどこまでも奥深い手影絵の魅力を、この作品を通して味わっていただければ幸いです。

映画『影たちの祭り』公式サイト
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2011年12月03日

ひみつのアコタン

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「火星のわが家」の一場面(堺雅人と鈴木重子)

イベントのお知らせです。
女性映画カメラマンの草分け的存在であり、今もなお積極的に作品を世に送り出している芦澤明子(あしざわあきこ)さんの特集上映が開催されます。名づけて「ひみつのアコタン キャメラマン芦澤明子アーリー&レア・ワークス」。「アコタン」は芦澤さんのニックネームです。

開催期間は12月13日(火)から16日(金)までで、場所はオーディトリウム渋谷。15日(木)の20:45からは「火星のわが家」の上映も。この作品が35ミリプリントで映画館のスクリーンに投影されるのはかなり久しぶりのことで、上映後には芦澤さんと私、そして制作を担当した露木栄司さんとのトークも予定されています。

さらにこの日だけのスペシャルプレゼントとして、先着10名様に、非売品オリジナルサントラCD(鈴木重子さんの歌う主題歌など全5曲入り)を進呈。また、現在ほとんど入手不可能と言われているパンフレット(限定30冊・800円)とポスター(限定10枚・500円)の販売も合わせて行います。どうぞこの機会をお見逃しなく! 他にもなかなか目にすることができないレアな作品が連日上映されますので要チェックです。

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イベントの詳細は≫ 「ひみつのアコタン」公式サイト
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2011年09月03日

イベントのお知らせ

少し先の話ですが、来月の中旬に秋田で行われるイベントに出演します。
現在県が積極的に行っている読書推進活動の一環としての行事ですが、対談に先がけて、映画「火星のわが家」の上映もあります(秋田でこの作品が上映されるのは、2000年の十文字映画祭以来なので何と11年ぶり!)。以下はその概要です。お近くの方は是非お出かけ下さい。

読書のつどい2011 in 秋田

日時:2011年10月15日(土)
場所:秋田県生涯学習センター講堂(秋田市山王中島町1-1)

※入場無料ですが、事前の申込みが必要です。
問合せ・申込み:秋田県総合政策課 県民読書推進班
        電話:018-862-5200

内容:
●映画「火星のわが家」 特別上映 (10:00〜)

かつて「宇宙博士」として多くの本を世に送り出してきた老作家の元に、アメリカで歌手として活躍する次女が里帰りしてくる。実は彼女はステージに立つと声が出なくなるという深刻なトラブルを抱えていた。ひと夏の家族の交流を静かなタッチで描く。
2000年公開。第12回東京国際映画祭参加作品。
出演:鈴木重子 堺雅人 ちわきまゆみ 日下武史
監督・脚本・編集:大嶋拓

●鼎談 ふるさとと本を語る 〜文学・出版・映像の響き合い〜 (13:45〜)

秋田の生活や文化、先人たちの生涯を書物にしたためた著者3人による鼎談。

話し手:
三浦衛(春風社代表取締役)1957年、秋田県井川町生まれ。東北大学経済学部卒業。1999年、出版社「春風社」を創業。学術書を中心に現在まで約400点を刊行。著書に『出版は風まかせ おとぼけ社長奮闘記』『父のふるさと 秋田往来』がある。

大嶋拓(映画監督)1963年、東京生まれ。秋田市出身の劇作家・青江舜二郎の長男。慶應義塾大学文学部卒業。「カナカナ」「火星のわが家」「凍える鏡」などの映画作品を監督。今春、初めての著書『龍の星霜 異端の劇作家 青江舜二郎』を出版。

高橋秀晴(秋田県立大学教授)1957年、秋田市生まれ。早稲田大学卒業、上越教育大学大学院修了。専門は日本近代文学。著書に『秋田近代小説・そぞろ歩き』『出版の魂 新潮社を作った男・佐藤義亮』など。
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2011年07月26日

タクラマチャンネル開設!

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お知らせです。YouTubeに、タクラマネット専用チャンネル、通称タクラマチャンネルを開設しました。

■■タクラマチャンネル■■ ←こちらをクリックすると飛びます

タクラマチャンネルでは、大嶋拓が製作した映像作品の予告編やダイジェストなどがご覧いただけます。7/26現在、動画の数は10個程度ですが、今後は、チャンネル内のオリジナルコンテンツも充実させていきたいと考えています。

それにしても、こういう映像公開ツールを、まったくコストをかけずに持てるようになるとは、大変な時代になったものです。もちろん、サイトの存在を多くの人に知ってもらうには、相応の努力と工夫が必要になるでしょうが、作り手にとってまず大切なのは、表現する場所をきちんと確保することだと思います。
放送局というメディアに頼らなければ映像や音声を流すことができなかった時代は、アナログ放送の終焉とともに過去のものとなっていくのでしょう。
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2011年05月17日

『龍の星霜』刊行!

