ついに告知する時がやって来ました。これまで何度か書いてきた、劇団かかし座のドキュメンタリー映画。正式なタイトルは
『影たちの祭り』です。「Hand Shadows ANIMARE」というパフォーマンスを扱ったものなので、サブタイトル的な表記として「Backstage of “Hand Shadows ANIMARE”」の文言が付いています。
公開は7月13日(土)から新宿
K's Cinemaにて。その何週か後には大阪の
シネ・ヌーヴォでも上映される予定です。チラシとチケット、公式サイトも出来上がって、いよいよ公開が近づいてきたのを実感します。
しかし、そういったものは、当然のことながら勝手に出来上がってくれるわけではありません。先週からつい先ほどまで、チラシとチケットのデザインチェック、入稿、納品、公式サイトの作成、修正、アップロード…と、まさに息つく間もない1週間でした。世間は大型連休に突入したそうですが、今の私にはまったく別世界のお話のようです。
でも、今回のメインビジュアル、かなり気に入っております。影絵にまつわる作品だけあって、黒が占める割合がかなり多いのですが、実は、これまでの私の劇場公開作のビジュアルは、『カナカナ』も『火星のわが家』も『凍える鏡』もすべてが白ベースで(内容が淡白だからでしょうか)、そういう世界観はそろそろ食傷気味だったのです。ですから、今回出来上がってきたラフデザインを見た瞬間、「よし!」と心の中で思わずガッツポーズを取ってしまいました。
デザインを担当してくれたのは、前作『凍える鏡』の時にもお世話になった秋山京子さん。素材に多少難があったとしても、間違いなく安定感のあるビジュアルに仕上げてくれるベテランのデザイナーさんですが、決してそれだけではなく、遊び心も失わず、そして作品ごとに発想を切り替え、時にはっとするような斬新な提案をされる方です。
今回もしかり。一般に認知されているかかし座の手影絵のイメージといえば、ます思い浮かぶのがキツネ、フクロウ、ニワトリなどの動物たちで、当然これまでの「Hand Shadows ANIMARE」関連のチラシなども、そういった動物がビジュアルの主役でした。ところが『影たちの祭り』では何と、動物が出てこない「Syrinx」がメイン。この映画のサンプルDVDを観た秋山さんが一番目を奪われたのが、コンテンポラリーダンスを思わせる「Syrinx」だったからのようです。そして私にとっても、この「Syrinx」が、最も前のめりでカメラを回した演目でした。そうした思いが交錯して、出来上がったチラシがこちら(最終的にはバランスを考えて動物たちも配置しましたが)。

キャッチコピーは「
そこに光と手があれば やがて生命が動き出す」。
その言葉どおり、手影絵は光と手だけで誰でも簡単に楽しむことが出来ますが、その反面、光が消えてしまったり、手をほどいたりすれば、いとも簡単に消え失せてしまう、大変「はかない」ものです。そしてまた、映画のタイトルになっている「祭り」も、大勢の人が分けへだてなく楽しむものであると同時に、終わってしまうと、一抹の寂しさ、はかなさが漂うという点で、手影絵に通じるものがあるように思われます。今回のビジュアルには、そうした「はかなさ」も織り込まれているように感じるのですが、いかがでしょうか。
暗闇の中で命を宿した影たちが歌い、踊り、飛び跳ね、愛をささやく、ひとときの饗宴。それはまた、映画の「原型」と言えるかも知れません。原初的であるが故にどこまでも奥深い手影絵の魅力を、この作品を通して味わっていただければ幸いです。
映画『影たちの祭り』公式サイト