
映画『影たちの祭り』が児童健全育成推進財団の「児童福祉文化賞推薦作品」に選定されたため、一昨日(5/9)、厚生労働省内で行われた表彰式に出席してきました。こういうところに呼ばれるなんていうのも滅多にあることではないので、当日の様子をご報告しておきます。
表彰式は14時30分からでしたが、14時から受付開始だというので、同行者の櫻本なつみさんとは14時に霞ヶ関駅のB3a出口で待ち合わせ。『影たちの祭り』が劇団かかし座の「Hand Shadows ANIMARE」のバックステージを追ったドキュメンタリー映画であるということは、このブログをお読みの方には周知の事実だと思いますが、では何故、同行するのが演出の後藤圭代表でも、チームリーダーの飯田周一さんでもなく、比較的若手の櫻本さんなのかといえば、
「それはやっぱり、こういう晴れがましい席には、野郎よりも年若い女性でしょう!」
と、私が強硬に主張したから…ではもちろんなく、目下「Hand Shadows ANIMARE」のマカオ公演真っ最中で、後藤代表や飯田さんをはじめとする出演者は、5月8日にマカオに旅立つ段取りになっていたからです。それで、今回はたまたま他の上演作品との兼ね合いで日本に残る櫻本さんに、私のサポート役をお願いしたという次第。でも櫻本さんも、何といってもこの映画のヒロインの一人ですからね。監督と主演女優が連れ立って表彰式出席というのも、それなりに形は整っているのじゃないでしょうか。
さて、集合時間の前にお昼をすませておきたいけれど、霞ヶ関という駅は、ほとんど降りたことがないし、あまり駅前にお店があるようにも思えなかったのでどうしようと思いつつ、当日の午前中にネット検索をしたところ、何と、厚生労働省のお隣りの農林水産省の中に「日豊庵」という蕎麦屋があり、そこは一般人でも利用できるとのこと。迷わずそこに入ることにしました。冷やし肉そばと五目御飯で460円。そばもそば湯もおいしゅうございました。入ったのが13時半すぎだったためかお客さんの数も少なく、ゆったりと食べられたのもよかったです。
そして13時55分に約束のB3a出口に向かったところ、櫻本さん、もうしっかり先に到着してらっしゃいました。彼女に限らず、かかし座劇団員諸氏のこの辺の安定性は揺るがないものがあります。
こうして合流した神奈川県民2人、
「どうもこのあたりは慣れてなくて…」
と苦笑しあい、地図をちら見しつつ、出口から10メートルほどのところの門からおずおずと入省。そこでまず一度目のIDチェック。でもここでは、財団からの送付物を見せただけでOKでした。そしていよいよ館内に入り、受付のところで、身分証の確認。私は運転免許証、櫻本さんはパスポートを提示し、招待者本人であることが認められた上で、館内のゲートを通る時に必要なIDカード(首から下げるタイプ)を受け取ります。
「NHKなんかも同じくらい厳重ですよね」
と、かかし座としてテレビ出演も数多くこなす櫻本さんがさらっとひとこと。こちらは、
「へえ〜、そうなんだ」
と感心するばかり。
エレベーターで6階に上がると、「表彰式場」の矢印が見やすい場所に点々と続いているため、不慣れな2人も迷うことなく会場(大きめの会議室)まで到着することができました。ここで名前のチェックと、受賞の花をつけてもらうなどがあり、そして席まで案内してもらったのですが、少し想定外だったのが、賞状をもらう人間と同行者が、隣り合わせではなく、別々の場所に座るようになっていること。これは、賞状授与の導線を考えてのことなのでしょう。かくて、櫻本さんとは引き離され(といっても数メートルですが)、名前が書かれた席に腰を下ろすと、隣りに何やら見覚えのある男性が。何と、かつてニューシネマワークショップという映画学校の事務局におり、その後制作会社に移ってプロデューサーになったSくんでした。彼とはもう15年以上前からの知り合いですが、顔を見るのは3、4年ぶりです。彼は、『影たちの祭り』と同じ「映像・メディア部門」で推薦作品となったある邦画の制作プロダクションの人間として、幹事会社から言われるままここに来ただけだそうで、
「あまりよく事情がわかっていないんですよねえ」
と、場違い感を隠し切れない様子でした。ああ、そういうケースもあるのかなあ、と思いつつ周囲を見てみると、実際、5作品ある「映像・メディア部門」の推薦作品の中で、監督本人が来ているのは、『影たちの祭り』だけでした。まあそりゃあそうでしょう。他の4作品の「受賞者」は、いずれも歴史ある大手・中堅の映画製作会社もしくは配給会社で、それに対してこちらは「『影たちの祭り』パートナーズ」なんていう、よくわからないサークルのような団体。でもまあ、そういうサークル的な団体の方が、小規模な分、当事者としての喜びをダイレクトに味わえると思うんですけどね。
そんなことを考えていると、私のちょうど前の席には、人形劇団ひとみ座制作部のTさんが着席しました。彼とは、この2月に同劇団の人形美術を永年担当した片岡昌の追悼イベントで知り合い、来週(5/17)開催の「鎌倉アカデミアを伝える会」についてもいろいろ相談に乗っていただいた間柄です。彼が制作を担当した作品が「舞台芸術部門」で推薦作品になったので、この場にいらしているということでした。いやはや、まさかこんな場所で、2人も知人と出会うとは。世間というのは、案外狭いものかも知れません。
そうこうしているうちに、表彰式が始まりました。司会の女性が、
「今日は東京は大荒れの天気予報ですが、そんな荒天に負けない拍手を…」などとおっしゃったと思うと、見る間に外が暗くなり、横殴りの雨が降り出しました。「雨男」として半世紀を生きてきた私が、「ああ、やっぱり」と心でつぶやいたのは言うまでもありません。
はじめに財団理事長のご挨拶。原稿を丸読みかと思ったらそうではなく、ご自身の生きた言葉でしっかりと参加者に語りかけて下さったのが好印象でした。
「この年まで生きて参りますと、人生というのはいろいろある。いろいろあるけれども、人生というのは、生きるに値(あたい)するものであるということを、子どもたちにきちんと伝えることの重要性を強く感じます。そしてそれを一番ストレートに伝えられるのが、芸術文化というものではないか」
細部が違っていたら申し訳ありませんが、そんな意味のことをおっしゃっておいででした。もっともな話だと思います(しかし、「人生は生きるに値する」と素直に思うのが難しい社会になっていることも、同時に重く感じてしまいました)。
続いて厚労省雇用均等・児童家庭局長のご挨拶があり、それから「児童福祉文化賞」の表彰、さらにその後に、われわれのカテゴリである「児童福祉文化賞推薦作品」の表彰という流れでした。特に挨拶をするわけではないのですが、やはり前に出て賞状と楯を受け取る瞬間というのは、妙に緊張するものです。