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少しご報告が遅れてしまいましたが、去る4月30日に、私にとって初めての著書『龍の星霜』が刊行されました。もっとも、大型連休がはさまってしまったため、アマゾンなどに情報が上がってきたのは5月10日前後です。

さて、これは一体どういう本なのでしょう。ここでは、初めて読む方にもわかりやすいように、なるべく懇切丁寧に説明したいと思います。
タイトルと表紙の印象だと、ちょっと歴史小説風ですが、その下に赤い字で「異端の劇作家 青江舜二郎」という副題があって、どうやら伝記のたぐいらしいということがわかります。その言葉どおり、青江舜二郎という劇作家の一生を描いた本で、ジャンルとしてはノンフィクションということになるでしょうか。
なお、タイトルは「りゅうのせいそう」と読みます。「龍」は、青江舜二郎が辰年だったので、それにちなみました。実際、青江は架空の生物である「龍」にふさわしく大変な理想主義で、現実との折り合いに最後まで苦労した人でした。また「星霜」は「幾星霜」などという言葉もあるように、年月、歳月のことですが、どう読むのですかと、何人かの方に聞かれました。奥付けだけでなく、表紙にもルビをふるべきだったかも知れません。ふたつを合わせ、「龍(=青江舜二郎)の生きた年月」という意味あいです。

青江舜二郎というのは1904年に生まれて1983年に亡くなっており、20世紀のほぼ全般を生きた人です。和暦でいうと、生まれたのが明治時代後半、大正時代に青春期を送り、昭和が終わる6年前に他界しています。
ご存知のとおり、20世紀というのは世界全体が激しい変化を遂げた時代です。青江が生まれる30何年か前まで日本は江戸時代で、武士がちょんまげを結って刀を差して歩いていたのに、青江が40代の時にテレビが出来て、60代になるころにはロケットが月まで到達していました。そしてそんな文明の驚異的進歩の狭間には2度の世界大戦があり、多くの犠牲が払われたのです。

青江の生涯を振り返ると、そんな時代のうねりが否応なく見えて来ます。関東大震災、経済恐慌、満洲事変、日中戦争から敗戦、戦後の復興、高度経済成長…。
「個人の行動は純粋にその人間の自由意志に基づく」なんていうのは大いなる幻想で、実際はその時代その時代の波をモロにかぶって、その中でもがきながら、どうにか、最良と思われる選択をしているに過ぎないということが、彼の人生を追ってみるとよくわかります。

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青江舜二郎

この評伝はもともと、2009年4月から2010年3月まで、秋田魁新報という秋田の新聞に連載した文章に手を入れて、1冊にまとめたものなのですが、大震災が起きた3月11日以降にあらためて読み直すと、ひとつひとつのエピソードが一層胸に迫ってくるように感じます。あの震災までの日本は、経済的には停滞が続いていたものの、どうにも「ぬるい感じ」が蔓延していて、人生や日々の生活について真摯に考えてみるという雰囲気はありませんでした。しかし今は、日本人全部に、きわめて深刻な問題が突きつけられています。「目先の便利さや快適さに目を奪われて、われわれは大事なものを見失っていたのではないか」「人生において、真によりどころとすべきは、一体何であるのか」。そんな問いに対して、青江の生涯は何かしらの示唆を与えてくれるようにも思っています。

この本は、ノンフィクションではあるものの、青江の人生がかなり波乱に富んだものであるため、これでもかというくらいドラマティックな展開になっています。登場人物も、教科書でおなじみの新劇の父¥ャ山内薫からアジアの歌姫・李香蘭、国際俳優の早川雪洲、プロレスの王者・力道山、人間国宝の女形・花柳章太郎、そして劇作家で俳人の久保田万太郎など多士済々。
久保田万太郎が青江の戯曲「一葉舟」を自作と偽って発表したため起きた著作権を巡る民事事件は、当時あまりマスコミが取り上げなかったので、本書で初めて詳細を知るという方も多いのではないでしょうか。劇壇の大ボスだった久保田を訴えたことにより、青江は日本演劇界で居場所を失ってしまうのですが、そのことが後に、演劇とは異なるジャンルで大きな成果をもたらすのですから、「禍福はあざなえる縄の如し」とはよく言ったものです。

申し遅れましたが、青江舜二郎というのは私の父です。年の差が59歳もあるので、よく祖父と間違われるのですが、れっきとした父親です。とは言うものの、いわゆる作家の子どもが書いた「私的な回想録」とはかなり違ったものになっていると思います。ベースになったのは、青江がまだ幼かった私のために書き残した「父の略歴」という手記と断片的な随想など。しかしそれだけでは客観性に乏しいので、国会図書館など複数の図書館を回って、昔の新聞や雑誌を閲覧したり、直接青江を知る方に話をうかがいに行ったり、「裏を取る」ための時間をかなり費やしました。何しろ青江舜二郎の評伝はこれが初めてのものなので、青江の人生行路をなるべく誤りなく記録し、後の世に伝えたいと考えたのです。

私は小学生の時から8ミリカメラを回してきて、それがそのままダラダラ続いた結果、現在では「映画監督」とか「映画作家」という肩書きを使わせてもらうことが多いのですが、そもそも8ミリカメラを手にするようになったのは青江の影響です。その意味では青江は父というよりは「師」と呼んだ方がふさわしいと感じます。そのあたりのことは本書の後半に書きました。また「火星のわが家」という映画の成立にも、青江は深く関わっています。

青江舜二郎のことをもう少し知りたい方は、その名前で検索していただければ、ウィキペディアにも記載がありますし、青江舜二郎電子資料室というサイトもあります。アマゾンでも何十冊かの書籍がヒットしますが、その大半は評伝や研究書などのノンフィクションで、劇作家といいつつ、戯曲以外の執筆活動もかなり広汎に行った人であることがわかります。今回帯に推薦文を書いて下さった北海道大学准教授の中島岳志さんは、青江の仏教研究者としての部分にかなり興味を抱かれたようで、5/15のツイッターで、「青江の『仏教に於ける人間の探究』を古書店で購入して読んでみたが、かなり面白い」と発言されています。このように本書を通し、青江の業績がさまざまな角度から再検証されることは、大変に嬉しいことです。と同時に、青江のひたむきな生き方が、お読みいただいた方の心に、少しでも勇気や元気のようなものをもたらすことができれば、著者としてこれ以上の喜びはありません。


龍の星霜 大嶋拓著
春風社 四六判並製 224頁 1,575円(税込)
ISBN 9784861102745 刊行日 2011/4/30
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