最後に、「児童福祉文化賞」の受賞者を代表して、NHKの初代「うたのおねえさん」として知られ、今も精力的にコンサート活動を行っている眞理ヨシコさんがご挨拶をされました。
「私は最後の疎開世代です。ほとんど何も荷物を持たずに疎開した田舎で、毎晩親子で歌を歌っていました。それが私の原点です」
そして、現在まで半世紀にわたり、世代を越えて愛される歌をうたい継ぎ、「三世代(親・子・孫)なんて甘い、これからは四世代(親・子・孫・ひ孫)で参加できるコンサートを」とますます意欲的に活動されているとのこと。一筋の道を、倦まず、たゆまず歩き続ける人の言葉は、大変胸を打つものがあります。
こうして、長いような短いような90分が過ぎ、受賞者で集合写真の撮影をして15時15分に無事閉会となりました。

肖像権のこともありますので小さめに。後列左端が私です
賞状授与の瞬間と集合写真撮影の際、櫻本さんはカメラマンとして大活躍。さすがANIMARE班、こういう時の動きは敏捷かつ的確です。しかし、まさかかかし座の女優さんに写真を撮っていただけるとは(『影たちの祭り』ではずっとこっちがビデオカメラで追いかけていたんですが…)。

カメラマンモードの櫻本さん。集合写真の際は「こちらに(目線)お願いします」などの声かけも
会場を離れる前に、その櫻本さんに記念楯を持ってもらい、表彰式の看板をバックに記念のスナップ。こちらは、前述のひとみ座制作部Tさんに撮っていただきました。

facebookページで公開したものとは別カットです
会場を出たあとも、雨の勢いは衰えないので、省内1階にあるドトールで、雨やどりを兼ねて小休憩。櫻本さんと落ち着いて話をするのも、かなり久しぶりだったのですが、約2年前、一番最初にかかし座を訪ねて「記録映像を撮らせて下さい」とお願いした時、実際に手影絵を実演して見せてくれたのが飯田さんと櫻本さんのお2人だったこと、キャストインタビューで彼女が、
「デフォルメした動きっていうのも必要なんですけど、やっぱり原点は本物かなって思うんですよ」
と発言した時、私がカメラの向こう側で頭を大きく振ってうなずいたらしいこと(私自身はまったく意識していませんでした)等々、思い出話も弾み、2年の間にひとつの映画がうぶ声を上げ、こうして公共的な場で認められたことに、ある種の感慨を覚えずにおられませんでした。
いつの間にか雨も上がり、夕方の日差しが店内に差し込んでいます。櫻本さんはまた劇団に戻って稽古だというので、霞ヶ関の日比谷線ホームで別れました。
帰宅してみると、早速、櫻本さんから一連の写真画像とともに、
「私としては初めてだらけの授賞式でしたが、かかし座にいることの素晴らしさや重さ、楽しさを改めて感じることができました。ありがとうございました」
とのメールが。
「こちらこそありがとう。同行していただいて心強かったです」
と返信してから画像を整理し、『影たちの祭り』facebookページにこの日の模様を急いでアップ(本当は内緒なのですが、情報の更新は私自身が行うことが多いです)。
しかるのち、マカオにいるかかし座ご一行に報告のメールを打ち、本日の業務はこれにて終了。「ANIMARE」マカオ公演の成功を祈りつつ、いつもより少しだけ上等のワインを開けました。


